2021年F1プレシーズンテストが近づくなか、各チームのニューマシンが次々に発表され、シェイクダウンが行われている。F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが、レッドブル・レーシングの2021年型マシン『RB16B』の分析を行った(全2回後編)。
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マシン後部に目を移すと、わずかとはいえサイドポンツーンがさらにコンパクトになっているように見える。去年型がすでに十分に小型だっただけに、これは驚異的なことだ。
サイドポンツーン下部のデフレクターは、去年の4枚から5枚に増やされた。フロントタイヤが巻き起こした乱流が、フロア下に侵入するのを防ぐのが目的だ。
一方で今季の技術規約では、フロア後端の面積が削減された(黄色矢印参照)。フロアとディフューザーの発生するダウンフォースは全体の60%と言われており、それだけにこの変更が及ぼす影響は甚大だ。
RB16Bでは、その縮小されたフロア部分に、湾曲した小さなパーツが付いているのが見える(青矢印参照)。リヤタイヤが起こす乱流を打ち消す役割を、去年型ではより広い面積のフロアと、そこに刻まれた複数枚の切り欠きが果たしていた。この小さなパーツが、果たしてその役割をどこまで代替できるだろう。
今回の技術規約変更がより不利に働くのは、ホイールベースが短い上に、強いレーキ角が特徴のレッドブルマシンなのか、ホイールベースの長いメルセデスやアストンマーティンなのか。
レッドブルマシンについて言えば、リヤが大きく持ち上がっていると、ディフューザーまで高速気流をしっかり流すのは決して簡単なことではない。今年のようにフロアに大きな制限を受けてしまうと尚更だ。
■トークン使用箇所は未公表も、リヤサスペンションに変化
アルファタウリやアルファロメオとは対照的に、レッドブルはトークンを使用して具体的にどこに改良を加えたか明らかにしていない。
しかし発表された画像を分析すると、リヤサスペンションが去年型とは違っていることがわかる。最も目立つ違いは、RB16ではロワーアームの間に入っていたプルロッドが、前に出ていることだ(緑矢印参照)。
下の写真の比較で明らかなように、これはプルロッドが前進したと言うより、ロワーアーム自体が後退したという表現がより正確であろう(青く塗られた部分)。これはアッパーアームをより後ろに取り付けたことに伴う処理である。
メルセデスが去年のW11で同様のレイアウトを採用したのは空力効率の向上と、タイヤへの負荷を軽減させるためだった(メルセデスのリヤサスの方がコンパクトに見えるのは、プルロッドの大部分がボディ内に格納されているため)。
RB16Bはさらに、アッパーアームの形状やアップライト側の取り付け位置も、RB16より僅かながら変わっている(一番上の写真:オレンジ色矢印参照)。どうやらレッドブルはリヤエンドの変更に、トークンを使用したと考えて良さそうだ。
マシンリヤでは、RB16でエキゾーストの上部にあったターボの排出パイプが、RB16Bではなくなっているように見える(一番上の写真:青矢印参照)。ただしリヤのクラッシュ構造に金色の断熱材が巻かれていることから、エキゾースト下部に位置を移しただけかもしれない。
ちなみに今季はほぼ全てのエンジンメーカーが、ターボ排圧の有効利用が進んだことから、ウェイストゲートを撤廃しているようだ。ウェイストゲートがなくなれば、排出パイプの必要もなくなる。
■ホンダ製パワーユニットはさらにパワフルに
今年末でのF1活動終了を表明しているホンダは、レッドブルと共にタイトルを獲得することを目標に掲げている。そのためにパワーユニット(PU/エンジン)開発陣は、2022年に投入予定だった技術を、1年前倒しで盛り込むことを決めた。RA621Hはエンジン本体、ターボ、そしてMGU-Hのいずれにも新技術が盛り込まれた。さくらR&Sでのベンチテストでは、期待した数値に達しているとのことだ。
クリスチャン・ホーナー代表によれば、RB16Bは60%のパーツがRB16から引き継がれたものだという。去年型の高い戦闘力を維持し、不安定なリヤ挙動などの欠点の改善に集中したマシンといえるだろう。例年、開幕序盤では苦戦することが多いレッドブルだが、今季はスタートダッシュを期待できそうだ。