新型コロナウイルス感染拡大の影響でテレワークを導入する企業が増えています。そんな中、「4月から配属される新入社員をオンライン中心で教育しなければいけないけどどうすれば……」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
ジェイフィールの調査によると、リモートワークで「新人が経験値が高まらない」と感じているマネージャー層は45.6%。「スキルセットがしづらい」と感じている人も27.9%います。
私の所属する会社は世界33か国で400人がフルリモートで働いています。リモートワークは場所や時間に拘束されずに働けるという魅力がありますが、「相手の顔が見えないから心理面や理解度など情報のキャッチが難しい」という課題があり、長い時間をかけて解消してきました。
今回は春からのオンライン新人育成に関する不安を払拭するためのポイントをお伝えします。(文:株式会社ニット 広報 小澤美佳)
「性善説」をベースとした管理職・育成担当の3つの心構え
新人育成においては、まずは管理職・育成担当が"テレワークに必要な3つの心構え"をもつことが大切です。この心構えをもって接することで「会社に馴染めずに退職」「突然の音信不通」などの新人離れを防ぐことができます。
1.「オンラインでなんでも出来る」と思い込む
「対面で会ったことないけど、オンラインだけで信頼関係作ることできるの?」という質問をよく耳にします。しかし、これは「リアルでマネジメントしていた時と比べているから」です。
当社では面接・入社後の育成や事業運営も全てオンラインで行っていますが、特に問題はありません。そもそも、「テレワークで上手く仕事が出来るのか」と不安になっているのはマネージャー(管理職)だけということが多いように感じます。まずはできると信じてやってみてください。
2.「仕事をしている」という性善説をもつ
前述のようにテレワークになって不安になる理由でもあると思いますが、「本人任せだと仕事をしているのか……」という声もよく聞きます。しかし、仕事をサボりがちな人は、オフィスでも家でも同じことだと私は思うのです。まずは「仕事をしている」と信じましょう。
一方、テレワークは長時間労働の危険があることも念頭に置かねばなりません。例えば、移動時間というオンとオフの切り替えの時間がなくなったり、夜中まで物理的に働けたりと、真面目なメンバーが働き過ぎで体調・メンタルを壊すケースも多いようです。
特に新人は「頑張らないと!」という意識が強い傾向にあります。働く時間のマネジメントにも着目し、メンバーのケアをしましょう。
3.メンバーを褒めて信頼関係を構築する
とはいえ、成果があがらないなど「サボっているのでは……?」と思ってしまうこともありますよね。自宅で自律的な仕事を促すために重要なのは、「信頼関係を構築して、メンバーのやる気を生み出す」ことです。
メンバーを観察し、チャットなどで「昨日の商談よくできていたね」「連絡してくれた情報、すごく勉強になった」など、"1日1褒め"を心掛け、オフィス以上に褒めの姿勢を持ってみてください。
新人にはフェーズを区切って目標設定する
リモートの環境で新人を受け入れ、組織に定着、現場での戦力化までもって行くことを『オンボーディング』と呼んでいます。そのためには、フェーズを区切って段階的に目標設定をすることが大切です。戦力になるまでどのような対応をすべきか作り込んでいってください。
注意して欲しいのは、研修などで「これができて当たり前」というメッセージを与えないこと。新人は「この企業でこのままやっていけないかもしれない」と大きな不安を感じてしまい、離職につながる可能性もあります。
決して「高い目標を与えるな」ということではありません。「最終的にはここまでできるようになってほしい」という目標は伝えるなら、併せて「1か月間でここまで達成してほしい」「次の1か月はここまで」と段階を踏み、直近の目標を伝えることが大切です。「目標の見せ方」がポイントです。
ニットでは「入社から2か月で新メンバーが独力で業務を獲得し、自律的に働ける」という状態を「オンボーディングに乗っている」といいます。そこからさらにフェーズごとに区切って新メンバーが業務の軌道に乗るようにサポートしています。
企業として「即戦力になる人材」は非常にありがたいですよね。しかし、人の育成には時間がかかります。ひとつずつコツコツと知識と経験を積み上げていってもらうことが大切です。企業としても人の育成には魔法がないと理解し、長期的な目標設定をしながら丁寧に愛情をかけて育成していってください。
【プロフィール】小澤美佳
新卒でリクルート入社。採用領域の営業、営業マネージャーを経て、リクナビ副編集長として数多くの大学で講演実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。中米ベリーズへ単身移住・起業。その後、ニットに入社し、営業・人事を経て、広報。オンラインファシリテーターとしても活動中。