2021年03月05日 10:11 弁護士ドットコム
「授業中にやるなって何度言ったらわかるんだよ!」と激怒しながら、携帯型ゲーム機を机に叩きつけて破壊する熱血教師。都内の私立高校に通っていたA君は、教師の行為はやりすぎなのではないかと疑問を抱いています。
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A君の通っていた学校は比較的自由な校風で、ゲーム機の持ち込みは許可されていたものの、授業中の使用は厳禁。しかし、ある生徒が再三の注意を聞かず、ゲームをし続けていたため、教師はゲーム機を繰り返し机の上に叩きつけて激怒しました。
その結果、ゲーム機は無残にも基盤が見えて使えない状態になってしまいました。注意を聞かなかった生徒もいけませんが、A君は「何も破壊することはなかったのでは?」と話しています。
ゲーム機を破壊された生徒は、教師に弁償を求めることはできるのでしょうか。また、犯罪の可能性はないのでしょうか。宮島繁成弁護士に聞きました。
——ゲーム機を壊した教師に、弁償してもらえますか。
生徒指導のつもりが行きすぎてしまったというケースでしょうが、壊すのは一線を越えています。法的には、他人の所有物を故意に破壊しているので、熱血教師は、ゲーム機の持ち主に損害賠償する責任があります。損害額は少なくともゲーム機の時価額に相当する額です。
教師個人のほか、学校も使用者として責任を負います。公立学校の場合は、国家賠償法1条により、教師ではなく学校(公共団体)が賠償します。
——刑事責任についてはどうでしょうか。
器物損壊罪が成立します(刑法261条)。こちらは学校ではなく教師だけが対象となります。
——再三の注意を聞かない生徒に対する指導だったようです。
生徒の私物を壊すことがやむをえない場合は法的責任を負わないこともありますし、この生徒の行動に原因がある場合は損害が減額されることもあります。
ただ、取り上げて一時的に預かれば済むケースですので、破壊を正当化したり、損害を減額したりするのはかなり難しいでしょう。壊すことが目的ではなく、教育の目的だったとしても同じです。
(弁護士ドットコムライフ)
【取材協力弁護士】
宮島 繁成(みやじま・しげなり)弁護士
日弁連子どもの権利委員会、いじめ問題対策プロジェクトチーム、教育法制改正問題対策ワーキンググループ。いじめや体罰など学校問題のほか、法教育、スポーツ問題などに取り組んでいる。中学校及び高校の教員免許を有している。
事務所名:ひまわり総合法律事務所
事務所URL:http://www.himawarilaw.com