2021年02月17日 10:31 弁護士ドットコム
「雪の日に出勤した社員から、会社の対応について文句が出ています」。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられている。
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相談者によると、その日は大雪だったため、社長の指示で昼から会社は休みとなった。雪のために出勤できずに休んだ社員もいれば、出勤した社員もいたそうだ。
相談者がいる地域では「雪休み」が慣習となっており、雪の場合は家から出られないなどの理由で会社を休む社員が大半なのだという。ただ、職務規定には雪で休んだ場合についての記載はない。そのため、社長の判断により、その日に休んだ社員は「有給扱い」となり、出勤した社員は「通常どおりの出勤扱い」となった。
ところが、出勤した社員からは不満の声も上がった。「雪で危ないのに出勤してやったんだから、手当を出せ」「1日分の給料を出せ」などと言い出した社員もいたという。
社長は「文句があるならば、定時まで働いてもらって構わない」と言ったものの、社員たちは納得しなかったそうだ。
企業としては、どのように対応すべきだったのだろうか。齋藤裕弁護士に聞いた。
ーー今回のケースでは、雪の日に休んだ社員は「有給扱い」になったようです。雪の日に休んだ場合、そもそも会社は給料を支払う必要があるのでしょうか。
大雪で出退勤や業務に危険を伴うようなときは、従業員の安全確保のため、従業員に休みや半休を与えるべき場合があります。
そのような場合、会社側としては給料を払う必要がなく、さらには不可抗力による休業として給料の6割の休業手当の支払をする必要もないとされる可能性があります。会社としては、そもそも出勤しなかった従業員に対して賃金を払う必要はなかったかもしれません。
もちろん、出勤するかどうかを決定したのが会社である以上、従業員がその決定により賃金をもらえなくなることで不満を抱く可能性もあります。
また、賃金や休業手当を払わなくてもいいほどの大雪ではなかったのに、会社の判断で休業となったと評価されるリスクもあるので(実際、出勤している従業員がいたことから、今回のケースの場合にはそのような評価もありうるかもしれません)、会社として欠勤した従業員に賃金を払った判断は妥当なものだったとは思います。
しかし、その結果、従業員間に不満が溜まるのであれば本末転倒ともいえます。
ーー会社は本来、どのように対応すべきだったのでしょうか。
本来は、「〇〇警報が発令された場合は休業とする。その場合、賃金は支給する」というようなルールを、従業員の意見も聞きつつ、決めておくべきでした。
このように、あらかじめ従業員の意見を聞いて明確なルールを取り決めておけば、後で従業員から不平を言われることをかなり抑止できたのではないかと思います。
大きな災害が増えつつあり、また、災害の際には無理して出勤させるべきではないという考え方も浸透しつつあります。各社においては、ぜひ、どのような災害であれば休業とし、その場合に賃金がどうなるかについてのルール作りに取り組んでいただきたいと思います。
【取材協力弁護士】
齋藤 裕(さいとう・ゆたか)弁護士
刑事、民事、家事を幅広く取り扱う。サラ金・クレジット、個人情報保護・情報公開に強く、武富士役員損害賠償訴訟、トンネルじん肺根絶訴訟、ほくほく線訴訟などを担当。共著に『個人情報トラブル相談ハンドブック』(新日本法規)など。
事務所名:さいとうゆたか法律事務所
事務所URL:http://www.saitoyutaka.com/