画像提供:マイナビニュース ●一瞬一瞬が心のアルバムに刻まれていく、特別なワンマンライブ
声優とアイドルのハイブリッドユニットi☆Risの6人体制ラストライブ「i☆Ris LIVE 2021 ~storiez~」が3月28日、神奈川・パシフィコ横浜国立大ホールにて開催された。
i☆Risとしては1年半ぶりの有観客でのワンマンライブは、メンバー・澁谷梓希の3月末での卒業を前にした、6人体制最後のライブ。その1年半前のデビュー7周年ライブ”七福万来”を開催した会場で、深く深く刻まれる思い出をたくさん残すライブを届けてくれた。
○●卒業直前だからこその曲も次々登場! 序盤からテンションMAXのライブに
開演時間を迎えると、メインスクリーンにはまずアルバムを模したライブロゴが登場。そのノートが開くと、まずは集合写真のように最新アルバム『Shall we☆Carnival』のアーティスト写真が映し出され、続いてページがめくられるたびにそのノートに記される形でソロカットが浮かび、金色の文字で改めてライブタイトルが描かれていく。
ステージ上に登場した6人が最初に披露したのは、i☆Risはじまりの曲「Color」。久々のファンを前にしたワンマンライブというのもあってか、開演の瞬間の6人の表情は、晴れやかだった。落ちサビ前の6色コールも、6人で披露するのはラスト。だが、いちいちしんみりはさせない。リーダー・山北早紀が「6人でのライブ、楽しもーもーふぁーむ!」といつものように、シャウトでファンの心を高めにかかる。
それに続く「§Rainbow」では芹澤優が、自身がフィーチャーされるBメロ部分、普段なら会場中のコールを一身に受けるはずの部分でいつも通りイヤモニを外して”心の声”を受け止め、そのうえで大サビ前のフェイクも伸びやかに決めたりとクオリティも両立させる。他にもイントロ終盤、6人が縦に重なる場面では最後方からぴょんぴょん跳ねて茜屋日海夏がアピールしたりと、曲に沿った楽しさがパフォーマンスによって次々形にされていく。
さらにもう1曲続いたキラーチューン「ドリームパレード」で虹色に輝くペンライトの光を目の前にした6人は、本当にどこまでもエネルギッシュ。2-Aメロのソロで表情をつけまくって楽しむ山北や、2サビ後の間奏でひときわ高く跳ねてみせた久保田未夢など、この曲も見どころ満載なものに。また、落ちサビで茜屋がソロを歌いながらハモる澁谷と肩を組む場面では、チラリと”卒業ライブ”の要素ものぞく。
まずは3曲でスタートダッシュを見事に決めたi☆Ris。実際に声は返ってこなくとも、久しぶりに観客を前にメンバーそれぞれの自己紹介を行ない、いつも通り「この6人で(山北)」「i☆Risです(全員)」で締め。
これも最後になるという事実に若干感慨を感じていると、若井友希が「今日はとっておきのセットリスト、持ってきましたよ!」とファンの期待を高め、「ありえんほどフィーバー」からライブ再開。その若井は1-Bメロラストのロングトーンを、力強く張るのではなく上手く抜きながらウィンクも入れ込むことでセクシーさを感じさせ、視覚と聴覚両面の魅力でファンの心を撃ち抜いてくれる。
そしてここからが、特に”この日ならでは”の選曲ゾーン。まずは1stアルバム『We are i☆Ris!!!』収録のデュエット曲の中から、山北と澁谷による「Believe in」。ステージ上の☆が半分に割れたようなセットのそれぞれ反対側に上ると、全力でボーカルを叩きつけ合い、観客からのコールなしにもかかわらず楽曲のボルテージを上げる。
