2021年03月04日 18:51 弁護士ドットコム
「大手食品会社で働いていたカンボジア人の技能実習生たちが、本人の意に反して強制帰国させられたのは、取引先の企業にも社会的責任がある」。カンボジア人の技能実習生たちを支援しているNPOと労働組合がこんな主張をしている。
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労働組合「総合サポートユニオン」によると、2016年春、大手食品製造会社(受け入れ企業)の工場で働いていたカンボジア人技能実習生が相次いで、本人の意に反して「強制帰国」させられるという事件が起きた。
あるカンボジア人女性は、働き始めて半年ほど経ったころ、夜勤明けの早朝の寮で、突然、監理団体のスタッフらにパスポートを取り上げられた。拒否したが、車に押し込まれて、空港まで連行されて、そのまま帰国させられたという。
現在、元技能実習生7人が労働組合に加入して、オンラインで監理団体や受け入れ企業と団体交渉をしている。監理団体はいったん、本人の意に反して帰国させたことを認めたが、その後、否定に転じた。また、受け入れ企業も「関与していない」と主張している。
受け入れ企業が、コーヒーチェーン「スターバックス」のサプライヤー(供給・下請け)だったことから、総合サポートユニオンは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」にもとづいて、社会的責任を果たすようもとめている。
(参考)ビジネスと人権に関する指導原則(国際連合広報センター)
https://www.unic.or.jp/texts_audiovisual/resolutions_reports/hr_council/ga_regular_session/3404/
しかし、無視されている状況のため、総合サポートユニオンとNPO法人POSSEは3月9日、スターバックスジャパン本社に直接申し入れをおこなうとしている。また、3月14日にも、店舗前でプラカードを掲げて、写真を撮ってSNS投稿するなどの抗議を予定している。
3月4日、都内で記者会見を開いたPOSSEのメンバーは次のように話した。
「技能実習生をはじめとする外国人労働者は、わたしたち若い世代にとってすごく身近な存在です。同じ社会の一員として、当たり前にいる存在です。彼らが人権侵害にあっている事実に怒りを覚えますし、おかしいと思います。声をあげて社会に発信して変えていこうと思っています」
カンボジア人の技能実習生たちは、来日するために借金を背負ってやって来ていた。突然の帰国のために借金は返済できず、貧困に追い込まれているという。オンラインで記者会見に参加したカンボジア人女性(32)は、精神的に傷ついて、死ぬことも考えたという。
「たくさん借金が残っていたので、まだ完済できていません。村から離れて、コツコツ返済しています。いつになったら返済できるのか、わたしと家族が一緒にいられるようになるのか、夢を見ることもできません」(同上)