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期待通りの実力? 日産の新型「ノート」に公道で試乗!

2021年02月19日 08:11  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
モデルチェンジした日産自動車「ノート」の試乗記事が解禁日を迎えた。19日午前0時以降、次々とさまざまなウェブサイトやYouTubeに試乗レポートが上がっているはずだ。自動車メディアの連中は、どこかで会うとあいさつ代わりに「もう、あれ乗った?」と、注目度の高いクルマの印象を聞き合う。近頃はノートの話題が多い。そして、みな異口同音に好印象だと語る。僕もそのひとりだ。その理由を述べていきたい。

○車台刷新でライバル達に匹敵する性能を獲得

新型ノートは車台(プラットフォーム)が一新された。ルノーと日産が共同開発した「CMF-B」を使う。「CMF」はコモン・モジュラー・ファミリーの略で、「B」はBセグメント(コンパクトカー)用のサイズであることを意味する。

車台を新しくすればクルマが必ずよくなるわけではないが、乗り心地を大幅に改善したり、外寸を大きくすることなく車内空間を拡大したり、燃費のために軽量化したりするには必須。新しい電動化システムやADAS(先進運転支援システム)を盛り込む際にも、それが可能な車台が必要になってくる。ノートの場合、新しい車台は乗り心地改善とハンドリング向上に貢献している。

先代ノートは発売から8年が経過していたので、昨年相次いでフルモデルチェンジして乗り心地を大幅に改善してきたトヨタ自動車「ヤリス」、ホンダ「フィット」といったライバルと比べると、その差は歴然としていた。そのノートが新型となり、乗り心地、ハンドリングともにライバル達と肩を並べた。

名前に「モジュール」という単語が入っていることからも分かる通り、CMF-Bはボディ形状やサイズによって最適化することができるので、さまざまなコンパクトカーに用いることができる。すでに海外市場向けの日産「ジューク」やルノー「ルーテシア」「キャプチャー」が採用済みだ。モジュール化によって生産効率を上げ、コストを削減するのが主目的だが、一度よい車台を作ってしまえば、それを使ったモデルはたいてい出来がよくなるという意味でも効率的なやり方である。先日、キャプチャーにも試乗したのだが、静粛性や剛性感の高さにノートと共通するものを感じた。

○路面を監視? 「e-POWER」に新たなアイデア

ノートといえば「e-POWER」。エンジンは発電に徹し、駆動は電気モーターのみが担うシリーズハイブリッドのe-POWERを初めて採用したのが先代ノートだった。今回は駆動を担うモーターや電気を直流から交流に変換するインバーターが新型に切り替わったほか、昨年発売となったコンパクトSUV「キックス」に用いられた新しい制御プログラムも盛り込まれた。ハードもソフトも新しい第2世代のe-POWERとなったわけだ。

乗ってみると、e-POWERの加速は相変わらずスムーズで、気持ちがいい。先代よりも発電のためにエンジンがかかる頻度も時間も減った。そのため、明らかに静かになっている。これが新しい制御プログラムの特徴で、バッテリーがある程度減るまではエンジンを始動しないようにしてあるという。

先代ノートは、絶対に電力不足に陥らないように高頻度でエンジンをかけ、バッテリーを満タンの状態に保つようにしていたが、この第1世代e-POWERが市場でさまざまな使われ方をした結果、もう少しバッテリーに頼っても大丈夫ということがわかったようだ。また、基本となるエンジン回転数が2,400rpmから2,000rpmへと下がっているため、エンジンが稼働しているときでも従来より静かになった。

面白い制御も加わった。走行中、荒れた路面に差し掛かると積極的にエンジンがかかるのだ。エンジン稼働中も静かになった新型ノートであるとはいえ、エンジンが止まっているときよりも動いているときの方がうるさいのは当然のこと。ただ、新型ノートは、どちらにしろ騒音が高まる荒れた路面を走っている際にエンジンをかけて充電し、かかっていない静かな時間をできるだけ静かに保とうとする。これはすばらしいアイデアだ。試乗中にも何度か「これが“どうせなら”のエンジン始動かな」と感じる瞬間があった。

