●観る側に回って改めて感じた、自身のもつ唯一無二の武器とは?
アニソンシンガー・亜咲花が昨年11月に開催した自身初のオンラインワンマンライブ”亜咲花ワンマンライブ2020 ~ERA~”。その模様を収録したBlu-rayが3月31日に発売される。そこで亜咲花に、今回はライブを振り返るインタビューが到着。
「初めてのことばかりだったからこそ、自分にとってすべて新鮮なライブでした」とも口にした彼女は、声帯ポリープ手術後初のワンマンでもあったこのライブで、どうあらたな一歩を踏み出したと感じていたのか。
○●オンラインで痛感した、”言葉の力”のすごさ
――映像自体をご覧になって振り返って、ステージに立ったときの感覚とは違う部分も多かったですか?
やっぱり映像って客観的に自分を観ることのできる唯一の場なので、自分がステージに立っているときの気持ちをぶわーっと思い出すというよりもひとりのお客さんのような目線で、反省会も含めてみんなと一緒に楽しんでいたように思います。
――そのライブの、開演直前の心境はいかがでしたか?
なんだかわくわくのほうが強かったですね。今回は無観客だったとはいえ、声帯ポリープの手術後初のワンマンという自分にとってすごく大切なライブだったので、ここでみんなに「亜咲花、パワーアップして帰ってきたな!」という姿を見せる場だという気持ちが強かったんです。
――意気込み自体は、かなりあった。
はい。でもワンマンライブって、私の歌を楽しみにしてくれている方ばかりだと思うので、あまりプレッシャーみたいなものはなくて。それにきっとみんなは本来のというか、素の亜咲花の姿を見たがっているだろうと考えて、ちょっと音を外したり声がかすれていても変に誤魔化さずに、今の自分なりの歌をうたって生感をよりいっそう強く届けたほうがいいのかなという考えに至ったんです。だから、すごく意気込むというよりも、ワクワクするけどリラックスしている……という感じで挑んでいましたね。
――実際、観る側としてもパワーアップしていた印象を受けました。特に、力が全然入っていないのに歌声が非常に伸びやかに出ていたように見えて。
肩の力は、今回すごく抜けていましたね。ポリープを抱えていた状態で歌っていたときには、「ここで音外さないかな?」みたいな変な緊張や不安もあったんですよ。でも今回はそういうものが一切なく自分の歌声を信じて貫き通すことができた分、よりいっそう歌に対する気持ちを込められて、力も抜けたのかもしれません。
――「歌をどう聴かせるか」以外の不安や心配みたいなものがなくなった。
そうですね。あと、これは悪い意味じゃなくて、慣れてきたというのもあるかもしれません。みんなと今までワンマンライブをたくさん重ねてきたからこそ変に緊張せずにリラックスできるようになったし、「こういうふうに見せたほうがいいんじゃないかな」というアイデアも浮かんだりと、やるたびに自分のレベルアップも感じるんですよ。
――これまでお客さんとともにワンマンライブを重ねられてきたからこそ、無観客でもそれを想像して、歌を届ける対象をイメージしながら届けられた部分もあったのかも。
そこですごく心強かったのが、皆さんからのコメントでした。最初はやっぱり、会場にお客さんが誰もいない分「本当にみんなが聴いてるのかな?」という不安もあって。自分で映像を見たときにも、1~2曲目はかなり笑顔も動きも硬いように感じたんですよ。でもコメントを通じてリアルタイムでみんなに届いていることを実感できてからは、表情もすごい豊かになって歌にもより感情が乗っていって……コメントを通じて、みんなが楽しんでいる顔を想像しながら歌うのが、楽しくて仕方なかったんです! なので今回は「言葉の力ってすごいんだな」ということに、改めて気づかせてもらったような気がしています。
○●オンラインでしかできないことを通じて、感じた良い部分とは
――コメント以外にも、ドローンを使ったりとオンラインならではの見せ方もありました。
