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パーソルホールディングスが始める「新しいはたらき方」 勤務場所を「原則自由」とした理由

2021年03月02日 21:41  キャリコネニュース

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パーソルホールディングスが2020年10月から「新しいはたらき方」制度を導入している。ウィズコロナ時代の環境変化に対応し、社員一人ひとりが自律的に働く場所を選択することを前提とした環境整備などを行う。

新制度のベースとなったのは、パーソルグループが掲げる「はたらいて、笑おう。」というビジョンだ。どのような趣旨で、どのような改定となったのか。パーソルホールディングス グループ人事本部長の大場竜佳さんに話を聞いた。(キャリコネニュース編集部)

試行錯誤を通じて「新しいはたらき方」を開発する

パーソルホールディングスは、国内最大級の総合人材グループを統括する持株会社。約450人の従業員が、4万人を超えるパーソルグループの戦略・施策を立案・推進するとともに、グループ共通のバックオフィス機能を担う。

2020年3月からリモートワークを暫定的に始め、12月の段階でも約8割の社員がオフィスに出社せず業務を行っている。

「新しいはたらき方」で掲げられたのは「勤務場所は原則自由」ということ。これにあわせて、通勤手当を廃止し、営業交通費を実費支給することにした。

また、環境整備のための一時金「リモートワーク支援金」を1万5000円、「リモートワーク手当」を毎月4000円支給する。この目的について、大場さんは次のように説明する。

「新しいはたらき方」の導入には、3つの目的があります。まずは“場所の制約を受けない「新しいはたらき方」の開発”。勤務場所を原則自由とすることで、さまざまな問題が出てくるかもしれませんが、それを先取りして検証し、より良いはたらき方を創り出していくこと自体が目的になります。

私たちグループ人事本部は、人事中期計画の中で “ADVANCED HR SHOWCASE”という人事ポリシーを掲げています。人事部門の先進事例になっていくこと、つまり実験して失敗しても成功しても、それはきっと世の中の役に立つのではないか。そういう思いで、いろいろチャレンジをしようと思っています。

残り2つの目的は「オフィスコストの削減と最適化」と「withコロナ時代に対応したBCP(事業継続計画)観点での備え」だ。特に後者は、事業を途切れさせず継続するために、勤務場所をいかに分散確保していくかが重要な課題となる。

「エンゲージメントの向上」など5つの点を重視

これにあわせて、パーソルホールディングスは「新しいはたらき方」において重視したいことを5つ設定している。大場さんにそれぞれの意味を解説してもらった。

1つ目の「エンゲージメントの向上」とは、一人ひとりの社員にパーソルホールディングスで働くことへの納得感を高めてもらうことです。社員自身が「ここにいたくている」「キャリアを能動的に選んでいる」と思ってもらいたい。その一環として、勤務場所についても自律的に、自分で決めてもらうことを大事にしている、ということです。

2つ目の「相互理解を深めるインクルージョンの実現」は、組織の一体感を高めること。これまで、新たに組織に加わる社員は、オフィスでの仕事を通じて組織カルチャーや会社の雰囲気を学んできました。その機会が大幅に失われてしまった中で、特に新人や中途入社の方にはオンボーディング(新しく入社したメンバーが組織に馴染めるようサポートすること)を積極的にやっていかないと、リモート以前のコミュニケーションの品質を担保できないと考えています。

3つ目の「学習・育成機会を通じた成長支援」は、オフィスという場にあった、学んだり成長したりする機会を、いかに作るかということ。4つ目の「創造的なコラボレーションの促進」は、オフィスにあった、人が偶然出会う中で新しいものが生まれていたことを、リモート環境でも作り出せるよう努力しようということです。

5つ目の「オフィス内外の人が円滑にコミュニケーションできる場づくり」は、リモートで働く社員とオフィスで働く社員が、どちらもより快適にコラボできるような環境を整備していきたいというのがまず一点。また、これまでオフィスには社員だけでなく、ご来社という形で社外の方との接点があったわけですが、リモートでもリアルでも、社内外を問わず円滑にコミュニケーションできる場作りを重視していこうということがもう一点です。

