人工知能(AI)を活用した自動翻訳システムを開発・運営しているロゼッタグループは3月1日、全社員に対して英語を話すことを全面禁止する「英語禁止令」を発令した。
勤務時間内に日本人社員が英語を話すこと、外国人社員が日本語を話すことを禁止する。対象には、取引先など社外とのコミュニケーションを含むという。
リリースでは「人種や性別とまったく同じように、英会話力など、本業の能力とは何の関係もありません」とコメント。外国人と話すときは、独自のシステムで外国語が母国語に自動翻訳されるウェブ上の「言語フリー部屋」を使う。言語に縛られずに本来の生産性を発揮できることができるとしている。
「外国語を使っている人でも大抵の場合、AI翻訳の方が精度がよい」と広報
「感無量です。創業から17年、ついにこの日がやって来ました。今ここに高らかに宣言します。我々はついに言語的ハンディの呪縛から解放されました。『言語フリー』の世界が実現しました。長年に渡って人類を分断し続けた言語の壁は、今ここに崩壊したのです」
社内向け文書をそのまま転載したリリースは、いきなりこんな宣言から始まる。同社によると、グループ社員のうち約2割を外国籍の社員が占めるが、全員が母国語だけを使って会話する。
「英語の会議で半分くらいしか理解できなかったり、英語だけ話せて仕事ができない人に担当させたり、仕事ができる人が英語を話せないだけで外されたり、一見日本語ペラペラの中国人が全然分かってなかったり、日本語が話せないエンジニアを採用できなかったり、語学ができるがゆえに本職じゃない翻訳をさせられたり、長年続いた暗黒時代は終わりました」
広報担当者に、母国語のみでコミュニケーションを取るメリットを聞くと、
「外国語をしゃべれない、自信がない人の間では、これまでコミュニケーションできなかったのが、初めてできるようになります。また、現在外国語を使っている人でも大抵の場合、AI翻訳の方が精度がよいので、これまで多発してきたミスコミュニケーションが減ります」
とアピールする。リリースは、こんな風に続いていく。
「今こそ目が覚める時です。人種や性別とまったく同じように、英会話力など、本業の能力とは何の関係もありません。英語ができる無能な人が重宝され、本当に実力のある人々が抑圧される暗黒時代はもう終わったのです。英語ができないだけで不遇な目に会っていた、優秀で素晴らしき人達。あなた方はついについに、檻から解放されたのです。自由に、羽ばたいてください。思う存分、きらめいてください。また、たまたま語学ができる人に、本業と関係ない翻訳仕事を依頼するのも無しです」
ちなみに、外国語を本当にネイティブ並に話せる人については、代表承認を得ることで例外的に外国語を話すことを許可する。「該当者は外国語使用許可の申請を行ってください」としている。
今回はまず自社でシステムを導入し、その後は外部向けサービスを開始する予定だ。本当に業務が回るのか気になるところだが、ツイッターでは「英語出来ることを昇進の条件にしてたりは多いからなぁ。けど英語出来るからと言って仕事出来るとは限らないってのはまさにその通り」と期待する人もいた。