サイバーエージェントは4月1日、女性新入社員を対象に「働く女性のためのカラダの知識講座」を実施した。オンライン研修の一環で、Zoom上で行われた。
講師を務める甲賀かをり医師(東京大学医学部附属病院産婦人科)は、冒頭で「女性特有の生理で困っている人をたくさん拝見しています。あなたが健康で充実したキャリアを築いていくために」と話した。
人類の歴史では「月経は生涯50回くらいがデフォルト」
クイズを交えながら女性の体に関するメカニズムを伝えた。そもそも「生理」とは妊娠しなかった結果に起きるもので、月経は「人間と一部の霊長類のみ」にしかないと話すと、Zoomのチャット欄には驚きの声が溢れていた。
甲賀氏は、昔と比べて女性のライフスタイルが大きく変化していることを指摘。昔は栄養状態が悪かったため初潮が17歳ごろと遅く、閉経は40代前半、出産回数も多かった。妊娠・授乳期間は月経が訪れないため、生涯の月経回数はトータルでは少なかった。
しかし、現代女性は平均すると初潮は12歳、閉経は51歳、出生数は1.42人であるため、「月経回数は数百年前の10倍になっています」と話す。人間の進化の歴史で考えると「月経は生涯50回くらいがデフォルトだったのが、現在は進化の過程からすると異常な状態」であり、そのため月経関連のトラブルが増えているという。
なぜ生理痛が起こるのか、MRIで撮影した月経前と月経中の女性の腹部を比較した。月経前の子宮はあまり動いていないが、生理中は経血を押し出そうと上から下に蠕動運動をする。参加者からは「これが生理痛の原因か」といった声が挙がっていた。
PMSで感情の起伏が激しくなるのにも生物的な理由が
月経前に起こる心身の不調を指す「PMS」(月経前症候群)に苦しむ女性も多いが、「妊娠に向けた準備と考えると理にかなっている」と説明する。
月経前は感情の起伏が激しくなる人もいるが、「(動物で考えると)妊娠前は卵が宿っているから、別のオスがやってきても『あっちいけ!』って警戒して卵を育てるほうが有利」になる。
抑うつ状態になったり、社会的に引きこもりになったり、食欲が増したりするのも「別のオスを誘惑しない、コンタクトを取らずに引きこもってエネルギーを蓄えるほうが有利になる」という生物的な理由があるという。
そう考えるとPMSも妊娠を考えると必要だと理解はできるものの、「現代女性からしたら、たまったものじゃない」。
対処法としては、女性は1か月の間で身体にダイナミックな変化があることを頭の隅に置いて、「生理前だから・生理中だからこういうことが起きているのかもしれない」と自分の身体を理解することが重要になる。また、月経手帳などに痛みの程度などを記録することなども勧めた。
どれだけ困ったら病気?「本人が困っているなら病気。困っているなら病院に」
質問コーナーでは、女性特有の悩みについての相談が多く寄せられたが、「悩んでる間に病院に行きましょう。1日で分かるから」と回答する。よく「どれだけ困っていると病気なのか」と聞かれるというが、「本人が困っているなら病気。困っているなら病院に来て」と呼びかけた。
月経困難症などの場合、治療の一環でピルを服用する場合もある。個人差はあるが症状緩和が期待されるため、働く女性の中でも使用する人は少なくはない。しかし、服用に恐怖心を持つ人もいる。参加者に服用の副作用を聞かれると、
「むくむなどのマイナートラブルは3分の1が経験します。2~3か月で慣れるので起きてもびっくりしないで。また血栓になりやすいと言われますが、割合は1万人に数人とか。分娩前後の血栓は1000人に数人なので、10分の1。前兆で気づけば命に問題はありません。きちんと情報を取りに行って正しく恐れてください」
とコメントした。
参加者からは「生理は人と比べる機会がなく、自分の痛みの傾向しか知らなかったので知れてよかったです。『本人が困っていたら病気』という言葉で気持ちが軽くなりました」といった声が寄せられた。
新卒研修で女性の身体にフォーカスした講座を開くのは同社では初の試みだ。広報担当者は「女性の働き方やキャリアの築き方は人それぞれで、会社から強制するものでもなく、ひとくくりにもできません。新入社員には正しい知識を身につけて自分の選択肢を広げて欲しいです」と語った。