ルーキーとして初めて迎えるF1のプレシーズンテスト。7年ぶりの日本人F1ドライバーとして臨む角田裕毅にとって、テスト初日前夜はどんな気持ちで過ごしていたのだろうか。
「緊張というのはいっさいなくて、逆に緊張する要素がなかった。むしろ、初めてのクルマで、ほかのドライバーたちと一緒に走るのが楽しみで、本当にワクワクする気持ちでした」
アルファタウリのテスト初日のプログラムは、午前10時から午後2時までをピエール・ガスリーが担当し、1時間の昼休みをはさんで、午後3時から午後7時までが角田裕毅の担当となっていた。
ところが、最初のセッションが始まってすぐ、レーシングスーツに着替えた角田がパドックからピットレーンへ向かう姿を見かけた。チームメートがどんなテストをしているのか、様子を見に行ったのか。
「いやいや、そういうのではありません。チームのプロモーション用の撮影がいろいろと入っていて、サーキットのあちこちでずっと撮影していました。だから、午前中のテストの様子はまったく知りません」
最初のセッションが終了し、いよいよ角田がステアリングを握る。しかし、午後3時時になって、ピットレーン出口に青信号が灯されても、なかなか角田がコースインすることはなかった。ガスリー用のコクピットから角田用のコクピットに変更するのに時間がかかったのか。
「ペダルの位置とかは、もちろん変えたんですけど、それによって走行時間を失ったのかどうかはわかりません。結構、ほかのチームもすぐには出ていかなかったし。最初のほうはプラン通りにテストは進んでいましたよ」
だが夕方になって、角田が走行する姿はまったくなかった。
「後半に入って、燃料系のトラブルが出てしまって。本当は最後のほうで、みんなと同じようにミディアムタイヤ(C3)を履きたかったのですが、結局ハードタイヤ(C2)しか履くことができませんでした」
「本当だったら、ミディアムタイヤでアタックを仕掛けたかったのですが、トラブルが完全に直っていないので、そのまま走るのは危険というか、意味がないということで、早めに(走行を)やめて明日に備えるようにしました」
テスト2日目の3月13日(土)は、この日とは逆に午前10時から午後2時までが角田が走る予定になっている。だから、初日の結果(ガスリーは1分32秒231、角田は1分32秒727)は気にしていない。
「簡単には比較できないですからね。今日は午前と午後でコンディションが大きく違って、午後は砂埃がひどかった。ただ、それで気温が午後のほうが低くて、その点では五分五分だったけど、まだよくわからない。まあ、それなりのタイムを出せたのは良かったけれど、まだまだ詰められるのは自分でもわかっています」
そんなことより、テスト初日の角田は、最新のF1マシンを走らせることができたことに満足していた。
「やっぱり今年のクルマで、さらに今年乗るドライバーたちと一緒に走ることができたので、とても新鮮だったし、すごく感動しました」
そう語る角田の瞳は、輝いていた。