2021年02月23日 08:51 弁護士ドットコム
元タレントの木下優樹菜さんが2月16日、インスタグラムのストーリーズを更新。見知らぬ人に子どもの写真を撮られることへの怒りをあらわにした。
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木下さんはファンからの質問に答える形で、「子供を勝手に撮ってきたりしたくせに 態度悪くされたり開き直ってきたり 逆ギレしてきたやつには こっちも人間だし親だからから(原文ママ)怒ったよ」と過去の体験を明かした。
また、「知らない人に我が子を撮られる気持ち悪さは表現が難しいくらい腹が立つの」とつづり、「芸能人だから我慢しなきゃいけない理由ってなに? て優樹菜は常に思ってた」と打ち明けた。
プライベートで無断で写真を撮られることについては、多くの芸能人が悩んでいるだろう。果たして、勝手に有名人やその家族の写真をとって公開した場合、どのような法的問題があるのだろうか。加藤泰弁護士に聞いた。
——被写体に無断で写真を撮影する行為、またその写真を公開した場合、どのような法的問題がありますか。
肖像権侵害やプライバシー権侵害、また、著名人についてはパブリシティ権侵害の問題があります。
問題となっているそれぞれの権利は、裁判上徐々に認められるようになってきた考えですので厳密な定義はありませんが、おおよそ次のような権利といえます。
・プライバシー権は自分についての情報をコントロールする権利
・肖像権は、プライバシー権の一種といえますが、自分の承諾なしに顔や身体を他人に撮影されたり、撮影された写真などを使用されない権利
・パブリシティ権は自分の名前や写真などに生じている経済的価値を自分の承諾なしに使用されない権利
表現の自由、報道の自由という民主主義を支える重要な権利との兼ね合いもあり、肖像権、プライバシー権、パブリシティ権は常に万全の保護を受けるわけではありません。
写真撮影の必要性や目的、公開の方法なども含め、公益性の程度や社会生活上受忍しなければならない限度内かどうかの観点から、それら権利の侵害が違法かどうかをケースバイケースで考えていくことになります。
——木下さんのケースでは、どう考えられますか。
子どもには子ども自身の肖像権やプライバシー権があります。
木下優樹菜さんが引退されたとはいえ、ごく最近まで活動していた著名なタレントです。また、子どもの父親も著名なタレントです。しかし、それらを踏まえても、何らタレント活動をしていない子どもの写真を無断で撮影して公開することを正当化する理由は見出せないと思います。
撮影された子どもが裁判を起こした場合、撮影して公開した者が損害賠償を命じられる可能性はあるでしょう。
また、撮影した場所やイベントによっては別の問題もあります。
権利意識の高まりを受けて、最近は幼稚園や学校などでは写真の撮影については細かいルールを設定していることが多いのですが、そのルールに反した写真撮影を行って、幼稚園や学校が対策を余儀なくされるなどなれば、刑法の業務妨害罪が成立する可能性がありますし、そのような目的があることを黙って立ち入ること自体に刑法の建造物侵入罪が成立する可能性があります。
レジャー施設などでは各施設で利用規約のようなものがあると思いますが、そこで定められたルールに反することにもなりかねず、施設側から以後の利用を断られたり、損害賠償を請求されることも考えられます。
そして、そのような法的問題をはらむ写真をインスタグラムなどのSNSなどに公開すれば、SNS側の規約違反としてアカウント停止などの措置を受ける可能性もあります。
プライバシー、セクシャルハラスメント、LGBTQなどの問題に対する社会の意識は急激に変化しています。何がセーフで何がアウトかの境界は微妙です。法的にはセーフでも炎上してしまうことも少なくありません。自分の感覚が世間の感覚とずれていないかを常に確認する必要があるといえます。
【取材協力弁護士】
加藤 泰(かとう・やすし)弁護士
早稲田大学法学部卒業、広島弁護士会所属
広島弁護士会広報室室長代理、広島商工会議所青年部会員
Twitter:https://twitter.com/39katoyasushi
事務所名:山下江法律事務所
事務所URL:https://www.law-yamashita.com/