保証期間を過ぎたiPhoneやMacの修理が必要になった時に、安心して修理を頼めるリペア業者の選択肢が増えそうだ。Appleは3月30日、独立系リペア業者を認定・サポートするプログラム「Independent Repair Provider Program」の提供国・地域の拡大を発表した。日本では、今週後半からプログラム参加を希望する修理サービスプロバイダーの応募受け付けを開始する。
AppleがIndependent Repair Providerプログラムを提供する背景には、欧州を中心とした「修理する権利」を求める声の高まりがある。スマートフォンやノートPCはパーツの統合が進み、中でもAppleの製品はハードウェアとソフトウェアを密に統合して設計することで優れた体験を実現している。しかし、そうした統合的な設計と共に修理の難易度が上がり、修理の選択肢が狭まっていた。その結果、まだ使用できるのに廃棄される電子機器や部品が増加していると指摘され始めた。
スマートフォンやモダンなパソコンの修理の柔軟性は、品質や体験とトレードオフの関係にある。例えば、バッテリー交換式にするとユーザー自身がバッテリーを交換できる一方で、デバイスの大型化や効率性の低下といったデメリットに直面する。修理の選択肢が広がり過ぎると、品質の低いパーツを使用する非正規のリペア業者がはびこる可能性があり、バッテリー交換のような比較的簡単な作業でも、場合によっては修理が新たなトラブルの引き金になるリスクがある。
そこでAppleは品質を維持しながら、ユーザーが修理の選択肢を広げられるように、2019年8月に米国でiPhoneを対象にIndependent Repair Providerプログラムを開始した。事業規模を問わず、商業エリアで事業を行っていて、iPhone修理の認定を受けた技術者がいる事業者を修理サービスプロバイダーとして認定し、純正のパーツ、ツール、修理トレーニング、修理マニュアル、診断方法などを提供する。Appleはグローバル規模で5000を超えるApple正規サービスプロバイダー (AASP)を通じて修理サービスを提供しているが、独立系のリペア業者も認定・サポートすることでAASPのネットワークを補完し、AASPにアクセスできないユーザーにも修理サービスのネットワークを広げる。
開始から10カ月で、認定独立系リペア業者にiPhoneの修理を頼める場所が米国で700カ所以上に拡大。米国での成功を受けてカナダと欧州でもプログラムの提供を開始し、またiPhoneに加えて対象製品にMacを追加した。
今回の拡大では、日本、オーストラリア、ブラジル、韓国、シンガポール、台湾など、40近い国・地域で今週後半からプログラム参加を希望する修理サービスプロバイダーの応募受け付けを開始。今年後半に中国を含む約120の国・地域に拡大し、それによってApple製品が販売されている世界200以上の国・地域のほぼ全てで利用できるようになる。(Yoichi Yamashita)