「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の来場御礼舞台挨拶が、本日3月28日に東京・新宿バルト9にて実施された。
【大きな画像をもっと見る】今回の舞台挨拶は碇シンジ役の緒方恵美、アヤナミレイ(仮称)役の林原めぐみ、式波・アスカ・ラングレー役の宮村優子、葛城ミサト役の三石琴乃、赤木リツコ役の山口由里子、渚カヲル役の石田彰、碇ゲンドウ役の立木文彦、相田ケンスケ役の岩永哲哉、鈴原ヒカリ役の岩男潤子、伊吹マヤ役の長沢美樹、日向マコト役の優希比呂、北上ミドリ役の伊瀬茉莉也、多摩ヒデキ役の勝杏里、加持リョウジ役の山寺宏一という総勢14人が登壇。「エヴァンゲリオン」シリーズの舞台挨拶が行われるのは1997年以来のこととなる。
まずは登壇者による映画の感想からスタート。緒方は「新劇場版はバラバラに収録することが多くて、皆さんがどういう芝居をしているのか完成するまでわからなかったんです。だから私たちも皆様と同じ気持ちで映画を拝見しました。とにかく完成したことがうれしいですし、すべての関係者の方々にお疲れさまでしたと言いたいです」と感慨深げに語る。また林原は「2時間35分を見終わり、長いエンドロールを観ながら、これだけの人たちが集結した映画なんだなと改めて感慨深い気持ちです」とゆっくりと思いを語る。そして「30代以降の人はここが終わりで、10代の人にはここが入り口なのかもしれないと思います」と気持ちを明かした。
宮村はTVシリーズの放送時を振り返り「昔、『エヴァ』が社会現象になったときにはインターネットはまだ普及してなくて、考察本みたいなのが出て(笑)。当時はそれを読んで感心してたんですけど、今はネットで考察を見たり皆さんの意見を聞いたりして。『そうだったんだ』と思うことも多く、これが『エヴァ』の楽しみ方なんだなと」と笑顔でコメント。続く三石は「人物たちの気持ちが心に迫るものがあって涙しました。細かい設定とか結局この地球がどうなってるんだろうとかはわからないままなんですが(笑)、ミサトとしては大切な役割、重要なシーンを任されたのがうれしくて頑張ってやりました」と述べる。
公開初日に本日の開催場所でもある新宿バルト9で鑑賞したという山口。「台本読んだときも30分ぐらい泣いて。そのときよりさらに動けないぐらいの感動を味わいました。アニメという枠を超えた素晴らしい芸術作品。エンドロールが終わって、会場がシーンと静まったあとにバッと拍手が湧いたあのときのことは忘れられません。あと10回は観ると思います(笑)」と熱い思いを吐露する。また「『エヴァ』という作品に翻弄された」と述べた石田は、「一種、異様とも言えるような映像を観せられて、この物語をどう解釈したらいいんだろうかと、理解及ばないことが多すぎて。でも、話自体を理解するにはシンジとゲンドウの会話を聞き逃さないように追えばいいのかなって気がします」と語る。
立木は「最初に『エヴァ』を観たときの印象と変わりました。それは役者の皆さんの努力の結晶だと思う。言いたいことはいっぱいあるけど、庵野(秀明)監督と同世代としては最後までやれて、区切りをつけられてよかった。僕の中の『Beautiful World』ですね(笑)」とコメント。そして山寺は「僕としては……出られてよかったなって(笑)。たくさんのスタッフの方々が命を削って作った、唯一無二の存在である『エヴァ』に出られて。我々役者にとっては作品とキャラクターとの出会いがすべて。今でも代表作には加持リョウジと『アンパンマン』のチーズと書かれますから(笑)」と話し、観客の笑いを誘った。
本作ではトウジ、ケンスケ、ヒカリといった同級生たちが登場する第3村について、緒方は「あんなにほのぼのとした世界が『エヴァ』に存在するとは思ってなかった(笑)」とコメント。岩永は「第3村、素敵ですよね。希望がありました。それに26年目にして、ケンスケに“ケンケン”っていうニックネームが付きまして(笑)」とうれしそうに語り、岩男も「今日お会いしたときも『ケンケン』って呼びそうになるぐらい、親しみやすいニックネーム」と同意する。さらに「でもなんと言っても、中学生だった私たちがすっかり落ち着いた大人に……あ、ごめんなさい言っちゃ駄目?」と危うくネタバレを言いそうになって戸惑う場面もあった。
