ゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)は2月22日、車両後部に大型のファンを備えた『ゴードン・マレーT.50』と並行して設計、開発されたサーキット仕様の新型モデル『T.50sニキ・ラウダ』を発表した。
3度のF1ワールドチャンピオンである故ラウダの名が冠され、彼の誕生日に発表されたこのクルマは、元F1カーデザイナーのマレー率いるゴードン・マレー・オートモーティブが作り上げた、「トラック上でこれまでにない体験を可能にする」まったく新しいサーキット専用モデルだ。
究極のパフォーマンスを得るため、車両設計にあたってはベース車であるT.50から数百ものコンポーネントが変更され、その重量は公道仕様から134kg軽いわずか852kgに抑えられている。
それと同時にコスワース製3.9リットルV型12気筒エンジンの設計にも手が加えられ、エンジン自体の軽量化を実現しながら最高出力は+48PSとなる711PS/11500rpmに。最大トルクも485Nm/9000rpmに引き上げられた。これによりパワー・トゥ・ウエイトレシオは自然吸気のLMP1カーを上回る数値の835PS/tとなっている。
トランスミッションはT.50がHパターンを採用している一方、T.50sではXトラック製の特注6速パドルシフトギアボックスに変更された。
デザインの面ではロードゴーイングカーであるT.50から、直径400mmの回転翼が引き継がれ“ファンカー”の特性を継承。合わせて大型のリヤディフュザーと新たにデルタウイングが与えられ、より効率的にダウンフォースを獲得することが可能に。T.50sの最大ダウンフォース量は1500kgに上る。
この他、T.50sでは安定性を高めるために追加されたセンターフィンをはじめ、フロントスプリッターやダイブプレーン(カナード)、エンジンとトランスミッションの冷却用に設置されたサイドダクトなどが付与されているが、それらは個々の目的を果たしながらもベース車の純度を失わせることなく、エレガントな外観を作り出している。
マレーは「T.50sのスタイリングは完全にエアロダイナミクスを追求した形となっているが、それでも魅力的だ」と認める。
「T.50から引き継がれたボディパネルは1枚もない。しかし、ロードカーが非常に強力でクラシックな形状をしているため、(T.50sも同じように)輝きを放っているんだ」
有事の際にドライバーの身を守る6点式ハーネスを備えたフルレーシングカーボンシートが車両センターに配置される独自のインテリアも、T.50から踏襲された特徴のひとつだ。
しかし、T.50sでは定員が1名少ない二人乗りとなり、運転席の左後方に設置されるパッセンジャーシートはそのままに右後方のシートが取り外され、代わって消火器システムが備え付けられた。なお、助手席なしでのオーダーも可能だという。
■ブラバムBT46Bで優勝した親友に敬意を表した特別なクルマ
310万ポンド、日本円で約4億6000万円で販売される『T.50sニキ・ラウダ』の命名について、マレーは次のように述べた。
「T.50sは1978年のスウェーデンGPで、ブラバムBT46B“ファンカー”で優勝したニキに敬意を表して命名された」
「ニキは偉大なレーシングドライバーであり、同時に親友でもあった。だから彼の誕生日に『T.50sニキ・ラウダ』を発売することは、絶対にふさわしいことだと信じている」
「ニキは私たちのクルマの革新性と、エンジニアリングのディテールを高く評価していただろう」
限定数の“25”はラウダがF1で優勝したレース数と同じだ。ゴードン・マレー・オートモーティブは25台のシャシーひとつひとつに、ラウダとの関係が深いグランプリにちなんだ名前をつけるといい、最初のシャシーは彼が初めてポールポジションを獲得した南アフリカGPを意味する“キャラミ1974”と呼称される。
以後の24台にはラウダが勝利を飾ったレースにちなむ名称が与えられ、デリバリー時には命名に寄与したレースのストーリーや解説がなされた特別な本が同時に贈られる。
そんな『T.50sニキ・ラウダ』は、限定100台が販売される『T.50』の製造が完了したのち、2023年1月からイギリス、サリー州のダンスフォールドにあるゴードン・マレー・オートモーティブの製造センターで生産が開始される予定だ。