今回はTVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』のEDテーマCD、「TVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』ANIMATION DERBY Season 2 vol.2「木漏れ日のエール」を紹介。
表題曲「木漏れ日のエール」はSeason 2のEDテーマで、今期の物語の核となっているトウカイテイオー(CV.Machico)とメジロマックイーン(CV.大西沙織)のライバルふたりが歌うミドルポップ。
また、カップリング曲として収録されている「ささやかな祈り」は、Season 2第7話のEDと第8話挿入歌に使用されたスローなバラードで、この2話でフィーチャーされたライスシャワー(CV.石見舞菜香)が歌唱している。本編でのキャラ像や関係性を濃厚に反映したそれぞれの楽曲が放つ魅力を、余すところなくお伝えしたい。
※本稿は『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』第12話オンエア時点のもの
○●EDであり、ライバル同士のリスペクトも織り込んだ良キャラソンでもある「木漏れ日のエール」
まず「木漏れ日のエール」は前述したように温かなミドルポップであり、どんなエピソードも受け止められる曲調。「通り雨」や「降り注ぐ冷たさ」といったフレーズが物語の展開とともに視聴者の脳裏に具体化されてハマっていくというアニソンならではのよさももち、主題歌としての役割をしっかり果たす。また、テイオーの歌声には無邪気に跳ね回るような勢いが一音ごとにみられ、マックイーンの歌声には高貴さや麗しさが。歌声にも各々のキャラクター性が反映されている。
同時に、ライバル関係にあるふたりが互いへの想いを込めた曲というのもポイント。特にCDに収録されたバージョンでは、リリース時点のストーリー展開やキャラクター性もあってか、マックイーンからテイオーへの目線が若干多め。
なかでも特に注目したいのは、マックイーンが歌う1-Bメロ「運命の意地悪 そっと蹴飛ばせる私へと 大丈夫 なってみせる」。故障の当事者はテイオーではあるが、それが”運命の意地悪”であるのは大舞台でのテイオーとの勝負を待ち望んでいたマックイーンにとっても同じこと。しかしそこで”最強で居続ける”ことで待ち続けるという決意を口にしたマックイーンだからこそ、歌えるフレーズでもある。しかもそこで、必要以上の優しさを込めずに普段どおりの凛とした姿で歌うという、”優しくない優しさ”をみせているからまた胸を熱くさせる。
また、サビにひとつだけ存在するソロパートの変遷も、ふたりの想いのキャッチボールを感じられる部分。1サビでマックイーンが歌う「何度だって 光れる」のフレーズもテイオーへのエールであり、それを受け止めたテイオーが2サビでは「胸にある約束」と返す。そして大サビでは、1サビでマックイーンが歌ったフレーズをテイオーが前向きに歌うことで、同じ言葉で吹っ切れた姿を描いている。こうしたやり取りも含めて、互いをリスペクトし合う姿を、ふたりは毎回EDでもみせてくれていた。
……11話までは。
そして12話のラスト、繋靭帯炎に見舞われレースへの復帰が絶望的となったマックイーンに、今度はテイオーが待つと告げると、そのまま流れた「木漏れ日のエール」はCDとは担当パートの入れ替わったもの。テイオーがマックイーンのために決めた覚悟がパート入れ替えで示された瞬間、この曲は『ウマ娘』ファンにとってより大事な1曲へと高められたのだ。
○●最後のフレーズが、とにかくいじらしくてたまらない!「ささやかな祈り」
そして「ささやかな祈り」も、絶対見逃してはならない楽曲。何より注目していただきたいポイントは、最後のフレーズ「もう 泣かないよ」。いじらしさや決意などライスシャワーの全てが詰まっていると言っても過言ではないフレーズで、ライスを演じる石見の歌唱表現が楽曲の魅力を最大限に増幅させてくれている。
その前に、まずはその前提となる楽曲自体のご紹介をしていきたい。序盤はタイトルどおり、ライスがささやかな祈りを捧げているかのような静けさ感じる楽曲。ピアノとストリングスがメインでありながらもグロッケンが利いているのは、彼女が祈る星空を連想させる。サビには少し大きく開けていく印象もあるが、それはライスの理想が描かれた部分だから。1曲を通してたくさんの人を幸せにしたいという想い、そしてそのために前を走る存在に追いつきたいという想いを、一途に歌っていく。
だがこの曲が作中で用いられたのは、2回ともたくさんの人を幸せにしたい一心でレースに勝ったライスがブーイングを受け、葛藤を乗り越えて走ることを決意したあと。だからこそ、震えた声で「もう 泣かないよ」と楽曲を締めくくるライスのいじらしさが、たまらなく胸に残る。その歌声からは、怖さと闘い震える脚を必死で押さえ、目にためた涙があふれないようこらえながら歌いきった姿を自然と浮かぶ。この曲に至るまでのライスシャワーの物語全てを詰め込んだかのような、凄まじい情報量がこの1フレーズに込められているのだ。
若干暴走気味なのを承知で書かせていただくと、なんならもう、このフレーズの表記と譜割りさえ愛おしい。「もう」と「泣かないよ」の間にスペースが入っているうえに、メロディ自体も丸々1小節ほど空いているところにも”こらえてる感”さえ生まれているように思えるのだ。
改めて、この曲に携わった全ての方に心の底からの称賛を送りたいし、ひとりでも多くの方にアニメとともに絶対に出会ってほしい1曲であるとお伝えしたい。
【今回の総括】
名EDが2曲詰まった良作!『ウマ娘』ファンなら絶対にフルサイズを聴き逃すな!
●商品情報
TVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』
ANIMATION DERBY Season 2 vol.2「木漏れ日のエール」
01.木漏れ日のエール(TVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』EDテーマ)
歌:トウカイテイオー(CV.Machico)、メジロマックイーン(CV.大西沙織)
02.ささやかな祈り(TVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』7話EDテーマ)
歌:ライスシャワー(CV:石見舞菜香)
03.木漏れ日のエール(Off Vocal)
04.ささやかな祈り(Off Vocal)
●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken
記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12
(C) 2021 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」製作委員会(須永兼次)