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どれを選ぶ? 人気の小型SUVを徹底比較! 第7回 ヤリスクロスと競合必至? 新型「ヴェゼル」はホンダの力作だ!

2021年03月17日 11:31  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
国内外の小型SUVを取り上げてきた本特集。最後の1台は2021年4月の発売を予定するホンダの新型「ヴェゼル」だ。デザインを一新し、最新のハイブリッドシステムを採用したホンダの力作だが、「ヤリスクロス」で小型SUV市場の覇権を握るトヨタ自動車の牙城を崩すことはできるのか。

○ホンダらしさあふれる新商品?

「都市型SUVクーペ」という新ジャンルを切り拓くべく、2013年にデビューしたのがホンダの初代「ヴェゼル」だ。クーペとミニバンの良さをミックスしたコンセプトは世界中で人気となり、累計で384万台を販売するという大ヒット作となった。その人気モデルがついにフルモデルチェンジする。

初代が登場したころに比べるとライバルが激増した小型SUV市場だが、新型ヴェゼルは先代に続き、世界で選ばれるクルマとなれるのか。事前説明会で実車を見つつ、関係者にも話を聞ききながらその辺りを考察してみた。

○ヴェゼル開発で再考した「Hondaらしさ」

ヴェゼルの開発責任者であるホンダ 四輪事業本部 ものづくりセンターの岡部宏二郎氏によると、新型車の開発は「モノがあふれ、機能やスペックだけでは商品が選ばれにくい時代になっている今、どうしたらこのクルマを選んでもらえるのか」をチーム一丸で考えることから始まったという。それには「誠実、身近、素朴といったベース価値」「スマート、カジュアル、ユニークといった個性的価値」「ワクワク、チャレンジ、ユーモアといった付加価値」という3つの価値を持つ過去のホンダ製品を見つめ直し、それをベースに時代のニーズを取り入れ、ホンダブランドらしいクルマを作ることが大事との結論に至ったそうだ。

新型ヴェゼルについてのプレゼンでは冒頭、初代「シビック」「シティ」「NSX」「フィット」といった四輪車をはじめ、二輪の「スーパーカブ」、人型ロボットの「アシモ」、小型ジェット機の「ホンダジェット」など、ホンダらしさあふれる製品の写真がスクリーンに投影された。新型ヴェゼルは、ホンダらしい商品をしっかりと意識して開発したクルマであるとの意思表示なのだろう。
○新型「ヴェゼル」の新しいところ

さて、肝心の新型ヴェゼルはどう変わったのかだが、実車を見ると「これが本当にヴェゼル?」と思うほど、先代の面影がなかった。最初に思ったのは、切れ長のヘッドライトの中に横長に入るデイライトのデザインと、水平に伸びるウエストラインの上に薄い台形の屋根が乗っているそのスタイルが、ちょっとボルボの「XC-40」に似ているな、ということ。巷ではマツダのSUVやトヨタ「ハリアー」との類似性を指摘する声が聞かれるが、実車を見た際の筆者には思い浮かばなかった。

ロングノーズで四角いスタイルを採用した新型は、丸くてモノフォルムの先代(全長4,340mm、全幅1,790mm、全高1,605mm)よりも大きく見えたが、聞けばボディサイズはさほど変わっていないとのこと。隣に立ってみると屋根の位置は結構低く、「ひょっとすると、立体駐車場に入る高さを実現しているのでは」という気がした。

麻雀が好きなのか、フロントからリアに向かって一直線に伸びるサイドラインを「一気通貫」と表現したのは、エクステリアデザイン担当の阿子島大輔氏だ。ボディと同色のフロントグリルや左右がつながったリアのコンビランプなどは、ホンダの新しい意匠なのだという。先代の面影を残すのは、三角形の形をしたリアドアのオープナーぐらいだろうか。

上級モデルのフロントグリルに配されたトリコロールなど、「色」について解説してくれたのはカラーマテリアルフィニッシュ(CMF)担当の斧山真弓氏。白と赤はホンダのブランドカラーであり、青は「ホンダジェット」や「スーパーカブ」からきているという。ボディカラーの「サンドカーキ」については、流行のナチュラルカラーを採用したとのこと。新型ヴェゼルがターゲットとする「ジェネレーションC」と呼ばれる人たちの価値観に訴えかけようという趣向だ。白っぽいグレージュとブラックからなる2トーンの内装コーディネートも、明るくて素敵である。

インテリアについてはホンダデザインセンターの廣田貴士氏に話を聞いた。メータークラスターやセンターのディスプレイ部分は、運転する際の視線移動をなるべく少なくするため、ウインドーとの境目に近い位置に設置したとのこと。乗り込んで確かめたところ、確かにとても見やすかった。

水平基調のインパネは上部ラインをそのままドアのショルダーラインに一直線につなげているが、これは乗員に爽快な視界を提供することを念頭にデザインしたという。広い視界は、「シビック」「アコード」「インテグラ」といったホンダの旧モデルと「MMI」(マン・マシン・インターフェイス)思想を共有する部分だ。近年では、2020年発売の新型「フィット」あたりから強くアピールしているポイントでもある。

コンソールの空調ダイヤルは丸型3連式で、そちらに視線を移さなくても操作がしやすそうな形状だ。タッチパネルにすれば見た目としてはスマートな感じを演出できるが、実際のところ、運転中の操作はやりにくい。そんな判断がなされたようだ。

後席の足元は広々としている。天井に頭上まで伸びる大型パノラマルーフを設定(PLaYというグレードに標準装備)しているのも見逃せない部分だ。廣田氏によると、エアコンにもひと工夫をこらしたそう。フロント左右端のルーバーには2つの吹き出し口があるのだが、ダイヤルで「くの字」型の方を選ぶと乗員の顔に強い風が当たらなくなり、さらにサイドウインドーと天井のガラスルーフ部分にエアーの幕を形成することで、外からの熱を遮断する効果があるのだという。こちらもホンダらしい独創的なアイデアのひとつだろう。

リアゲートには、このクラスでは数少ない電動のハンズフリーアクセス(予約クローズ機能付)を採用。開けると凹凸の少ない形状のラゲッジが現れる(容量は未発表)。後席をダイブダウンすると低くフラットな床面になるほか、座面をチップアップすることができるので、背の高い荷物も積み込むことができそうだ。ホンダ独自のセンタータンクレイアウトがなせる技である。

運転支援面では、全車速の渋滞追従機能付きACCや車線維持システム(LKAS)を含む最新の「ホンダセンシング」を標準装備。コネクテッド面では、スマートフォンがクルマのキーやリモコンになる「Hondaデジタルキー」「Hondaリモート操作」、クルマがWi-Fiスポットになる「車内Wi-Fi」、ナビを新しい地図に自動で更新する「自動地図更新サービス」など、快適性がアップする機能を数多く取りそろえている。

パワートレインは1.5Lアトキンソンサイクルエンジン+E-CVTの2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」と、1.5Lガソリンエンジン+CVTの2本立て。ラインアップはe:HEVが2トーンボディカラーの「PLaY」、充実装備の「Z」、ベーシックな「X」の3グレード、ガソリンが「G」の1グレードとなる。タイヤは乗り心地の良さそうなミシュラン「プライマシー4」(225/50R19)を採用していた。

気になる価格面だが、最近の報道ではガソリンモデルが230万円弱から、ハイブリッドが260万円台からとの情報がある。現行型はガソリンが211万円強から、ハイブリッドが250万円強からだが、この価格差がどう影響するか、気になるところだ。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)