またそのセットの間に位置する会場内のメインスクリーンには、モノクロ化されたリアルタイム映像に歌詞が乗ってリリックビデオ風に上映され、シリアスさも高めていく……と思ったら、山北が作詞・若井が作曲・澁谷が編曲を手掛けた”澁若山”による楽曲「扇子・オブ・ワンダー☆」のイントロに乗せて若井が駆け込んできて「ここからはふざけまくりたいと思います!」と宣言。特にソロパートで遊びまくった澁谷を筆頭にやりたい放題だ。
ただ当然ふざけるだけではなく、魅せることも忘れてはいない。タイトルにも冠した扇子を用いた振付は、この日も間奏部分をはじめ随所で3人のチームワークの活きる、非常に華やかなものだった。
○●鉄板曲だらけの『プリパラ』ゾーンは、”6人”と”6人”の姿感じる部分も
曲明けに芹澤・茜屋・久保田もステージに戻って一旦のトークタイムを挟み、ライブは中盤戦へ。ここからは6人揃ってメインキャストとして出演している『プリパラ』の主題歌をメドレー形式で次々立て続けに披露していく。まずはアグレッシブにキラキラの笑顔とともに「Ready Smile!!」を届けてスタートすると、続く「ミラクル☆パラダイス」では澁谷がサビでハモを歌わずに、ファンのコールをかわりに担当し始めるフリーダムさをみせる。
さらに「ブライトファンタジー」では、イントロ中の芹澤の「奥のほうまで、近くに行っちゃうよー!」の声を合図にステージ中にメンバーが散り、テンポの速いこの曲をファンの近くで披露。全員が切れ味鋭いダンスをみせるなか、とりわけ久保田が活き活きしていたようにも感じられる。
さらに続けた同じくテンポの速いシリアスなナンバー「Shining Star」では、1サビ後に2サビ明け間奏がつなげられており、3-Bメロ前のダンスパート中には”6人”と”6人”のステージを感じる部分も。澁谷自身芸能活動は継続し『プリパラ』も続投するとはいえ、このライブでその光景を盛り込んでくれたことに嬉しさを感じた方も多かったのではないだろうか。
そして、メドレーを締めくくったのは1st OPテーマ「Make it!」。デビュー8周年記念のオンラインライブでは歌われなかったファン待望のナンバーで、サビ冒頭のジャンプポイントでは会場中のファンも一斉に6色のペンライトを振る。この曲も1番では終わらず、1サビ後にはDメロへ。そのDメロの歌詞もまたこの場にふさわしすぎるもの。6人で披露しながら澁谷へと送る歌にもなっていたように思えた。
5曲駆け抜け、一旦のブレイクとなったトークで『プリパラ』ゾーンのメドレー曲を振り返るなか、2018年のアニサマで歌われた”キュウキョクのプリパラメドレー”に触れた茜屋が「まだまだ用意してますんで!」と口にすれば、ここからさらに2曲『プリパラ』曲をフルサイズで披露していく。
その2曲もまた、いずれも”6人”と”6人”の姿をこのステージで感じたいものだった。まず「Realize!」では、メンバー間で”ラスボス”とも称されるほどの運動量の多さをものともせず、エネルギッシュでパワフルなステージを展開。サビラストのジャンプではひときわ高く山北が跳ねてみせる。
その一方で、Dメロ後のダンスタイムでの『プリパラ』キャラを彷彿とさせる魅せ場を経て、落ちサビでは丁寧なハーモニーも展開。その二面性をみせたという点も含め、中盤以降のクオリティはこの日随一だったように感じられた。そしてもう1曲「Goin’on」は、ここまで続いてきたアグレッシブなナンバーとは違ってポンポンとしたかわいらしいミドルナンバー。
そのテイストもあってか、これまで以上に歌声で聴かせていく曲としていく。特に若井は2-Aメロで伸びやかな歌声を響かせ、Dメロのフェイクでも澁谷とハモってみせたりと歌唱力を遺憾なく発揮していった。またこの曲も、『プリパラ』OPの決めポーズに続いてキャラクターならではのポーズが次々登場する”6人”と”6人”の曲。その振付も含めて、温かくもどこか沁み入るようなものがあったように思う。
