ル・マン24時間レースをアウディで3度制したマルセル・ファスラーが3月17日、プロフェッショナル・レースからの引退をSNS上で表明した。四半世紀に及ぶレースキャリアのなかで「自分が達成できたことを誇りに思う」と語っている。
44歳、スイス国籍のファスラーは、2011、2012、2014年に、いずれもアンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエとともにアウディのLMP1マシンでル・マン24時間レースの総合優勝を果たしている。
ファスラーはまた、2013年にはトレルイエとオリバー・ジャービスとともに、セブリング12時間レースも制している。その3年後にはGTLMクラスのコルベットを駆り、セブリングとデイトナ24時間でクラス優勝も果たした。
「少年の頃、僕はレーシングドライバーになるという夢を持っていた」。引退発表に際し、ファスラーは記している。
「ありったけの情熱、そしてコミットメントとともに、多くの浮き沈みを伴って僕は長い道のりを歩んできたけれど、最終的には最高のレースを展開した場所に到達できた」
「この経験は、僕がかつて夢見た以上のものだった。それを達成できたことを、誇りに思う」
「僕のキャリアのハイライトは、間違いなくル・マン24時間レースにおける3つの勝利だ。伝説的なレースで優勝した最初のスイス人であることを、とても誇りに思っている」
「あの表彰台の上に立った感覚は、ずっと、深く、心の中にある」
1999年のドイツF3でクリスチャン・アルバースに続くシリーズ2位になるなど、ジュニア・オープンホイールのキャリアを経て、ファスラーは世紀の変わり目にDTMドイツツーリングカー選手権へと戦いの場を移した。DTMには、メルセデスとオペルから参戦した。
2006年にはスポーツカーレースに転向、ル・マン24時間に初めて参戦した。2009年のル・マンでは、シボレー・コルベットC6-Rもドライブしている。
ファスラーは2008年、アメリカン・ル・マン・シリーズの数レースにアウディR10 TDIで参戦。これはアウディとの長い関わりのスタートであり、その後ファスラーは7度にわたるアウディからのル・マン出場で、5回もの表彰台を獲得している。
ファスラーは2016年限りでアウディがLMP1プログラムを終了した後も、スパ24時間、ニュルブルクリンク24時間にアウディから出場した。
近年、彼は再びコルベット・レーシングに加わり、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の長距離レースにおける助っ人ドライバーとしてチームに加わってきた。
プロフェッショナル・ドライバーとしてのファスラーの最後のレースは、2020年11月のIMSAセブリング12時間レースということになる。このレースでファスラーはオリバー・ギャビン、トミー・ミルナーとともにシボレー・コルベットC8.Rをドライブした。
「これまでのすべてのシーズン、僕はとても多くのチーム、チームメイト、ライバル、友人たちとともに仕事をすることができた。その誰もが、僕が将来の人生に向け携えていく貴重な経験を与えてくれたんだ」とファスラーは語っている。
「僕とともにこれまで走り続け、ともに戦い、情熱を共有し、僕を信じ、あらゆる面で支えてくれたすべての人々に、深く感謝したい。みんな、最高だよ!」
「最後に僕の家族、とくに妻のイザベルと娘たちの愛と支えに感謝したいと思う。君たちがいなければ、僕はこれらのことを成し遂げることができなかっただろう」
ファスラーの引退発表を受け、アウディはSNSに次のように投稿している。
「私たちはル・マンの3度にわたる勝利、FIA WECのタイトル、GTレースにおける成功など、多くの素晴らしいレースをマルセルとシェアしてきました。マルセル、あなたの将来に幸多かれ!」