2021年02月16日 10:21 弁護士ドットコム
人間はなぜ、あんなところに指を突っ込むのだろうかーー。コンビニのおでん鍋に指を入れた男性が逮捕された。
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このコロナ禍で、世界の衛生意識は大きく変わった。コンビニ店でできる対抗策はフタをすることぐらいだが、決定的なものとは言いがたい。
イタズラされてしまうと、対応に時間も精神的にも手間がかかってマイナスになるという。
テレビ静岡の報道(2月11日ネット配信)によると、コンビニ(静岡県浜松市)のおでん鍋に指を入れたとして、静岡県警は2月10日、33歳の男性を器物損壊の現行犯で逮捕した。
店長が注意すると、男性が暴れたため、通報したという。被害総額は約6000円と報じられている。
コンビニのおでん鍋に指を入れたことが、なぜ器物損壊なのか。冨本和男弁護士はこう説明する。
「器物損壊の『損壊』は、広く物本来の効用を失わせる行為を含みます。おでん鍋に指を入れる行為について考えてみると、普通の人は、指を入れられたおでんを食べたいと思いませんから、こうした行為によっておでんの食品としての効用が失われます。
そのため、おでん鍋に指を入れる行為も器物損壊に当たるわけです。
たとえば、おでん鍋に向かってマスクをせずに喋り続ける行為についても、普通の人は、人の唾が入ったおでんを食べたいと思いませんから、あまりにも酷い場合には器物損壊に当たるのではと考えます」
では、コンビニ店では、おでん鍋への悪行に対して、どのような対策を講じているのだろうか。複数のコンビニオーナーに聞いた。
あるオーナーによると、ファストフード類の什器が増えたことで、かつてレジカウンターに置いてあった鍋は、カウンター前に置かれるようになった。スタッフの目が届きにくくなり、かき回して煮崩れさせるなど、イタズラも増えたという。
対策の1つとして、鍋にフタをするという手段がある。ただ、おでん出汁の匂いを店内に広げるなどの効果がのぞめるとして、本部からは「フタを開けないと売れない」と指導されることが多いのだという。
中には、コロナ禍にあっても同様の指導をする本部社員もいる。「店内の埃・虫・お客様やスタッフの唾が入ってもおかしくない。今は鍋のフタにさらにシールドで二重ブロックしている」という店舗や、今年はおでん鍋をやめたという店舗もあった。
別のオーナーは、「万引きなどと同じく、警察に通報すると、数時間単位で対応に時間を取られます。また、損失を請求するのも手間です」と語り、いたずらに怒りを隠さなかった。
【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp