前日に話していたように、テスト最終日の後半セッションにステアリングを握ったアルファタウリ・ホンダの角田裕毅は、まずレースシミュレーションを行った。
C3タイヤでスタートした角田は1回目のピットストップでC2タイヤに履き替えると、その後もう一度ピットインしてC2タイヤに交換して、2週間後に行われる開幕戦バーレーンGPのレース周回数と同様の57周を一度もスピンすることなく、走り切った。
その後しばらくガレージにとどまり、残り1時間半となったところで、C4タイヤでコースイン。2セット目で2番手となる1分30秒036を出すと、3セット目のC4タイヤでその時点でトップタイムとなる1分29秒777をマークした。
その後、トップタイムの座はマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)に奪われたが、勝負はまだ終わっていなかった。テストはその後、残り45分間、角田とフェルスタッペンの一騎打ちとなる。C5タイヤに履き替えた角田がC3タイヤのフェルスタッペンを上回れば、フェルスタッペンはC4タイヤに履き替えて、再び角田を逆転。
このとき、約30名しかいないメディアセンターは大騒ぎ。日本人ジャーナリストがひとりしかいないため、海外のジャーナリストから角田に関する質問攻めに遭ってしまった。なかにはヨーロッパからバーレーンにいる筆者のスマホを鳴らすものまで。まあ、うれしい悲鳴ということで、対応はしておいた。
最終的にフェルスタッペンのタイムを上回ることはできなかったが、1分29秒053と堂々の2番手で初めてのF1合同テストを締めくくった。トップのフェルスタッペンとの差はわずかに0.093秒。もちろんタイヤも違うし、燃料搭載量もわからないので、単純な比較はできないが、期待を上回る角田の走りにメディアセンターは大いに盛り上がっていた。
そこで多くのメディアがアルファタウリの広報に囲み取材を申し込むも、広報からは「イギリスへ帰国する便の関係でセッション後の取材はすべてキャンセルした」という返事。
しかし、ひと言だけでも聞きたかった筆者は、テスト2日目の入り待ちに続いて、この日は出待ちを試みた。すると約1時間後に荷物を手にした角田選手がやってきた。「飛行機の時間が迫っていると聞いているのですが、ひと言いいですか?」と尋ねると、「はい、いいです」と神対応したのである。
以下がそのときの一問一答だ。
──────────────────────
──2番手で初めてのテストを締めくくりました。率直な感想を聞かせてください。
角田:もちろんタイムも良かったんですけど、今日はこのテストで初めて1回も問題なく走ることができ、そういう準備をしてくれたチームとホンダさんには感謝しています。
──今日はレースシミュレーションも行いました。
角田:レースシミュレーションも予定通りでした。
──ミディアム(C3)でスタートしたあと、ハード(C2)2セットでしたよね?
角田:はい。
──セッションの終盤1時間は手に汗握るタイムアタック合戦でしたね。
角田:最初の3セットはC4で、その後の2回はC5です。
──2番手のタイムに関しては、何%くらい満足していますか。
角田:それより、今日はレースと予選のシミュレーションができたので、テストとしては何%という数字ではなく、十分に満足しています。
──いいテストでしたか。
角田:開幕戦に向けて、いい準備ができました。
──────────────────────
いかに海外のメディアが注目していたかは、日本語でやりとりしていた角田選手と筆者のやりとりを写真を撮って、あとで送ってくれたほど。
こちらも、開幕戦に向けて、いい取材でテストを締めくくれた。3日間、毎日取材に応じてくれた角田選手と撮影してくれたドイツ人のクリスチャンに感謝したい。