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「死んどいた方がいいんちゃう?」 三菱電機の新入社員自殺、労災認定…パワハラ示すメモ残す

2021年03月11日 18:32  弁護士ドットコム

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三菱電機の新入社員だった男性が配属先でハラスメントを受けて自殺したとされる問題で、尼崎労働基準監督署が労災認定したことがわかった。遺族の代理人弁護士が3月11日、都内で開いた記者会見で明らかにした。労災認定は2月26日付。


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この問題では、亡くなった男性のメモが残されていた。「次同じ質問して答えられんかったら殺すからな」「お前が飛び降りるのにちょうどいい窓があるで」など、担当の教育指導員から言葉によるハラスメントを受けていたことを示唆する内容だった。



遺族の代理人である嶋崎量弁護士は会見で、「労災認定について、本人のメモがポイントになったのではないか。会社には、真摯な謝罪と再発防止策を引き続き求めていく」と話した。



●メモはハラスメントを示唆する「遺書」

男性は2019年4月、三菱電機に入社した。研修を受けたのち、同年7月、兵庫県尼崎市にある生産技術センターへ配属された。



男性が残したメモによると、担当の教育指導員からのハラスメントは配属直後からあったことが示唆されている。7月上旬には、研修内容についての質問に答えられなかった男性に対して、「次同じ質問して答えられんかったら殺すからな」と言われたことが書かれていた。



このほか、教育指導員は男性に対して、「お前が飛び降りるのにちょうどいい窓あるで、死んどいた方がいいんちゃう?」「(飛び降りたら)ドロドロ●●(男性の名字)ができるな」「自殺しろ」などと言ったとする内容が書かれていた。



男性は同年8月23日、公園で自殺しているのが見つかった。今回のメモに書かれた作成日は8月22日であり、その意味合いとしては「遺書といっていい」(嶋崎弁護士)ものだという。





●「刑事捜査が先行」「スピーディな労災認定」異例の進行

この問題をめぐっては、教育指導員が自殺教唆の疑いで、神戸地検に書類送検されるなど、刑事手続きが先行していたが、嶋崎弁護士によると、教育指導員は2020年3月、嫌疑不十分で不起訴処分になったという。



「刑事手続きが労災申請などより先行して進んだというケースは、自分の知る限りではない」(嶋崎弁護士)という異例のものだった。



労災申請した2020年9月11日から、2021年2月26日付の認定まで、半年もかからなかった点も特徴的だという。嶋崎弁護士は「労働基準監督署が頑張ってくれたのではないか」と話す。



「被災者が亡くなるケースでは、一般的に証拠が乏しく、事実がまったくわからない場合も少なくない。今回のケースも、物理的な暴力などは確認されておらず、メモ以外の証拠はほぼない状況だった。



労災認定の理由については、情報開示をしている段階だが、やはりメモの存在が大きかったのではないかと思う」



今後については、あらためて損害賠償請求の検討をおこなうとともに、会社に対して、真摯な謝罪と再発防止策などを求めていくという。



●遺族「悲しいできごとが二度と起こらないようにしてほしい」

遺族は、代理人を通じて以下のようにコメントした。



「一生懸命に育てた子どもがこのようなことになり、未だ受け入れることができません。当たり前の日常を奪われ、いまだに暗い闇の中にいます。会社や加害者から、今どれだけ謝罪されても、息子は帰ってきません。



三菱電機には、息子の死ときちんと向き合っていただき、どうか私たちのような悲しいできごとが二度と起こらないようにしてほしいと切に望みます」



●三菱電機のコメント

三菱電機は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、以下の回答をした。




当社は本件を重く受け止めており、今後、真摯に対応していく所存です。あらためて亡くなられた方のご冥福を深くお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆さまへ心からお詫びとお悔やみを申し上げます。



また、関係者の方々をはじめ社会の皆さまに多大なご心配とご迷惑をお掛けしましたことをお詫び申し上げます。今般の認定を踏まえ、社長以下関係役員に追加処分を行うことといたします。



今回のような問題を二度と起こしてはならないという強い決意のもと、労務問題の再発防止を経営の最優先課題とし、全従業員が心身の健康を維持し、いきいきと働ける職場環境の実現に全力で取り組んでまいります。