生理になったらナプキンやサニタリーショーツを使う――現在では多くの女性が当たり前のこととして受け止めているが、改めて考えると"よりストレスのない対処法"を求めるなんて思うに至らず、初潮時から変わらないケアを続ける人が大半なのかもしれない。
量が多くても穿き替えなしで1日中過ごせる吸収型サニタリーショーツ「ベア シグネチャー ショーツ」が昨年6月に登場した。「その日であることを忘れるくらいの快適さ」を目指して開発されたフェムテック商品だ。
クラウドファンディングで同商品のプロジェクトを公開すると、45日で1億239万円の支援金を集め、注目を集めた。発売から約10か月。どのような使用感なのか実際に試してみるとともに、販売・開発元のベアジャパンに話を聞いた。
驚いたのは"ベタつき"と"生臭さ"の無さ
個人差はあるが、女性はおよそ月に1回、3~5日間出血する。最も経血量が多いといわれる生理2日目の平均経血は30~50ml。思ったより少なく感じるかもしれないが、ナプキンを交換しないとショットグラス1杯以上が下着にかかった状態と考えると不快だというのは理解に易いだろう。
ロリエ公式サイトによると、ナプキンの交換頻度は「1日5~6回」。それでも中々取り替えられないなどで経血漏れを経験した人もいる。そうでなくとも漏れてしまった時の対策として、生理期間はせめても白や淡い色合いの洋服は避けるなど気を回す人は多いだろう。
最近は各社から吸水ショーツが発売されている。GUも給水量は約15~20mlの吸水ショーツを今年3月に発売した。
ベアジャパンは現在、「ベア シグネチャー ショーツ」を改良した「ベア シグネチャー ショーツ 02」を展開。一見するとボクサータイプの黒いショーツだが、特殊加工の生地を使用しており、2日目平均量の約3倍とされる120mlもの液体を吸収することができる。
実際に筆者(20代女性)も使用してみた。この日は2日目かつダンスの発表会だった。衣装がローライズ気味ではあるが、商品自体が黒のスパッツのようにも見えるので多少見えても違和感はない。量は多いほうだが、ダンスをした上で1日使用しても漏れることはなかった。
吸収体は全長47センチで、特に量が多い日の夜用ナプキンが40センチ程度と考えると超ロングタイプ。「さぞゴワゴワした穿き心地なのでは」と思ったが、穿き心地は普通の下着と変わらない。お腹が温かいのもありがたい。
吸水ショーツについて「不衛生ではないか」「本当に漏れないか」と思う人も多いだろう。それでも驚くことに、下着を下ろした際、吸収しきれなかった分のべたつきがないのはもちろん、生臭さもなかった。
実は経血自体にそれほどニオイはなく、ショーツやデリケートゾーンに付着した経血から繁殖する雑菌が原因になる。同商品は吸収量が多いだけでなく、一般的な生地の5倍以上の抗菌力があるため、雑菌の繁殖力を防ぎ、ニオイを抑えられるようだ。
使用後は水かぬるま湯で手洗いし、洗濯機へ。吸水体は両先端のみウエスト部分にくっついており、汚れた吸水体部分のみ洗うことができる。思っていたより手洗いに時間はかからなかった。乾くのも早く、繰り返し使うことができる。
筆者は今まで、従来のケアに不満はないと思っていた。小学校のころから同じ方法で、伴う不快感も手間も"当然"だと思っていた。しかし、自覚していないだけで多くのストレスがあったことに気づいた。
「平均経血量は"平均"でしかない。安心してもらうには平均超えの給水量が必要」
ベアジャパン代表の高橋くみさん(※「高」は正式には「はしごだか」)は、「うちの会社は女性が多く、トイレ掃除も従業員交代で行っているんですが、ある日"生理のゴミ"が常にないことに気づいたんです」という。
同僚が掃除をしているから、迷惑をかけないように再度生理用品の入ったポーチに入れて持って帰っている人がほとんどだった。
