IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のDPiクラスにマツダRT24-Pで出場しているハリー・ティンクネルは、DPiプログラムを終了するというマツダの決定は、最後のシーズンを戦うチームのアプローチに影響を与えていない、と述べている。
マツダは先月、2021年限りでのトップレベルのプロトタイプレースからの撤退を発表、2023年から正式採用される予定のLMDhの時代にも参戦しないことを選択している。
そのニュースはドライバーたちの不意を突いたものの、ここ数レースにおける成功によりチームには充分な勢いがある、とティンクネルは語っている。
「明らかに、今年のチャンピオンシップを獲ることに焦点があてられているし、その意味では何も変わっていないよ」とティンクネル。
「もちろん、そのためには高い安定性が必要だ。おそらくこれまで以上に安定性を発揮して、フィールドの最前線でポイントを獲得し続ける必要がある」
「(ベースシャシーを供給しチーム運営を担う)マルチマチック陣営として考えると、物事は急速にLMDhに向かって進んでいる。それは文書化もされている。メカニックやエンジニアたちが、他の仕事を探す心配はない。彼らは(マルチマチックにおいて)今後非常に忙しくなるだろう」
「マツダはグラスルーツやMX-5のレースにおける計画を進めている」
「僕らのロスター(名簿)の中には、セブリングで見られるようなポジティブな考え方以外の何かを持つ者がいるとは思わないし、僕らが望んでいない発表がされていなかったとしても、その姿勢は続いていたはずだ」
ティンクネルは、オリバー・ジャービス、ジョナサン・ボマリトとともに1月に行なわれた開幕戦デイトナ24時間レースにおいて、3位フィニッシュを果たしている。また、今週末のセブリング12時間レースにおいて、55号車マツダRT24-Pは前年ウイナーとして登場することになる。
「僕にとって、IMSAでのここ2レース(2020年最終戦のセブリングと2021年開幕戦のデイトナ)は非常に力強いものだった」とティンクネル。
「デイトナに入る時点で、僕らは強力な結果を出すことを明白に期待していた。チームは過去2~3シーズン、上向きの軌道に乗っている。2020年にも、程度の差はあるものの1台のマシンはデイトナのゴールに近づいていた。そして今年、クルマの信頼性が向上したことを(3位入賞によって)示せたと思う」
「セブリングは、世界で最も難しい耐久レースのひとつだ。たった12時間ではあるけれど、他のほとんどのトラックにおける24時間に相当するレースだ」
「昨年のセブリングでの優勝とマツダのW表彰台は、非常に力強いものだった。チームには大きな勢いと自信があるし、僕らは再び強力な結果を残すことを期待しているよ」
「僕がこれまで目にした最高のチームワークは、2021年のデイトナでのものだったと自信を持って言える。みんながきっちりと準備をして臨み、そして最高の仕事をしたんだ」
「それは、セブリングに続いていく。同じことをセブリングでも再現したいと思っている」
■撤退発表に「誰もが油断していたと思う」とボマリト
ジャービスは、チームにはこれ以上のモチベーションは必要ない、と付け加える。
「マツダが今シーズン限りで活動を止めるということで、クルマとチームに対して完璧なラストシーズンをもたらすことができれば素晴らしいね」とジャービスは言う。
「それは、大きなレースに勝つことだ。そして、セブリングは間違いなくそのひとつだ」
「これ以上のモチベーションは必要ないが、僕らは静かなる自信を持ち、可能な限りやる気に満ちた状態でそこへ向かう。プログラムを最高の状態で終えられるよう、僕らはできるすべてのことをやっていくつもりだ」
マツダは今シーズン、DPi参戦マシンを2台から1台へと縮小している。これによりレギュラーシートを失い、ミシュラン・エンデュランス・カップにおける追加ドライバーとしての役割へとシフトしたボマリトは、DPiプログラムを終了するというマツダの決定が関係者全員にとって驚きであったことを認めた。
「正直にいえば、誰もが油断をしていたと思う」とボマリトは言う。
「僕らは皆、プログラムが継続し、LMDh規定の将来へと進んでいくことを期待していた」
「現時点では、それ(LMDh)はマツダの選択肢に含まれていない」
「彼らはモータースポーツ・カンパニーであり、常に一定程度のモータースポーツには携わってきた。これは彼らの会社、そして歴史にとって特別なことだ」
「しかしながら、関係者全員がここから先に進むことができないという不意を突かれたと思う」
ボマリトとジャービスは現在マツダと契約しているが、ティンクネルはマルチマチックと契約を結んでいる。したがってティンクネルは、2023年に少なくともひとつのLMDhプログラムに関与するものと理解されている。
「もちろん、誰もが聞きたかったニュースではなかった」とティンクネル。
「マツダがプログラムを続けてくれていれば、もっと簡単だっただろう。だが、それはすでに下された決定だ」
「エンジニアおよびチーム部門の全員が、(通常最終戦として行なわれてきた)プチ・ル・マンの後、あるいは年末のようにすべてのメカニックに『じゃあね』と言えることに、比較的安心していた」
「マルチマチックは、さまざまなプログラムが進行している、大規模な会社だ。大きなパニックがなかったことは心強い。短期的なものは確かに少し不透明だ。だけど、デイトナの後にまずまずの休息をとった後、スタッフみんながチームに戻ってセブリングへ向けたいい準備ができていると思う」
「この冬の間に作り出された良い雰囲気が、また転がり始める。ファンタスティックだよ」