今回の制度改定は改革の第一歩であり、今後の施策もこの5点を具現化する方策を展開していくことになる。

信頼関係を下支えする「コミュニケーション」のガイドを策定

パーソルホールディングスでは「新しいはたらき方」においても、生産性を高めるためにはコミュニケーションの質と効率の維持が重要と考えている。この趣旨から、新制度導入に合わせて「コミュニケーションのポイント」と「コミュニケーションガイド」を策定している。

ポイントにあげられているのは「ツールを活用しながら、効率的にコミュニケーションしよう」「自分の状況や気持ちを積極的に伝えよう」「お互いに配慮して、めりはりをつけてはたらこう」の3つだ。

やや細かすぎるようにも見えるが、人事本部にはコミュニケーションの問題で生産性が落ちることに対する危機感があったようだ。

例えば、コミュニケーションのルールには「誰にでも絵文字・感嘆符・いいねボタンOK」というものがあります。これは、文字だけでは冷たい印象になりやすくなることによるトラブルを避けるとともに、年齢や職位が高い相手でもカジュアルなコミュニケーションを受容しよう、という意味もこめています。

組織の生産性や人間関係、信頼関係を下支えしているのは、業務やタスク以外で生まれる雑談などのコミュニケーションではないか、という仮説をもっています。そこで、そのようなコミュニケーションも大事にしましょうということを、制度改定のタイミングであらためて伝えたということです。

また、スキマをどう作っていくかが重要と考え、ウェブ会議は「設定時間の5分前には終了」というルールとしています。物理的な移動を伴わないと、前の会議が終わるやいなや次が始まる状況が可能になりますが、休憩や細かいタスク処理をする余裕がなくなり、疲れが溜まったり生産性が落ちたりします。

それだけでなく、オフィスでは可能だった「ちょっとした相談」ができなくなることで、結果的に弱い立場の人、ジュニアのメンバーや中途で入ってきた人たちがオンボーディング(組織適応)しにくいことにもなり、そういうことを避けようということです。

働くことで「個人」が成長し、幸せを感じられる状態を目指す

「勤務場所は原則自由」となると、上司が見ていないところでサボるリスクが高まる――。そんな懸念をもつ会社も多いだろう。パーソルホールディングスは「目標管理制度」や「評価制度」の運用徹底によって、成果を担保しようとしている。

当社はもともと、管理職がメンバーの仕事を隅から隅まで逐一チェックするようなマネジメントスタイルを求めていません。その代わり、期初に上司と部下で膝詰めでしっかり目標を立て、3ヶ月に1度は中間レビューで目標修正をし、最終的に目標の達成度合いを確認し、評価会議で第三者の意見も聴きながら内容を詰めていくプロセスを回しています。

したがって年功序列ではまったくないですし、チームプレイを意識せずに働くと評価されないようになっている。成果主義をしっかりやっていく人事制度上の土壌があることが、自律的に働く場所を選択してもらえる前提になっていると思います。

ウィズコロナの「新しいはたらき方」は始まったばかりだが、今回の改定以外に検討しているものはないのだろうか。大場さんは「郊外型のサテライトオフィス」を作る検討が進んでいることを明かしてくれた。

オフィスと自宅、それ以外でも自由に働いていいですよと言われても、現実的には選択肢はそんなにありません。生産性高くセキュリティの安全性を担保して働く場所として「中間のオフィス」が必要なのではないかと考えています。

どの働き方の日はどこで働くのがいい、という選択肢を社員に提示しながら、自律的にデザインしていける状態を作っていくことが、ある意味で本当の新しい働き方なんじゃないのかな、と考えているところです。

時代に合わせて働き方が変わっていく中で、パーソルグループが掲げる「働いて、笑おう。」をどう実現していくか。グループの「実現したい世界観」には、「自分のはたらくは自分できめる/すべての“はたらく”が笑顔につながる社会」を掲げています。個人の価値観も多様化していますし、働くことを通じて個人が成長し、一人ひとりが幸せを感じられる状態を目指していきます。