2021年03月15日 12:41 弁護士ドットコム
もとは他人だった2人が一つ屋根の下で暮らし、長い時間を一緒に過ごすのが結婚生活。価値観や生活習慣が違うのは仕方がないことですが、家事の分担や家計の管理方法で意見が食い違い、夫婦喧嘩の火種となることもあるかもしれません。
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そんなトラブルを未然に防ぐのが、「婚前契約書」。これは、「毎月の収入から3万円は貯金にまわす」「離婚する場合、財産分与のお金は一括で支払う」など、夫婦間の約束ごとをまとめた文書です。
「婚前契約書」は海外セレブの間などでは普及しているようですが、日本ではまだマイナーな存在。弁護士ドットコムには、婚約者から「婚前契約書を作りたい」と言われたという男性が、「何それ?」と困惑した様子で相談を寄せています。
「婚約者から昨日突然、『婚前契約書を作りたい』と言われました。契約書なんて大げさな...と内心引いてしまったんですが、いったい『婚前契約書』って何なのでしょうか? 契約した内容を守らなかったら、離婚されてしまうんですか?」
そもそも婚前契約書とはどんなもので、何を書けばいいのでしょうか。また、法的効力はあるのでしょうか。田中真由美弁護士の解説をお届けします。
ーーそもそも、「婚前契約書」とはどのようなものでしょうか。
婚前契約書とは、「結婚生活を送っていく上でのルール」を文書にまとめたものです。2人で自由に作っても構いませんし、弁護士などに依頼したり、公正証書にすることもできます。
「契約書」というと、堅苦しい印象を持つ方もいるかもしれません。しかし、ルールを文書にまとめておくことで、結婚後のトラブルを防ぐことができます。
たとえば、「結婚したらボーナスの半分は貯金しようね」と双方で合意したとしても、口約束の場合、後になって「そんな約束したっけ?」と忘れられたり、はぐらかされたりして、夫婦喧嘩のもとになるかもしれません。
でも、婚前契約書があれば、結婚する時に確かに約束したと確認できますよね。婚前契約書は、円満な結婚生活を送るための手助けとなるツールなのです。
ーーでは、婚前契約書にはどのようなことを書けばいいのでしょうか。
内容としては、基本的に何を書いても問題ありません。ただし、「夫に暴力をふるわれても、妻は一切文句を言いません」など、公序良俗に反する内容は書けません。 一般的には、夫婦間でトラブルになりそうな「お金」に関することを書くケースが多いですね。
たとえば、「夫と妻は毎月の収入の○%を家計に入れます」「マイホームを購入するために、今後5年の間に夫婦で協力して、あと300万円を貯めます」など、家計の管理方法や夫婦それぞれの負担金額、目標の貯金額などを書くケースが多いようです。
そのほか、家事の分担や、子どもをもうけるかどうか、子育てや教育方針といったことを書いてもいいでしょう。
ーーなぜ、結婚前に婚前契約書を作るのでしょうか。
民法754条で、「夫婦間で交わした契約は、婚姻中いつでも夫婦の一方から取り消すことができる」とされているからです。夫婦になってから交わした約束は、いつでも取り消されてしまう可能性があり、それを避けるために、夫婦になる前に約束を交わしておこうという狙いがあります。
ただし、婚姻届の提出前に、事実婚・内縁関係が先行している場合には、内縁関係中の契約には民法754条を準用するという考え方が学説上は多数説と言われていますので(この問題について最高裁判例はまだありません)、取り消される可能性があります。もっとも、夫婦関係が実質的に破綻した後に、この取消権を行使することは認められません。
また、婚前契約書に反することをした場合、協議や調停の段階で契約書違反を理由に離婚を主張することはできますが、裁判で離婚について争った場合に、違反だけで離婚ができるかというと、難しいでしょう。
(弁護士ドットコムライフ)
【取材協力弁護士】
田中 真由美(たなか・まゆみ)弁護士
あおば法律事務所共同代表弁護士。熊本県弁護士会所属。「親しみやすい町医者のような弁護士でありたい」がモットー。熊本県弁護士会子どもの人権委員会、両性の平等に関する委員会所属。日弁連男女共同参画推進本部委員、家事法制委員会委員。得意分野は離婚、家事全般。
事務所名:あおば法律事務所
事務所URL:http://www.aoba-kumamoto.jp/