2021年03月19日 21:21 弁護士ドットコム
恋人だと思っていた相手は既婚者、私は「不倫相手」だったーー。不届き者の男性による被害は、珍しくありません。
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東京都内在住の会社員・トモコ(20代後半)さんも、そんな被害者の一人。既婚者であることを隠していた男性に対して、別れて数カ月が経った今も憤り、ペナルティーを与えたいと考えています。
トモコさんは、その男性(30代)とはSNSで知り合いました。共通の趣味で意気投合したことから、自然な流れで、食事に行き、交際が始まります。「付き合おう」などの言葉はありませんでしたが、デートや肉体関係もあったので、恋人だと思っていました。ただ、次第に「あれ?」と違和感を覚えます。
「私の自宅に来ても絶対に泊まらないし、独り暮らしのはずなのに、彼の家に行かせてくれなかったんです。ひょっとしたら、と思って、彼のfacebookアカウントを探し出してみたら、『義理の父』とのエピソードを投稿していたんです」(トモコさん)
そこで、次に会ったとき、「結婚しているよね?」と問いただしました。彼の反応は、トモコさんの予想を裏切るものでした。
「彼は『厳密に言うと、していない』と、意味不明な返答をしてきたのです。小さな子どもがいることは認めましたが、『夫婦関係が悪化して、妻は実家に戻っている。だから、厳密に言えば結婚していないし、厳密に言えば一人暮らし』と支離滅裂なことを言っていました」(トモコさん)
さらに、「『君とは体の相性がいいから別れたくない。最悪、気の合う友達として関わり続けるだけでもいい。話し相手でいてほしい』とぬけぬけと言いました」。呆れ果て、その日、関係を終わらせることを決めました。
トモコさんは今、「結婚していることを隠されていたことと、知らない間に自分が不倫に加担させられていたことの2つに腹が立ちます」。
このような場合、彼に、法的措置をとることはできないのでしょうか。男女トラブルに詳しい氏家信彦弁護士の解説をお届けします。
ーートモコさんは、男性に対して法的措置をとることはできるのでしょうか。
トモコさんは、男性に対して慰謝料を請求することができますが、同時に、男性の妻から慰謝料を請求されてしまう可能性もあります。
一般的に、女性(このケースのトモコさん)が、妻のいる男性と肉体関係を持つことは、男性の妻に対し、2人で共同して精神的損害を与えることになります。損害を与えられた妻は、夫と女性の両者に対し、慰謝料を請求することができます。
ただし、妻は、どんな場合にも必ず慰謝料請求ができるわけではありません。女性に「過失」が認められない場合には、女性は請求を免れるからです。
妻が慰謝料を請求するには、女性が、「男性が結婚していると知りながら関係を持った」、もしくは「結婚していることを知りうるのに見過ごしてしまった」など、女性に故意・過失が認められなければなりません。
トモコさんの場合、「彼が遊びにきても絶対に泊まらない」「彼の家に行かせてくれない」ことを不審に思い、男性が結婚しているのではないかと自ら推測し、結婚の事実を確認した上で、すぐに関係を終わらせています。そのため、過失が認められず、請求を免れる余地もあると考えられます。
ーーでは、トモコさんから男性への慰謝料請求は可能でしょうか。
トモコさんは知らなかったとはいえ、共同して不倫という不法行為をした立場にあります。このような場合でも、男性に慰謝料を請求できるかどうかは、両者の違法性・不法性の程度により決めるというのが、最高裁判例の立場です。
このケースでは、既婚者であることを隠し、発覚した後も関係を続けようとするなど、男性の違法性が大きいと思われます。そこで、トモコさんは男性に慰謝料を請求することができます。なお、期間が半年間と短かったことなどや、過去の裁判例からすると、請求できる金額は50万円~80万円くらいではないかと考えられます。
(弁護士ドットコムライフ)
【取材協力弁護士】
氏家 信彦(うじいえ・のぶひこ)弁護士
東京大学法学部卒。東京と新潟で法律事務所に勤務後、平成24年に現事務所を開設。平成29年度新潟県弁護士会副会長。遺言・相続、交通事故、離婚等の個人案件のほか、契約書作成、労働問題、企業法務、不当クレーム対策、民事介入暴力対策等まで、幅広く対応している。
事務所名:新緑法律事務所
事務所URL:http://www.shinryoku-law.com/