●“嫌いで好き”な6人が、歌で言葉で届け合った想い
○●今伝えたい想いが、様々な形で交錯していくパシフィコ横浜
こうして『プリパラ』曲ゾーンを披露したあとは、卒業感のある曲が2曲続けて登場。その1曲目「キラリ」では、イントロ中に澁谷が「桜咲かせるぞー!」とシャウトしいつものようにファンを煽る……と他のメンバーが次々と「あれー!?(棒)」「なんだろうこの映像!?(棒)」と澁谷の視線をスクリーンに注目させると、そこに映されたのは過去のブログ掲載写真やオフショットを散りばめたなかに、手書きの歌詞が乗ったサプライズ映像が上映されていく。
2サビ後間奏では5人が作ったトンネルの中をくぐったりと、パフォーマンス面でも卒業感がにじむ。その後奏後、少し間を置いてからたっぷりと大事に若井が、続いて芹澤が大事にソロを歌い上げて始まったのは、若井が作詞・作曲を手掛けた「卒業式」。流れ的には完全に泣かせにかかっているところだが、ここで誰かが涙して明らかに歌声が崩れるわけではないのもまた、i☆Risらしいポイントではないだろうか。
また、この日はDメロ全体を澁谷が歌唱。「君のこときっと思い出してしまう」のフレーズを「i☆Risのこときっと思い出してしまう」とこの場限りのアレンジをしつつ、情感いっぱいに込めて届けると、5人がそれぞれメンバーカラーのスイートピーをプレゼント。
驚きながらもそれを受け取る彼女のもとで、”門出”と”優しい思い出”という花言葉をもつスイートピーによる、大切な6色の花束ができあがっていた。
そんな雰囲気のなか、ライブもいよいよ大詰めへ。ラスト1曲を前にメンバーがそれぞれ、たっぷりとメッセージを語っていく。久々に直接顔を合わせることができたファンへの想い。送り出す澁谷への想い。そして、5人でi☆Risを続けていくことへの決意――それら全てをそれぞれが自分の言葉で発信し、“笑顔で送り出しムード”が生まれていったように思う。
それをいい意味で壊し、想いを”届ける”というよりも”ぶつけた”のが、リーダー・山北だった。まず昨年澁谷の卒業を聞いたとき、他4人がすぐ受け入れられたように感じたのに対し、自身は「やめんの!? いつまでも6人でやるっつったべやー!」と思わず方言まで飛び出るレベルで反対の心情だったことを告白。
さらには引き留める席をセッティングしたとの事実も明かす。しかし、そこで腹を割って話したことで吹っ切れたとも続け、「元々『10年ぐらいまで駆け抜けよう』みたいな話をしてたけど、ずっちゃん(=澁谷)が『i☆Ris抜けなければよかったー!』って思うぐらい、売れてやろうっていう気になったんですよ!」と素直な心情を吐露。
それでも「ずっちゃんの人生はずっちゃんだけのものだから後悔しない道を選んでほしい。私も後悔したくないから、i☆Risに残りまーす!」と、エールと宣言で結んだ。
そしてそれらを受ける形での澁谷からのメッセージは、「絶対喋れないのわかってたから、紙に書いてきたよ」と手紙のスタイルで。BGMとして流れた瞬間驚きの表情が浮かんだ「ayatsunagi」のピアノバージョンは、スタッフからのサプライズだろうか。
手紙の中では、グループ二度目のワンマンライブ“i☆Ris -STEP INTO THE RAINBOW-“で「i☆Risをやめたいと思った」と発言したことを引用し、「当時は努力から逃げていました。今となっては、あのときやめなくてよかったと思うことばかり。
