トップへ

しつけのための「体罰」容認、15ポイント減少…「お尻をたたく」に世代のズレ

2021年03月26日 00:02  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは3月26日、全国2万人の大人や約350人の子どもを対象とした「子どもに対するしつけのための体罰等に対する意識・実態調査」の結果を公表した。同25日に報道陣向けの説明会を開いた。


【関連記事:先輩の母親と「ママ活」したら、地獄が待っていた…もらった「250万円」は返すべき?】



同様の調査は、2017年7月にも大人2万人を対象におこなわれており、今回の調査では体罰の意識などの変化を経年比較することを主な目的とした。しつけのための体罰を容認する回答者が「56.7%」から「41.3%」に減少するなどの変化がみられたという。



同法人の西崎萌さんは、「(前回調査との比較で)体罰を容認する回答者が減ったという結果については歓迎している。引き続き、体罰等が子どもに与える影響をより広く社会に啓発していく必要がある」と話した。



●過半数が「お尻をたたくこと」は容認

大人に対する「意識調査」は、全国20歳以上の大人を対象に、2021年1月15日~19日、子どもがいる男女各5000人、子どもがいない男女各5000人の計2万人からウェブアンケートで回答を得た。



また、「実態調査」は1月22日に、第一子の年齢別に偏らないように、男女各500人の計1000人からウェブアンケートで回答を得た。2017年調査の対象者はあらかじめ除かれているという。



性別では「男性」が、年代では子どもの年齢が比較的高い子育て世代の「40代~50代」が体罰を容認する割合が相対的に高いことがわかった。



また、体罰の内容によって意識が違うことも明らかになった。



セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、体罰を「殴る、たたく、蹴るといった有形力を用いる罰」と位置づけているところ、「こぶしで殴る」「ものを使ってたたく」「加減せずに頭をたたく」といった体罰については、いずれも9割以上の人が「決してすべきではない」と回答した。



ところが、同じく体罰にあたる「頬を平手でたたく」について「決してすべきではない」と回答した人の割合は79.2%にとどまった。さらに「お尻をたたく(48.7%)」「手の甲をたたく(51.9%)」となるなど、半数近くが容認している結果となった。



最も容認している人が多かった「お尻をたたく」行為については、年代があがるほど容認している人が増えており、60代以上で体罰を「決してすべきではない」と回答した人の割合は59.1%だったのに対し、「お尻をたたく」行為を「決してすべきではない」と回答した人の割合は38.7%と約20ポイントも差があった。





この差について、西崎さんは「『お尻をたたく行為は体罰に含まれない』と考えている人がいることを示しているのでは」と指摘。どのような行為が体罰なのかという認識が人によって異なっていることが、体罰容認の意識に影響を与えているとの認識を示した。



なお、実態調査でも、過去3カ月にしつけのために体罰をしたかどうかという問いに対して、1回以上「お尻をたたいた」ことがある回答者の割合は、ほかのたたく行為よりも多い29.2%にのぼった。



●4割近くの子どもが、体罰等を受けた経験「ある」

今回は、大人への調査とは別に、子どもに対する調査を初めて実施した。全国の小学生以上の子ども(17歳以下まで)を対象に、期間は2021年2月1日~28日、計344人(男子120人、女子203人、その他/答えない21人)からウェブアンケートで回答を得た。



体罰のほか「怒鳴りつける」「だめな子だと言う」「にらみつける」といった子どもの心を傷つける行為(体罰等)を保護者などにされたことがあるかどうかについて、38.7%の子どもが「ある」と答えた。



また、体罰等を受けた経験が「ない」と答えた子どもの方が、「自分の意見を身近な大人に聴いてもらっていると思う」と回答する割合が高かった。



「子どもの意見を聴き尊重すべき」という意識がある大人は、体罰を容認しない割合が高かったことも調査結果では明らかになっており、「子どもの意見を聴く」という大人の姿勢が体罰等の減少にも影響していることがうかがわれる。





●「定期的・継続的な意識調査が重要」

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、調査結果をふまえ、国や自治体に対して、以下の4点を提言としてあげた。



(1)体罰等に関する調査を国レベルかつ継続的に実施し、子どもに対しても実施すること
(2)子どもに対する体罰等を容認しない社会をつくるために、効果的な啓発活動を推進すること
(3)子ども・子育て世代への支援策を拡充し、子育てに関連する公的予算を増額すること
(4)子どもの権利を、大人と子ども自身へ啓発、普及し、教育していくこと



同法人・子どもの虐待予防事業チームリーダーの大野容子さんは、「今回の調査結果で体罰の容認度は減少しているが、一時的なものである可能性も否定できない」とし、社会全体の体罰等に対する意識の変化を定期的に調査することが重要だと話した。