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どれを選ぶ? 人気の小型SUVを徹底比較! 第5回 2020年の販売台数は実質1位! トヨタ「ライズ」の魅力は?

2021年03月04日 11:31  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
小型SUVを特集するうえで見逃せないのがトヨタの「ライズ」だ。5ナンバーのボディサイズは取り回しがしやすく、価格は手ごろ。見た目は人気の「RAV4」に似たテイストで人気の出ない理由が見つからない。2020年における実質的な販売台数No.1が、このライズだった。

○5ナンバーサイズと価格でユーザーをキャッチ

先ごろ発表された2020年の自動車国内販売ランキングをみると、1位が「ヤリス」で2位が「ライズ」、3位が「カローラ」とトヨタ自動車がベストスリーを独占した。ただ、1位のヤリスはシーズン途中から登場したSUV「ヤリスクロス」やスポーツモデル「GRヤリス」を合計した数なので、単一の車種として数えると「ライズ」がトップに躍り出てくる。さらに、ライズはダイハツ工業からOEM供給を受けているクルマであり、兄弟車であるダイハツ「ロッキー」と合わせてみると、販売台数はダントツ1位となるのだ。

トヨタの小型SUV「ライズ」は、ダイハツの小型車用プラットフォームである「DNGA」(Daihatsu New Global Architecture)を採用。ボディサイズは全長3,995mm、全幅1,695mm、全高1,620mmで、ホイールベースは2,525mmとなる。トヨタの人気SUV「RAV4」に似たワイルドで全体に角ばったエクステリアにより、ボディの横に立つと意外に大きく見えるものの、実はしっかりと5ナンバーサイズをキープしている点がまずすばらしい。

グレードは169.7万円の「X」から228.22万円の「Z」(4WD)までで、今回の小型SUV乗り比べ特集の中では最も手が届きやすい価格帯となっている。「SSC(シンプル・スマート・コンパクト)をお安く提供するという“良品廉価”と、軽自動車を起点とした技術で大きなクルマをつくるという“小は大を兼ねる”の思想で製造した」というチーフエンジニアの言葉をきちんと反映したクルマになっているのだ。

試乗車は、ブラックマイカメタリックのルーフとターコイズブルーメタリックのボディカラーをまとった流行の2トーン仕様(オプション)。インテリアはブラック基調のファブリックシートで、ヒップポイントが665mmという程よい高さの前席にはレッドのパイピングが施してある。前席は左右ともシートヒーターを完備。後席は前席とのカップルディスタンス900mmを確保していて、膝周りはゆったりだ。頭上空間も、ルーフラインがきちんとボディ後端まで伸びているので余裕がある。後席の窓は四角くて広く、Cピラーにはクォーターガラスがあるので左後方の視界もいい。

メーター部はLEDデジタルスピードメーターとマルチインフォメーションの7インチTFTディスプレイを組み合わせていて、好みに合わせて「先進」「ワクワク」「シンプル」「アナログ」の4パターンから表示を選べるのが楽しい。

ステアリング右スポークには全車速追従機能付きACCのボタンを装備。ダッシュボードセンターに搭載する横長(9インチ)のディスプレイオーディオは、スマートフォンとつなげてナビゲーションを表示するタイプだ。上手に使えば最新の地図データで走行できるが、これがイヤというユーザーには販売店オプションとしてT-Connectナビ(9インチと7インチ)が用意されている。

ボディは小さいものの、ラゲッジ容量は369Lを確保。サイズは幅1,000mm、奥行き755mm、高さ865mmで、床面は上下2段に設置できるデッキボードを装備する。これを外せば、1,105mmの高さをいかして観葉植物など背の高い荷物も収納できるようになる。6:4の分割可倒シートを全て倒すとほぼフラットになるし、左右がでこぼこしていないので結構使いやすい形状だと思う。

○1.0リッター3気筒ターボ+CVTの走りは

ライズが搭載する唯一のパワートレインである1.0リッター3気筒のインタークーラー付きターボエンジンは、最高出力98PS(72kW)/6,000rpm、最大トルク140Nm/2,400~4,000rpmを発生。トランスミッションは7速シーケンシャルシフト付きのCVTで、駆動方式はFFと4WDが選べる。公称するWLTCモード燃費はFFが18.6km/L、4WDが17.4km/L。国産小型車なので、燃料は経済的なレギュラーガソリンが使用できる。

エンジン音は「プルルル」という軽自動車に似た3気筒エンジンらしいもので、気になる人には少し耳障りかもしれないが、減速時に9km/hからエンジンを停止するアイドリングストップもあるし、実用車ということでここは割り切ろう。走りは軽量なボディ(1トン切りの980キロ!)をいかしてアクセルの踏み具合に上手にリンクして加速してくれて、思ったよりも活発に走るので気持ちがいい。さらにはパワー走行モードやSレンジなどを選択できるうえ、マニュアルモードではシフトダウン時にブリッピング(エンジン回転を上げてシフトショックを減らす制御)まで入る。つまりライズのCVTは、加速時にラバーバンドが感じられるような従来のものから大きく進化しているのだ。

17インチタイヤを装着した試乗車の場合、荒れた路面や段差通過時にちょっと硬さを感じるものの、それをキビキビした走りの対価として考えれてやれば、不快というほどのレベルにはならないはず。コンパクトなサイズをいかして狭い道にもどんどん入っていけるところもいい。

運転支援面では、全車速追従機能付きのACC(停止保持機能はないので最後はブレーキを踏む必要がある)や、60km/h以上で機能するLKC(レーンキープコントロール)のほか、前後方向のペダル踏み間違い抑制機能、侵入禁止の標識認識機能、信号待ちなどでの発信遅れ防止機能など、“うっかり”に備えた機能を網羅した「スマートアシスト」を搭載している。また、駐車時のステアング操作をアシストして縦列駐車まで対応するパノラマパーキングアシストも、パッケージオプションで用意する。

5ナンバーのコンパクトさと必要十分なスペースが同居し、さらに価格が200万円前後という実用車の鏡のようなSUVを求めるユーザーにはぴたりとハマるライズ。やっぱり、よく売れているクルマには理由があるのだ。

原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)