今回はこの環境を逆手に取って、逆にオンラインでしかできないことをやろう、とチームの皆さんからアイデアをいただいていきました。ドローンの映像もすごくきれいだったので、これは今後どこかでも取り入れられたらと強く思いましたね。ただ、あのドローンからは実はすっごい音が出てて(笑)。私もイヤモニを取ったときに初めて気づいてびっくりしたんですけど(笑)、その音は配信には乗っていないので、位置まですごく丁寧に考えて飛ばしてくださったんだと思います。それもすごく、ありがたいことですよね。
――さて、今回歌われた楽曲は激しいナンバーからバラードまでいろんな曲がありましたが、どの曲でも歌われている際に表情から嬉しさがにじんでいたのが、かなり印象的なポイントでした。
なかでも『ゆるキャン△』曲が続いた、ゆったりと楽しめる曲を歌っているときのことは特に鮮明に覚えています。歌っているときも「やっぱり自分にはこういう、横揺れで音楽を楽しめるような曲がしっくりくるんだな」と感じましたし、映像で観たらそれをよりいっそう強く感じることができまして。
――冷静に、観る側に回ったからこそ、より。
はい。もちろんかっこいい曲も得意なジャンルではあるんですけど、声が太いというのもあってかソウルフルに元気良く歌い上げるというのが自分のパーソナルな部分とすごく重なって……自分で言うのも恥ずかしいですけど(笑)、亜咲花にしか届けられない唯一無二な感じの曲に聴こえて、自信にも活力にもなりました。
――聴く側としても感じるような相性の良さを、御自身でも改めて感じられたんですね。
はい。『ゆるキャン△』曲って、アニソンの中でもあまりないジャンルのものなのかなと思っていて。それを私の武器にして自分にしか歌えないアニソンというものを確立していけたら、これからも長くアニソンを歌っていくことができるのかな……とすごい未来のことまで考えながら(笑)、映像を観ていました。
●新しい形での音楽の届け方にも挑戦していきたい
○●無観客でも”音源通り”じゃない! ライブならではの歌い方の変化にも要注目
――一方、序盤のいわゆる”殺人セットリスト”の部分での非常に気持ちよさそうな姿も印象的でした。
めっちゃめちゃ楽しかったです(笑)。今回は無観客なので、きっとみんなもおうちとか声を出しても大丈夫な環境にいるだろうなという前提で、オンラインですけどそういうコンセプトの部分を作ることにしたんです。このご時世ではなかなか厳しくなってしまいましたけど、やっぱりライブって声を出して全身でお客さんと一緒に音楽を楽しむというのがいいところだし、その時間をいちばんフルにお届けできるのが”殺人セットリスト”だと思っているんです。
――その最初を飾ったのが、TVアニメ『ひぐらしのなく頃に 業』OPテーマ「I believe what you said」でした。
特にこの曲はバンドでの披露が初めてだったので、みんなにも「バンドだったらこんなふうになるんだ」と楽しんでもらえたところもあったと思います。意外とロックな感じにしても原曲の良さが壊れないし、ちょっとヘビメタっぽい重低音のある歌に仕上がっていて。しかも、ちゃんと『ひぐらしのなく頃に』という作品の世界観も表せている。バランスの取れたすごい曲ですよね。
――本番での披露が、リハの段階から楽しみだった。
はい。あとそのシングル収録の「Last Friday Night」と「SCREEEAM!!!」も初めてバンドで歌ったので、すごく楽しみでした。それと私、実はバンドの音に合わせて歌い方や声質を若干変えているんですよ。せっかくライブに来てくれるからにはそこでしか味わえない音楽を楽しんでもらいたいので、リハーサルを通じてバンドの人達と音楽を合わせるのと同時に自分の声やバンドの音とも向き合って、入念にチェックして細かく調整しています。
――アニソンカバーなど、セットリストの中にも現場ならではの部分もありますし。
そう。オンラインでもアニソンカバーはやらせてもらえてよかったです(笑)。残念ながらBlu-rayには収録されていないんですけど、やっぱりこれは現場に来てくれたり配信ライブを観てくれた人の特権といいますか(笑)。特別ゾーンとしていつもやらせてもらっているので、聴き逃して悔しんでいる方には、ぜひ次は直接足を運んだり配信ライブを観ていただきたいです!
