上田電鉄別所線が3月28日に全線で運行再開。復旧した「赤い鉄橋」千曲川橋梁を一望できる会場で別所線全線開通セレモニーが開催された。この日は「無料乗車デー」として、誰でも運賃無料で乗車可能に。平日ダイヤで運行され、臨時列車も増便された。
上田~城下間の千曲川橋梁は、2019年10月の台風19号で左岸側の橋台が流失し、桁の一部が落橋するなど甚大な被害を受けた。別所線は約1年半にわたり一部区間運休に。代行バスが上田~城下間で運行され、城下駅で列車に乗り換える必要があった。
災害復旧事業が完了し、全線で運行再開した3月28日、定期列車の前に上田駅5時55分発の「1番列車」が設定され、これに合わせて別所線上田駅ホームで始発列車出発式が行われた。「無料乗車デー」の実施にともない、上田駅は多くの人で混雑しており、一部列車で乗車人数の制限も行われたという。「別所線全線開通記念きっぷ」をはじめ、別所線全線開業記念グッズも販売された。
別所線全線開通セレモニーは千曲川左岸堤防道路にて、11時から開催され、上田市長の土屋陽一氏、上田電鉄代表取締役社長の山本修氏、国土交通大臣の赤羽一嘉氏らが出席。土屋市長は挨拶の中で、「この赤い鉄橋をなんとしても復活させなければならないという強い決意の下、国の特別な補助金も活用し、上田市が事業主体となって復旧する道を選択しました。別所線は通学、通勤、高齢者の通院といった生活交通の役割に加え、教育、文化、景観、環境、観光など、さまざまな面で、上田市にとって欠くことのできない大切な財産。市民の心の架け橋、未来への架け橋として、一丸となって別所線の真の復興をめざし、取り組んでいきたい」と述べた。
赤羽国土交通大臣は、「別所線の復旧にあたり、多くの市民の皆様から、地域のシンボルである赤い鉄橋の復旧を希望する署名などが寄せられたと聞いています。上田市がいち早く上下分離方式の導入を決定し、国が実質的に復旧事業の大半を負担する形で決着できたことは、地方鉄道事業が非常に厳しい状況である中、今後の被災鉄道における復旧のモデルとして高く評価されるものと確信しています」と挨拶。セレモニーの途中、上田駅を発車した定期列車が千曲川橋梁を渡り、会場付近を通過する場面もあり、車内は多くの乗客でにぎわっていた様子だった。
その後、城下駅を発車した記念列車が会場付近で一時停車。記念列車に乗車した地元の小学生らが手旗を振る中、セレモニーの出席者も手を振って出迎えた。テープカットの後、出席者に見送られて記念列車が発車。千曲川橋梁を渡り、上田駅へ向かった。
セレモニーを終え、インタビューに応じた赤羽国土交通大臣は、「私も今朝、7時18分発の電車で上田駅から別所温泉駅まで行ってきました。大変なにぎわいで、鉄道の全線開通が本当に素晴らしいことなのだと身をもって感じました」とコメント。上田電鉄の山本社長は、「別所線の生命線であるこの鉄橋を守っていかなければならない。赤い鉄橋を元に戻してほしいとの応援にこたえることができ、うれしく思っています」「ただ、これからがスタート。残して良かったと思ってもらえる別所線であるように、我々も努力します。ぜひ皆様にも、『乗って残そう別所線』ということでお願いしたいと思います」と語った。(MN 鉄道ニュース編集部)