またアヤナミレイ(仮称)を演じたことについて、林原は「黒いプラグスーツと畑には驚きました。『エヴァ』という作品の中で、温かい人情と清らかな水と新緑とお腹いっぱい吸う空気ってかつて経験したことがなかったので、私自身、受け止めるのに台本だけでは足りなくて」と気持ちを吐露する。「でもレイの面倒を見てくれる村3人のおばちゃまたちがプライベートでもとてもよくしてくださる先輩方だったので、アフレコブースに一歩入ったら、そこが第3村になってました(笑)」と収録を振り返った。
続いて、空中戦艦・AAAヴンダーの乗組員を演じたキャスト陣がトークを展開。三石は「14年経ってみんなそれぞれいろんな経験をしてしまったんだろうなって思いもあり、ただ『一緒にいられる、わーい』にはならなくて……。実は皆さんのお思いを汲んでスカーフをしてきたんですけど」と手に巻いた青いスカーフを見せる。すると隣にいた山寺が「ありがとうございます」と即答し、客席を盛り上げる。また山口が「リツコには片腕というか、いつでも『イエス』と言ってくれるマヤちゃんがいて。1回ぐらい『無理です』って言ってくれてもいいのに(笑)。でもその信頼感に頼ってお芝居させていただいたと思います」と語ると、長沢は「ありがとうございます。私は、私という人間を形成するのに大切なものって、私の気持ちではなく、取り巻いてくださる人たちだと思うんですよ。マヤも14年を経て変わったこともあるけど、マヤを取り囲んでる環境は変わってないなと感じることができました」と思いを吐露した。
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」からの参加となった勝と伊瀬。勝は「Q」が完成した際に開催されたパーティで、伊瀬とともに司会を務めることになったことを「とんでもない大役で、吐きそうになるぐらい緊張しました(笑)」と振り返る。さらに伊瀬が「大役を任せていただいたのに、私はけっこうカジュアルな洋服で来てしまって。でも庵野さんは『伊瀬はそれでいいんだよ! そのまま突っ走れ!』って言ってくださって(笑)」と、TVアニメ「シュガシュガルーン」から付き合いがあるという庵野との思い出を語った。
完結した現在の心境を問われた石田は「僕が出てくるシーンは、加持さんと話をし、シンジくんと語り合うところ。カヲルの特殊な事情があるからこそ描かれたんだろうなと思いました。……これネタバレしないように話すのは難しいんですよね(笑)」と少々困った様子。そして「林原さんのカバー曲が挿入歌として流れるんですが、もしカヲルが出てくるシーンに(挿入歌が)流れるとしたら、中島みゆきさん『時代』がいいかな」と語ると、林原が歌ってみせる場面もあった。
庵野監督へ贈る言葉をと求められた緒方は「シンジとしては送り出す作業がありましたので、観終わっても『庵野さんおめでとう』という気持ちが強いです」とコメント。そして「TVシリーズの最後に、シンジはみんなに『おめでとう』って言われて、『ありがとう』って返したんですけど、今回は自分から離れていく皆さんに『おめでとう』と声をかけて送り出して自分が残った感じ。本当にお疲れさまでしたという気持ちでいっぱいです」と述べた。そして最後に「おかげさまで長い年月をかけてここまで辿り着いた作作品です。今、昔の作品を観たら違う気持ちが湧くのと同じように、皆様が数年後に観たら新しいものが発見できるような、繰り返して観てもらって違う思いを抱いていただけるような作品。ぜひTVシリーズから観ていただいて、その時々の気持ちを探していただけたらと思います」と語り、イベントを締めくくった。
※記事初出時より、表記を一部変更しました。
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