何より、あの日以降人間として成長できたなと思います」と自身の足跡を振り返ると、「5人とのお別れがすごくつらい」と、卒業発表後にマイナスなことを言うまいと封じ込めていた想いを吐露。そしてメンバーやスタッフ、ファンへの感謝を伝え、「i☆Risのイエローとして活動できて本当に本当に幸せでした。みんなの心の中にイエローの光が永遠に灯り続けますように」と締めくくる。
○●最後の最後に、6人の声だけで歌われた大切な曲
こうして想いを素直に届け合った6人は、ラストナンバーを前にステージ中央でライブ前恒例の円陣で今一度気合いを入れ直し、6人体制でのラストナンバー「Memorial」へと進む。直前までぐっときたり瞳を潤ませていたメンバーもいたが、それでもパフォーマンスの質は落ちないまま。また、落ちサビの冒頭ソロでは、これから先の澁谷にぴったりの歌詞を茜屋が直接歌いかけ、逆サイドからは久保田も卒業を祝福するかのように笑顔で寄り添っていた。
曲明け、6人全員での一礼ののち澁谷が会場中に手を振り、中央へ戻ったところで5人がアカペラで歌い出したのは「Color」のサビ。驚きつつも澁谷がそこにハーモニーを重ね、最後に純粋な”6人の歌声”を届けると、続いてスクリーンには彼女への、6人の名前を織り込んだメッセージがプレゼント。6人一緒に段上ステージへと上り、「5人のi☆Risもよろしくね! 澁谷梓希も、よろしくねー!(澁谷)」との言葉とともにステージは幕。
直後に流れ始めたED映像は、OP映像同様アルバム仕立てのものに。ページをめくるごとに、画面いっぱいにメッセージチケットを購入したファンからのメッセージが並ぶ。まるでi☆Ris初の武道館公演を彩った、同年のツアーや4周年ライブでファンが想いを記した、寄せ書き垂れ幕のように。やがてその大切なアルバムが閉じられて、3月28日のstoriezは幕。大切な思い出を閉じ込めた、忘れられない1日となったのだった。
公演が終わってまず最初に、6人体制最後のライブが有観客で開催されたことにふたつの意味で喜びを感じた。ひとつはこの公演が、ファンとともに作るワンマンライブとして開催できたこと自体。そしてもうひとつは、ファンを前にしたときに生まれるi☆Ris6人の無敵のパワーが発揮されたこと。現状における最高の形で送り出せたからこそ、4月からの新たな道を、それぞれこの9年間に引きずられずに歩むことができるはずだ。
i☆Risは、メディアなどで自らの関係性を”ビジネスパートナー”と称することがあった。それをもとに揶揄するような声も、正直ないわけではなかったと思う。だが6人にとってのそれは、世間一般における意味合いとは異なるもの。
それは特記した山北のMCはもちろん、「絶妙な存在で何にも替えられない(芹澤)」といった他のメンバーのメッセージからも、十二分に感じ取れるものだった。だからこそ、その形が変化することに不安をもつファンがいることもまた当然のことだろう。しかし、その不安は当然拭われていくだろうと感じさせてくれたのが、この日のライブだった。
“卒業”は単なる終わりではなく、新たな挑戦へのスタートでもある。憧れを道しるべにして最高の瞬間を、未来を掴むために、6人の歩みはこれからも続いていく。
○●i☆Ris LIVE 2021 ~storiez~
2021.03.28@パシフィコ横浜国立大ホール
M1. Color
M2. §Rainbow
M3. ドリームパレード
M4. ありえんほどフィーバー
M5. Believe in / 山北早紀&澁谷梓希
M6. 扇子・オブ・ワンダー☆ / 澁若山
M7. プリパラメドレー
・Ready Smile!!
・ミラクル☆パラダイス
・ブライトファンタジー
・Shining Star
・Make it!
M8. Realize!
M9. Goin’on
M10. キラリ
M11. 卒業式
M12. Memorial(須永兼次)