新型コロナウイルスを受けて、ビジネスのオンライン化が進んでいる。ITの専門家の需要は高まる一方だ。
ITエンジニア向け転職サイトの米Diceは3月、2019~20年にかけて米国で最も給与がアップしたIT職種のトップ10を発表した。調査は20年9~12月にネット上で実施し、同社運営のサービス登録者ら9143人から回答を得た。
給与の上昇率が最も高かったのは「サイバーセキュリティアナリスト」(16.3%)だった。サイバー攻撃から情報を守るため、攻撃手法を分析、対策を迅速に行う職種。19年の平均8万8663ドル(約964万円)から20年には10万3106ドル(約1121万円)に上昇した。
業務のオンライン化でサイバー攻撃対策のニーズが拡大
同社によると、サイバーセキュリティアナリストの給与が上昇した背景には、新型コロナウイルスの感染を防ぐためにテレワークが広がったことで、多くの従業員が個人所有のPCやスマートフォンで業務を行うようになったことがあるという。
こうした業務のオンライン化は脆弱性を高め、ハッカーらに前例のないサイバー攻撃やセキュリティの突破口を与えてしまう可能性がある。したがって、セキュリティホールを突き止める能力を備えた人材が重視されるようになった、としている。
2位は「データサイエンティスト」(12.8%)。ビジネスの成長につながるデータ分析を担う職種で、19年の10万6298ドルから20年には11万9898ドル(約1304万円)に上昇。他方、ソフトウェアの開発・運用を手掛ける3位の「DevOpsエンジニア」(12.2%)は、19年の10万2606ドルから11万5125ドル(約1252万円)に上昇している。
4位に入った「テクニカルサポートエンジニア」(8.2%)についても、テレワークの広がりが給与上昇に影響したとみられる。19年の6万3420ドルから20年には6万8651ドル(約746万円)と約5000ドル上昇した。
ほぼすべての"経験年数"で平均給与アップ
5位は「クラウドエンジニア」(6.3%)。クラウドの普及や重要性の高まりを受けたものとみられる。20年の平均給与は13万6479ドル(約1484万円)だった。
6位以降は「ビジネスアナリスト」(5.3%)、「ウェブディベロッパー」(4.9%)、「データエンジニア」(4.7%)、「サーバーセキュリティエンジニア」(4.3%)、「データアーキテクト」(3.2%)と続いた。
一方、平均給与を経験年数別にみると、ほぼすべての年数で2020年が前年を上回った。「1年未満」の平均給与は、5万5231ドルから5万7031ドル(約620万円)に上昇。「1~2年」でも、5万8718ドルから5万9899ドル(約651万円)に上昇していた。
「6~10年」では、8万5927ドルから8万9380ドル(約972万円)と最も上昇幅が大きかった。「11~15年」でも9万9138ドルから10万1232ドル(約1101万円)、「15年超」でも11万4915ドルから11万7189ドル(約1274万円)といずれも平均給与が上昇している。一方で「3~5年」では、7万4706ドルから7万4407ドル(約809万円)に微減した。
同社によると、米国全体におけるIT技術者の平均給与は19~20年に3.6%上昇し、9万7859ドル(約1064万円)になった。