F1は、2021年シーズンよりオフィシャル・セーフティカーとオフィシャル・メディカルカーにアストンマーティンの車両を使用する。セーフティカーはスポーツカー『Vantage(ヴァンテージ)』をベースにした車両、メディカルカーにはアストンマーティン初のSUV『DBX』が選ばれた。
アストンマーティンは今年、61年ぶりにF1に復帰する。2020年までレーシングポイントととしてF1に参戦してきた同チームは、ランス・ストロールと4度のF1チャンピオンであるセバスチャン・ベッテルというふたりを擁して戦っていく。2021年型の新マシン『AMR21』も発表されており、すでにストロールとベッテルがシェイクダウンも実施している。
今回のセーフティカー供給に伴い、アストンマーティンはヴァンテージのパフォーマンスを向上させ、ラップタイムの短縮に取り組んだ。開発を担当したのはアストンマーティン本社のエンジニアリングチームで、シルバーストンにある施設でサーキット走行など様々なテストを繰り返し、走行距離は15,000kmにも及んだ。
カラーリングはセーフティカー、メディカルカーともに伝統のグリーンで、一部にライム・グリーンのラインが施されている。
ヴァンテージに搭載されているエンジンは4.0リッターのツインターボV8エンジンで、出力は535PSに到達。最大トルクは685Nmと変化はないが、トランスミッションの改良によりアップシフトおよびダウンシフト時の制度やコントロール性能が向上したという。0~60mph(約時速96km)の加速はわずか3.5秒だ。
またベーングリルと新しいフロント・スプリッターを組み合わせることにより、時速200kmでの走行時に155.6kgのダウンフォースが発生する。これは量産型ヴァンテージが同じ速度で走行した時に発生するダウンフォースを60kg以上上回っている。
サスペンション、ステアリング、ダンパーなども改良され、さらに冷却性能を高めるためにカーボンセラミック・ブレーキを搭載し、フロントグリルには外側から見えない位置にブレーキダクトが追加された。
車内のシートはFIAが認証するレーシングシートで、F1マシンと同じ6点式ハーネスを装備。ダッシュボードには画面がふたつ配置され、一方の画面ではライブ映像を見ることができ、もう一方は表示する情報をカスタマイズすることが可能だ。
一方メディカルカーは、ヴァンテージにも搭載されている4.0リッターのツインターボV8エンジンを搭載し、最高出力は550PS、最大トルクは700Nm。4.5秒で時速100kmに到達し、最高速度は時速291kmだ。
車内には大型の医療バッグやAED、消火器(2台)など様々な装備が積まれているが、基本的に作りは市販車両と同様だ。ただしリヤシートの中央席を除いて4人乗りとなっており、それぞれの席に6ポイントのセーフティハーネスを備えている。運転するのはアラン・ヴァン・デル・メルヴェで、F1のメディカル・レスポンス・コーディネーターで医師のイアン・ロバーツ、地元の医師も乗り込む。
アストンマーティンのセーフティカーとメディカルカーは、3月12日(金)からバーレーンで行われるプレシーズンテストより使用される予定だ。
なお、これまで通りメルセデスもセーフティカーとメディカルカーの供給を続ける。セーフティカーはメルセデスAMG GT Rで、メディカルカーはメルセデスC 63 S エステートだ。
メルセデスAMG GT Rは4.0リッターのツインターボV8エンジンを搭載し、0~62mph(約時速99km)までの加速は3.6秒という性能を持つ。またメルセデスC 63 S エステートはDBXと同様に、医療設備を整えた車両となっている。カラーリングは昨年までシルバーだったが、2021年からはレッドに一新される。