2021年03月19日 12:31 弁護士ドットコム
為替相場の上下を予想して投資する金融商品「バイナリーオプション」の助言名目で現金をだまし取ったとして、アイドルグループ「SKE48」の元メンバー山田樹奈さんらが3月16日、詐欺や特定商取引法違反(不実告知)などの疑いで愛知県警に逮捕された。
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読売新聞(3月16日)によると、山田さんらは2020年1月31日、男性に対し「(必ずもうかる)ロジックがある」などとうそを言って信用させ、バイナリーオプションの助言料名目で現金50万円をだまし取った疑い。
SNSでもバイナリーオプションを紹介するアカウントは多数あり、「投資初心者でもOK」、「楽して稼げる」とうたうものもある。
果たして山田さんらの行為は、何がアウトだったのだろうか。金田万作弁護士に聞いた。
——山田さんらの行為は、法的に何が問題ですか。
まず、実際にはバイナリーオプションで利益を得る方法(ロジック)がないとすれば、その方法があってそれを教えるかのように説明して、投資指導料(助言料)として現金を受け取ったことについて、人を欺いて財物を交付させたとして、刑法246条1項の詐欺罪に該当します。
具体的な勧誘文言は報道でははっきりしませんが、「必ず」儲かるロジックがある、という説明をしていれば、そんな方法は現実には存在しないので、実際に何か投資手法を指導助言していたとしても、詐欺罪に該当します。
また、報道によると、出会い系アプリに登録し、知り合った男性を誘ったということです。
この場合、バイナリーオプションの投資指導契約の勧誘の意図を隠して呼び出して、契約をさせているので、いわゆるアポイントメントセールスとして特定商取引法2条1項(2号)の訪問販売にあたります。
バイナリーオプションで利益を得る方法を教えるというのが役務の内容になるので、そのような方法はなく虚偽(不実)であれば、特定商取引法6条1項1号の不実告知に該当します。
なお、実際に有償でバイナリーオプションの投資判断(売買の別・時期)に関する助言を行っていれば、金融商品取引法2条8項11号(ウ)の「投資助言行為」に該当し、無登録営業で違法となります。
——もし助言料をもらっていなかった場合は?
助言料をもらっていないとすれば、詐欺罪の要件である「財物の交付」がなく、無登録営業の要件である「有償の役務提供」でもないので、いずれも該当せず、法的には問題ありません。
——バイナリーオプションをはじめ、こうした金融商品の契約ではどのようなことに注意すれば良いですか。
金融商品含めた投資にはリターン(利益)だけでなく必ずそれに見合った又はそれ以上のリスクがあります。
一般的な金融商品でもリスクがあり、金融商品取引業の登録を受けた業者にのみ取り扱いが許され、規制や業者に説明義務などが課されていますが、それでもトラブルがあるのが現状です。
説明されて理解したつもりでも、十分にリスクを理解できていなかったという事例も多く、慎重な態度が望ましいです。
通常の金融商品以外でも、少し前は未公開株・社債・ファンドなどから不動産(原野・マンション)・FX・海外事業・暗号資産(仮想通貨)などを巡り、詐欺的な投資勧誘による消費者トラブルが多く発生しました。
最近では、SNSや出会い系アプリを経由した投資勧誘による消費者被害が若者から中高年まで増えています。
金融商品などの高額な契約をする際には、自分ひとりで判断せずに、家族や周りの人に相談したりするのが望ましいです。投資勧誘トラブルで困った際には、被害回復に繋がる可能性がありますので、すぐに消費生活センターや弁護士に相談してほしいです。
【取材協力弁護士】
金田 万作(かなだ・まんさく)弁護士
第二東京弁護士会消費者問題対策委員会(電子情報部会・金融部会)に所属。投資被害やクレジット・リース関連など複数の消費者問題に関する弁護団・研究会に参加。ベネッセの情報漏えい事件では自ら原告となり訴訟提起するとともに弁護団も結成している。
事務所名:笠井・金田法律事務所
事務所URL:http://kasai-law.com