2021年03月17日 10:21 弁護士ドットコム
2020年に交通事故で死亡した歩行者1002人のうち、約6割に当たる582人に何らかの法令違反があったという調査を警察庁がまとめた。
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共同通信の報道によると、違反の内訳は、
・車が通り過ぎる前後に道路を横断(116人)
・信号無視(93人)
など。
事故に遭った歩行者は被害者には違いないが、たとえば「酒に酔って道路に寝そべる等(92人)」といったケースでは、運転手が気の毒という状況もありえるかもしれない。
死亡にまではいたらなかったケースも含めて、被害にあった歩行者の交通違反の度合いは、刑事や民事にどう影響するのか。中川龍也弁護士に聞いた。
――死亡事故では、かならず刑事裁判を受けることになるんでしょうか?
過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)の成否が問題となります。
この法律では次のように規定されております。
「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。」
死亡事故を起こしてしまった場合、必ず刑事裁判にかけられるという訳ではありませんが、被害者死亡という結果が重大であるため、車両運転者に全く過失がない場合を除いて、刑事罰に問われてしまう傾向にあります。
刑事裁判にかけられない場合でも、略式命令手続きという手続きがあり、運転者に罰金の支払いを命じられることも多いです。
ただし、被害者側の落ち度は、刑の量定に当たって考慮されるべき犯罪事実(これを「犯情事実」といいます。)であり、量刑に影響を与えることになります。
横断歩道以外場所における無謀横断や、泥酔して路上にて寝てしまった場合は、被害者側の落ち度も認められることになります。
――被害者の落ち度は民事責任にどう影響しますか?
夜間、横断歩道のない場所で無謀横断を行った場合の歩行者とその歩行者をひいてしまった車両運転者の過失割合は、原則、歩行者:運転者=25:75となります。
幹線道路を横断したような場合は、歩行者の過失割合が更に10パーセント増えることになります。
他方、高齢者の方が横断歩道まで行くのが大変で、やむを得ず道路を渡ってしまったような場合は、歩行者の過失割合が5パーセント減ることもあります。
また、歩行者が夜間に酒に酔って道路上に寝てしまったような場合、歩行者とその歩行者をひいてしまった車両運転者の過失割合は、原則、歩行者:運転者=50:50となります。
このような場合でも、歩行者の過失割合は50パーセントに止まり、車両運転者には相応の注意義務(道路状況を慎重に確認すべき義務)があることには注意が必要です。
【取材協力弁護士】
中川 龍也(なかがわ・たつや)弁護士
立命館大学卒。平成22年弁護士登録(京都弁護士会所属)平成28年11月に中川龍也法律事務所を設立。主な取り扱い分野は交通事故(主に被害者側)事件。
事務所名:中川龍也法律事務所
事務所URL:http://nakagawa-lawyer.com/