トップへ

転勤は本当に必要ですか? コロナで単身赴任が解除になった男性「必要ならば出張したらいい」

2021年03月14日 08:51  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、テレワークの導入、オンライン商談や面談も浸透しつつあります。そんな中、転勤は本当に必要なのか、疑問に感じる人も出ています。


【関連記事:先輩の母親と「ママ活」したら、地獄が待っていた…もらった「250万円」は返すべき?】



弁護士ドットコムニュースのLINEには、コロナ禍で一時的に単身赴任が解除された会社員の男性(38)からメッセージがありました。






「コロナ禍で嬉しかったこと。
近いようで遠い金沢に単身赴任中でした。
愛知には妻と0才の子供を残して毎週末8割自腹で帰る生活でしたが、
コロナ禍で3月から在宅勤務を命ぜられ、愛知からのリモートワークとなりました。
効率が良くなって業績も上がり、家族も円満です!」




●「単身赴任は不要だと思う」

これまで男性は、愛知県の自宅をひとり離れ、単身赴任先の金沢市内で法人向けルート営業をしていました。電話営業が中心で、客先を訪問するのは、まれだったとのこと。コロナ禍で単身赴任が解除されてからは、愛知県の自宅で在宅勤務となりました。



Zoomや電話などを使った商談でも業務に支障がないことから、「単身赴任は不要」と考えるようになりました。



「今は社内会議も商談もZoomでしています。必要ならば出張したらいいだけなので、会社としても安上がりになると思います」



これまで男性は小さな子どもがいることもあり、毎週末、愛知県に帰っていました。ですが、帰省補助は月に1回分しか出ないため、自腹で交通費約4万2千円を毎月負担していたそうです。



ただ、会社として単身赴任制度の見直しにはいたっておらず、男性は「いつ金沢市に戻ることになるのか」と気がかりな日々をおくっています。



●企業は転勤させ放題なのか?

そもそも小さな子どもがいるなど単身赴任となる可能性がある社員に対し、会社は自由に転勤命令を出していいものなのでしょうか。



大木怜於奈弁護士は「会社は、配転命令を無制約かつ自由にできるわけではないものの、小さい子どもがいる従業員に対して場所移動を伴う配転命令を出すことが直ちに違法無効となるものではありません」と解説します。



転勤(配転命令権)に関する主要な判例とされているのが、「東亜ペイント事件」(最高裁第二小法廷判決、昭和61年7月14日)です。この裁判では、以下のような判断枠組みが示されました。




<(1)配転命令に業務上の必要性が存在しない場合、または、(2)他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき、もしくは、(3)労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなど、特段の事情がある場合でなければ、配転命令は権利濫用となるものではない>




大木弁護士は「病気の家族を介護・看護できなくなる事案、労働者の健康状態から無理が大きい事案などでは、(3)が認定されやすい傾向にある」と話します。



また、子ども育児介護休業法26条も、転勤により就業しながら子どもの養育や家族の介護を行うことが困難となるときは、「その従業員の**子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない」と定めています。



ただ、この条文に違反したからといって、「直ちに配転命令が無効とされたり、損害賠償を請求できたりするものではない」(大木弁護士)そうです。



原則として、育児や介護を理由に単身赴任免除をする義務は会社側は負っていないのです。



●転勤見直した会社も

しかし、コロナ禍を機に転勤や単身赴任制度を見直した企業もあります。



カルビーは2020年7月から、オフィス勤務約800人を対象に、テレワークを基本とした働き方を無期限で延長。また、テレワークで業務に支障がないと所属部門が認めた場合は、単身赴任を解除すると発表しました。



また、富士通も2020年7月、テレワークと出張で対応可能な社員については、随時単身赴任を解消していき「ライフの充実も犠牲にしない世界を目指す」としています。



JTBは2020年10月、転居が必要だった異動が発令されても、生活の拠点として会社に登録している「居住登録地」でテレワークをベースに働く「ふるさとワーク制度」を導入。これにより、単身赴任とならずに家族と過ごすことが可能になるといいます。



コロナ禍でテレワークによる働き方が始まったことで、住む場所にも少しずつ変化が現れているようです。



2020年の東京からの転出者数は、40万1805人と全国で唯一増加しました。この数字は前年比で4.7%の増加でしたが、アフターコロナで新しい働き方が定着すれば、今後さらに転出者は増えていくかもしれません。



【体験談募集】皆さんの会社では、転勤や単身赴任制度に何か変化はありましたか。以下からLINE友だち登録をして、編集部にメッセージをお寄せください。






【取材協力弁護士】
大木 怜於奈(おおき・れおな)弁護士
弁護士登録前の会社員としての勤務経験を活かし、ビジネス実態に即したリーガルサポートの提供を心掛け、企業法務においては、多様な経営者のパートナーとして、様々なサービスの拡充に努めております。
注力分野としては、労働問題に重点的に取り組み、「企業の人事労務クオリティ向上による従業員に対する真の福利厚生の実現」を目指しています。

事務所名:レオユナイテッド銀座法律事務所
事務所URL:https://leona-ohki-law.jp/