10日前のプレシーテストで総合2番手のタイムを叩き出したアルファタウリ・ホンダの角田裕毅は、ルーキーながら多くの注目を集めている。初めてのF1レースに臨む角田自身が、緊張していないはずはない。それでもフリー走行を翌日に控えた木曜日に囲み取材に応じた際には、リラックスした雰囲気で質問に答えてくれた。
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──テストの疲れは取れましたか。
角田裕毅(以下、角田):はい。特にそれほど疲れなかったですし、準備万端です。
──テスト中はアドレナリンが出ていて疲れを感じなかったというより、シーズンに向けてしっかり身体ができあがっている感じですね。
角田:そうですね。テストでレース距離を走った時も、そんなにキツく感じなかったです。まあバーレーン自体、身体にきついコースではないというのもあると思います。今週3日間の本番では他の人たちとずっと走るので、どうなるか。その辺りも見越して、テスト後も欠かさずトレーニングを続けてきました。
──イギリスに戻って、シミュレーターにも乗りましたか?
角田:はい。1日だけ。丸1日、8時半から16時半までずっとでした。
──テスト後いろいろデータを見直したと思います。クルマや自分のドライビングについて、新たにわかったことはありますか。テストではかなりアンダーステアに苦しんでいたようですが、打開策は見えましたか?
角田:アンダー挙動に関しては、具体的に何か変えたというのはエンジニアから聞いてないです。でも現時点での一番の課題が、どれだけ曲がるクルマにできるかということなのは確かです。今週末はテストとはまた違った風の吹き方になりそうなので、同じコーナーでもテストとは違う感触になりそうです。テストでは追い風になった時のトラクションに特に問題がありました。そこはこの週末までに改善してきたとのことです。
■「どのような走りをするか、どこまでいけるのかしか考えていない」
──明日(金曜日)からのフリー走行で、やることはまだまだたくさんありますか?
角田:そうですね。フリー走行では、僕自身はとにかくクルマに慣れることに集中するつもりです。それでいつものリズムが取り戻せるようにする。テストメニューもいくつかありますが、それほど多くはないです。大部分はテストで消化しましたから。あとはその見直しと、改善を目指した新パーツの効果の確認ですね。
──チームメイトのピエール・ガスリーとドライビングスタイルを比べた場合、去年のダニール・クビアトほど極端な違いはないとチームの人から聞いたのですが、角田選手自身はそのような印象ですか。テスト中は、データのやりとりをしましたか?
角田:テストは午前と午後に担当が分かれていて、路面コンディションもずいぶん違ってたので、直接のデータ比較はなかったですね。ドライビングスタイルが似てるというのは、初めて聞きました。僕の場合は今のクルマが曲がりにくいので、安定方向のドライビングにならざるを得ない。そのなかでタイヤをできるだけ保たせつつ、限界を探っている感じです。
ガスリーからは、特に風の使い方を学びましたね。F1マシンは風による挙動変化が敏感で、ダウンフォースがしっかりかかるターン11が象徴的だったのですが、進入が向かい風で、立ち上がりは追い風のことが多かったんです。立ち上がりのトラクションをかける際に追い風だと、後ろが滑りやすくなる。それでコーナー進入も追い風だろうと、つい錯覚してしまう。だからどうしても、慎重なターンインになりがちでした。それをガスリーはしっかり見極めて、風向きに合わせた走り方をしていましたね。
──角田選手としては今のクルマだとフロントがダルすぎるというか、もっとしっかりフロントが入っていく方が好みなんですね。
角田:そうですね。前がシャープに動いて、後ろは軽い方が好きです。でもアンダーも決して嫌いではない。アンダーでもオーバーでも走れるドライバーになりたいですし。ですからアンダーでも、そこまで問題は感じないです。
──テストでのDRSの一件を、改めて話してください。
角田:僕も別にわざと早くDRSを開けようと思っていたわけじゃない。そうしたところでテストの意味はないですしね。そもそも2日目までは、DRSボタンを押しても開かないようになっていた。ところが最終日だけは、どの区間でも押すと開くようになってた。ああ、本番に向けてのテストなんだろうな、と。0.25秒ぐらいは、速くなっていたかもしれないですね。最後は少しラップタイムを意識しましたけど、でもあくまでテストですから。
──今週末、誰とレースをするのを楽しみにしていますか。
角田:特に誰、というのはないですね。自分がどんな走りをするか、どこまでいけるかしか考えてないです。とにかくF1でのレース経験は皆無ですしね。知らない世界での自分との出会いが楽しみです。