――亜咲花さん自身の持ち歌も増えてきましたし、ライブごとにコンセプトも決めて、それに応じたアニソンカバーを盛り込んでも面白そうです。
わ、絶対やりたい! 実はコンセプトライブ、すごくやりたいんですよ。例えばバラードだけのしっとりゆったりソングコンサートとか、逆にロックだけとか。そういうふうにテーマに合った曲や会場を選んだライブをやりたいな……と思っていたらこういう状況になってしまったので、まだ実現はできていないんですけど。
――ただ、2月に開催された”ゆるっとライブ”はそういったイメージに近いものだったのでは?
そうですね。『ゆるキャン△』の曲をはじめ、おうちとかでゆったり楽しんでもらえる曲だけのライブをほぼ理想の形で実現させてもらったので、いろいろ落ち着いたら次はまず、お客さんを入れてのコンセプトライブを実現させたいです! 他にも元々はロックな曲をアコースティックにアレンジして届けたり……音楽って正解がないから、いろんな楽しみ方ができると思うんですよ。なので、デビュー5年目を迎えたこの1年は特に、今まで自分が届けたことのない形で音楽を奏でていきたいです。
○●楽曲全体を知るきっかけに活用した、必聴のコメンタリー
――そして今回のBlu-rayでは、おひとりで1時間以上オーディオコメンタリーも喋られています。先ほど「反省会も含めて」とおっしゃっていましたが。
そうなんです。私、自分のライブは映像商品にならなくても、マネージャーさんに撮ってもらった映像を使って、家で必ず反省会をするんですよ。普段とは違ってそういう自分の生の感想をオーディオコメンタリーとしてみんなと共有できて、とっても楽しかったです(笑)。
――具体的に言葉にすることで、自分の中の漠然とした感覚がよりはっきりと形になったりもしました?
しました! 言葉にすることによって、スッキリもしますよね。いつもだったら家でただ心の中に気持ちをためておいていただけですけど、今回はそれを言葉にして、しかもみんなに発信もできたので。
――コメンタリーではライブ中の感想に加え、今まで話されてこなかった楽曲制作の裏話なども飛び出したりと、内容も非常に濃いものになっています。
ファン目線で考えたとき、きっとみんなライブの感想を共有するだけじゃなくて新しい情報も欲しいだろうと考えたので、ライブだけじゃなくて楽曲ごと全部深く知ってもらえればと思ったんです。なので「実はこのとき、こういう気持ちで歌ってたよ」とか、セットリストの中で自分がその曲を持ってきた理由や楽曲のレコーディング、制作過程のお話など、楽曲にまつわることもたくさんお話しさせてもらいました。
――そういう部分も含めて、何回でも観たいBlu-rayになったように思います。
わ、嬉しい。そう感じてもらえるのがいちばん嬉しいです!
――なおかつ、やっぱり次はライブに行きたいなとも思うでしょうし。
うん! 私もやっぱり、会場に「お客さんいてほしい!」って強く思いましたもん(笑)。どこにいても観ることが出来るオンラインライブも良いですけど、お客さんがいたら皆さんの熱量が直接伝わってくるので私もテンションあがりますよね!今はオンラインライブでたくさん経験を積んで、次にワンマンライブが開催できたときにはもうポリープとか関係なく、ひとりのアーティストとしてまた成長した姿を皆さんに直接披露したいですね。
――有観客といえば、このBlu-rayのリリースイベントにも有観客のものがあるとのことで。
はい。今まではネットサイン会とか、ミニライブを配信したりしていたんですけど、今回は20名様限定でトーク&ミニライブにご招待します。お客さんを入れるリリイベは約1年ぶりなのでぜひ遊びに来ていただきたいなとは思っているんですけど、今回もなかなか足を運べないような状況の方もいらっしゃるかもしれないので、生配信もご用意しています。配信でも歌もトークも現場と変わらず楽しめるものにしますので、無理せずに参加していただけたら嬉しいですね。
――20人ということは、お客さんのスペース的にもゆったりめになりそうですね。
かなりゆったりだと思います。内容はこれから練っていくところなんですけど、トークで”ERA”について掘り下げた話をするのはもちろん、ライブパートでも”ERA”で歌った曲のどれかを披露したいとは考えていて。会場にいらっしゃる方も、オンラインで見てくださってる方も、みんながゆったり楽しんでもらえるような楽曲を歌いたいなと思っています!(須永兼次)