2021年03月15日 12:51 弁護士ドットコム
様々な文化や習慣の壁をこえ、熱烈に愛し合って結婚した国際結婚カップル。しかし、さらに情熱を注がなくてはいけないのは離婚する時なのかもしれません。
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弁護士ドットコムにも、外国人のパートナーとの離婚に関する相談が寄せられています。
ある男性は、日本で外国人の妻と結婚生活を送ってきましたが、関係が悪化したため、離婚することに。妻も離婚に同意しています。「この場合、どちらの国の法律が適用されるのか、子どもの親権はどうなるのかなど、何も分からず困っています」と綴っています。
国際離婚の手続きはどうやって進めればいいのでしょうか。また、特にトラブルになりやすいのはどんなことなのでしょうか。高木由美子弁護士の解説をお届けします。
ーー国際結婚カップルが離婚することになった場合、離婚にあたってはどちらの国の法律が適用されるのでしょうか。
夫婦が日本で暮らし、夫婦の一方が日本国籍の場合、離婚にあたっては日本法が適用されます。
一方、夫婦が妻の出身国で暮らし、日本で離婚裁判をおこなう場合は、夫婦に最も密接な関係がある地(国)の法律が適用されます。
たとえば、妻の出身国で長く結婚生活を送っている場合などは、妻の出身国の法律が適用される可能性があります。また、外国暮らしの日本人夫婦は、夫婦の共通本国法、つまり日本法が適用されます。
国際離婚は、離婚の際にどこの国の法律が適用されるかの問題のほか、どこの国で離婚裁判を起こせるかという問題(国際裁判管轄)もあります。
たとえば、日本人と米国人の夫婦が米国で婚姻生活を送っていたが、日本人の方が日本に戻ってきた場合、日本で確実に離婚裁判をおこなえるわけではありません。
裁判所の判例では、原則として国際裁判管轄が認められるのは、被告(相手方)の住所地(国)とされます。たとえば被告配偶者が米国に住んでいて原告が日本に住んでいる場合は、原則、米国で離婚裁判をおこなうことになります。
ただ、被告配偶者からのDVや遺棄、行方不明などの事情がある場合のみ、原告の住所地である日本で裁判ができるとされています。
ーー国際離婚をするうえで、ほかに注意すべきことはありますか。
国際離婚で特に熾烈な争いとなるのが、子どもをめぐる問題です。最も問題となるのは、一方の親が、子どもを自分の出身国に連れ去ることです。「ハーグ条約」という国際的な取り決めでは、原則的に裁判所は、連れ去りをした親に対して、元々住んでいた国に戻すよう命令を下すことが決まっています。
外国では、離婚後も父母が子の共同親権を持ち、同等に子と関わります。日本は離婚後、親権者でない親が子に関わるのは、月1回程度の面会交流だけということが多く、外国人親に受け入れられず、解決が長引く傾向があります。
離婚後も両方の親が子に関わることは、子が両方の親からの愛を感じ、親の離婚によって傷ついた精神を安定させられると言われています。無理強いは良くないですが、子どもが親との交流を、少なくとも嫌がっていなければ、親権者となった親はできるかぎり、子どもと親権者でない親とが交流できるよう、理解・努力する必要があると思います。
親としては、別れた配偶者とは連絡も取りたくないかもしれませんが、まずは子どものことを考えて、「両方の親が同じくらい愛している」、「いつも会いたいと思っている」と実感させることが理想です。それがひいては、事案全体の早期解決につながると思います。
(弁護士ドットコムライフ)
【取材協力弁護士】
高木 由美子(たかぎ・ゆみこ)弁護士
第一東京弁護士会所属。米国・カリフォルニア州弁護士
事務所名:さつき法律事務所
事務所URL:http://www.satsukilaw.com/