○地図を見て減速する賢い「プロパイロット」を搭載

自動車専用道路を走行中、設定した速度の範囲内で先行車両を追従走行してくれる「プロパイロット」も進化した。「スカイライン」に搭載されたハンズオフ機能付きではないが、新型ノートのプロパイロットには「ナビリンク機能」が備わっている。これは、車載する地図データでカーブを事前に把握し、プロパイロット作動中にカーブに差し掛かると、設定速度にかかわらず、安全に曲がることができる速度まで自動的に減速してくれる機能だ。直進状態になると設定速度に戻る。

また、料金所の位置も把握しているので手前で減速してくれるのだが、なかにはきちんと速度を下げずに通過しようとするクルマもあるため、正しい速度で通過しようとするノートと速度差ができ、試乗中も1、2度、追突されるんじゃないかとヒヤヒヤしたことがあった。ただ、こういった技術は、普及が進めば全体の安全に寄与するものだといえる。

プロパイロット以外の先進運転支援システムも充実し、クラス最新、最高レベルとなった。衝突被害軽減ブレーキはミリ波レーダーの採用により、カメラのみで検知していた先代よりも遠くまで検知可能に。また、ミリ波レーダー採用によって2台前の先行車両の減速を検知し、衝突の危険性を早い段階でドライバーに警告することができるようになった。ハイビーム時、対向車や先行車のドライバーを眩惑させないよう、その部分のみ光量を落とすアダプティブLEDヘッドライトシステムも備えている。

このほかに、ふらつき警報、標識検知機能、車線逸脱警報および防止支援システム、真上からの映像を見ながら駐車できるインテリジェントアラウンドビューモニター、踏み間違い防止アシストなど、日産が「360度セーフティアシスト」と呼ぶ運転支援システムが標準装備あるいはオプションとして設定された。

e-POWERとプロパイロットは、どちらも日産が他社に先駆けて実用化したか、あるいは普及に一役買ったテクノロジーだが、e-POWERを採用した先代「ノート」「セレナ」にせよ、プロパイロットを採用した「セレナ」「エクストレイル」「スカイライン」にせよ、これらの技術を採用した時点で発売から数年が経過したモデルだったため、クルマ自体にあまり新鮮味がなかった。また、2020年に登場したキックスは、「日産にとって約10年ぶりの新型車」と紹介されたモデルであり、e-POWERもプロパイロットも進化版を装備していたが、海外ではその数年前から販売されているモデルを輸入したとあって、やはり新鮮味という面ではいま一歩だった。

その点、ノートはクルマ自体もe-POWERもプロパイロットもすべてが新しい。デザインも、電動化時代の日産を牽引していくであろう「アリア」(2021年末か2022年に発売となる電気自動車。木村拓哉さんが登場するCMに出てくるアレ)と同じ雰囲気をもっていて新鮮だ。ちなみにノートは、箱に入って海外へ逃亡した元トップの印象を消すべく(!?)、急遽変更となった新エンブレムを装着する最初の日産車でもある。

さらに、これまでとは段違いにパワフルなリアモーター(50kW、100Nm)が組み込まれた4WDバージョンもあり、近い将来にはラグジュアリーバージョンも追加となる見通しだ。

日産がもつ高い技術力、企画力が盛り込まれた新型ノート。ここのところのお騒がせから心機一転して再スタートを切る日産が、このタイミングで投入してきた新型車であることも相まって、ワクワクさせてくれる1台だ。

塩見智 しおみさとし 1972年岡山県生まれ。1995年に山陽新聞社入社後、2000年には『ベストカー』編集部へ。2004年に二玄社『NAVI』編集部員となり、2009年には同誌編集長に就任。2011年からはフリーの編集者/ライターとしてWebや自動車専門誌などに執筆している。 この著者の記事一覧はこちら(塩見智)