メディアセンターを出て、最も近くにあるターン10のアウト側で新車の走行を見ていたら、レッドブルのチームウェアを着たスタッフがふたり、歩いてきた。聞けば、ひとりはマックス・フェルスタッペンのパフォーマンスエンジニア(セットアップの方向性をレースエンジニアに提案する人)で、もうひとりは普段はファクトリーで勤務している制御系のエンジニアだった。
テストは1チームにつき1日1台しか走行できないため、ドライバーが変われば、担当しているエンジニアも変わる。2日目にレッドブル・ホンダのステアリングを握ったのはセルジオ・ペレスだったから、チームメートのフェルスタッペンの担当エンジニアはお休みなのだが、ただ休むのではなく、こうしてコースサイドに出て、いつもと違う角度からF1を観察するあたりがいかにもトップチームのレッドブルらしい。
何年か前のテストでも、コースサイドでライバルチームのマシンをデジカメに収めていたエンジニアがいたが、それもレッドブルだった。
バーレーンは初日の夕方から強くなった風が夜には砂嵐となり、国中が砂煙に覆われた。そのため、2日目の路面コンディションはセッションが開始してしばらくは安定していなかった。しかも、風向きも初日とは正反対で多くのドライバーがブレーキングやコーナーの立ち上がりでマシンをコントロールするのに苦しんでいた。
レッドブルのエンジニアが視察に来ていたターン10は、この日はブレーキングで追い風となり、立ち上がりは横風を受ける難所となっていた。そのターン10をペレスが駆るRB16Bは安定して周回していた。
にもかかわらず、この日、ペレスがマークした自己ベストは全体の8番手となる1分31秒682に終わった。理由はこの日のペレスのメインのプログラムがレースシミュレーションだったからだ。しかも、この日ペレスはC2タイヤしか履いておらず、上位7人はいずれもペレスより軟らかいC3~C5タイヤだった。
チームを移籍して、マシンやエンジニアとのコミュニケーションに慣れるのに苦労しているドライバーが多いなか、いきなりレースシミュレーションを敢行し、遂行したペレスとレッドブル・ホンダ。
「非常にトリッキーなコンディションでスタートしたにもかかわらず、たくさんの作業ができたし、まだまだマシンには新しく開発されたパーツが投入され、進化する。このチームと一緒に仕事ができるのは本当に最高で、すでに可能性を感じている」
テスト2日目を終了した段階で、最も順調にプログラムを消化しているチームと言っても過言ではない。