「そんなことでストレスを溜めてはいけないからちゃんと捨ててねと伝え、汚物コーナーの袋を防臭効果のあるものに変えました。でもうちの会社だからこういうアクションを起こせるけど、ほかの職場だったらどうなんだろう……とも感じました」
働く女性が増える中で、切っても切れないのが「生理」だ。2013年頃、米国で吸水ショーツが発売され、高橋さんも使ってみたものの「使った全員が漏れてしまい、耐久性も低く何回か洗うとクロッチ部分が擦れてしまいました」という。
そこから"漏れない吸水ショーツ"の制作を開始。工場探しから販売まで2年半かかった。髙橋さんは「いちばん困ったのが工場探しですね」と話す。当初は下着メーカー工場に打診していたが、最終的に尿もれ用品の工場と開発を行うこととなった。
「平均経血量は"平均"でしかないので、安心してもらうためには平均量を大幅に超える吸水量にすることが必要だと考えていました。しかし、工場側からは『こだわりが強すぎて製品化は無理』ともいわれ、今では笑い話ですが一度断られました」
吸水量の多さ、洗いやすさ、乾きやすさなどを追求すると、工程と原価もかかる。プロトタイプを作っても、すぐに試せるわけでもない。「化粧品の改良だったら、例えば左右半分ずつで試すことができますが、生理はタイミングがありますから」という。
「全員で試してもらいたくても来るタイミングはまちまちです。また最低2ターンは試したいとなると、中々スムーズに進めることはできませんでした。開発自体は2年くらいやってましたね」
「生理用品のかわいいパッケージ」に抵抗がある人にも
昨年6月にクラウドファンディングを実施して1億円を超える資金が集まった。高橋さんは「とにかくびっくりしました。ここまで反響があるとは思いませんでしたが、それだけ生理について悩みがあり、この商品に期待している人が多いんだと感じました」と話す。
「ユーザーから『こんなに生理にストレスがあると気づかなかった』という声が多く寄せられています。中には『生理2日目で着物を着たけど大丈夫でした』という人も。私たちの方が『お着物を汚さなかった!?』と驚きました。逆にそれほど安心して使っていただけていることなので嬉しかったです」
ユーザーは30~40代のキャリアを持つ女性が中心だ。仕事柄長時間トイレに行けない人、職場に男性が多くトイレにポーチを持って行きづらいといった悩みを抱えていた女性に好評だという。また、知的障がいなどで生理自体を理解できず、違和感からナプキンを剥がしてしまう子どもを持つ親からも喜びの声が挙がっている。
今まで生理用品といえば、ピンクで可愛らしいものが多かったが、昨今スタイリッシュなデザインも増えている。女性だからといって全員が"女性らしいもの"を好んでいるわけでもない。同商品は黒一色で、"可愛い下着"っぽさはない。
見た目を男性寄りにしているXジェンダーのユーザーから「生理用品のかわいいパッケージをレジに持っていくのも毎回抵抗がありまして……これはとてもありがたい救世主かもしれません」という声も寄せられた。
同商品は公式オンラインストアのほか、伊勢丹新宿店、阪急うめだ本店、ロフトの一部店舗、全国各地の個人サロンなどで販売。今後、その他量販店でも取り扱いがスタートする予定だ。
「伊勢丹については下着売り場ではなく、館内で売れているものを集めた1階の雑貨売り場で販売されています。バイヤーさんは男性なのですが『コンビニでも生理用品を売っているんだから、ここで売れない訳がない』と。実際にお客様が手に取ったりショーツを当てたりしている姿を見て、すごいなと思いました」
今後は世界進出を目指していく。まずはアジア圏だ。
「欧米に比べ、アジアはタンポンの使用率が低く、膣に入れることに抵抗を感じている人は多いかと思います。まずは日本の人たちを、そしてアジアの人たちを幸せにする会社でありたいと思っています」
と語った。