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元ジャニーズJr.からSHINee振付師まで……中国版“プデュ”に日本からの参加者増加 アイドルシーンの盛り上がりが背景に

2021年02月16日 06:01  リアルサウンド

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リアルサウンド編集部

 中国のアイドルオーディション番組『青春有你(Youth With You)3』と『创造营(CHUANG)2021』の新シーズンがスタートする。


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 これらは韓国で社会現象を巻き起こした『PRODUCE 101』通称“プデュ”シリーズの番組フォーマットを基に製作されるもの。一昨年にはその日本版として『PRODUCE 101 JAPAN』(通称“日プ”)も作られ、その続編『PRODUCE 101 JAPAN  SEASON2』(“日プ2”)の放送も間もなくとなっている。中国では2018年『偶像练习生(Idol Producer)』を皮切りに数々の“プデュ”シリーズが誕生しており(以下“中プ”)、これから放送される『青春有你3』と『创造营2021』では新たな男性グループのデビューメンバー選抜が予定されている。


 今回の“中プ”で最も注目を集めているのは、これまでになく多くの練習生が日本から参加していることだ。『青春有你3』にはソニーミュージック所属のシンガーソングライター・橋本裕太の参加がアナウンスされており、また『创造营2021』には“日プ”出身で現RBW JAPAN練習生の井汲大翔、田口馨也、EBiDAN39&KIDSの佐藤永翔、元ジャニーズJr.の羽生田拳武、avex所属グループ・INTERSECTIONメンバーのミッチェル和馬、橋爪ミカ、モリアティー慶怜、またSHINee・テミンのバックダンサー経験もあるSANTA、BoAやSHINeeなどの振り付けを手がけたRIKIMARUら17人の候補入りが決定している。


 新星から経験豊富な実力派まで、過去に類をみないほど多数で多様な参加者が日本から集うこととなった“中プ”最新シーズン。その背景には、今まさに拡大を遂げる中国アイドルシーンの盛り上がりと、そこに生まれる可能性が見出だせる。


 巨大市場・中国では、その消費を主に1980年代~90年代生まれのミレニアル世代と1995年以降に生まれたZ世代が牽引すると言われている。総人口14億人のうちおよそ半数を占める中国のミレニアル・Z世代は、国内における消費拡大の大部分を担うとともに、これまでの世代とは異なる価値観・特徴を持つ新しい消費者として、マーケットを動かし新たなフィールドを開拓する台風の目となっている(参照:FASTGLOW)。


 そんな彼らが購買層のコアとなるのがオンライン娯楽コンテンツだ。『青春有你』シリーズ、そして『创造营』シリーズをそれぞれ看板番組のひとつとして掲げる中国の動画配信サービスiQIYIとTencent Videoはともに月間アクティブユーザー5億人以上、有料会員およそ1.1億人を抱える(参照:CCTV)。


 昨年配信された女性版“中プ”の『青春有你2』『创造营2020』は各サービスの年間人気ランキングでトップを飾ったが、その視聴者割合のほとんどを占めたのはミレニアル・Z世代。彼らは現在の中国におけるアイドルシーンを盛り上げる立役者となり、その強大な力で独自の熱量をもたらしている。


 他国のアイドルオーディション番組と比較すると莫大とも言える視聴者数を誇るとともに、番組そのものの人気が根強いため、デビューメンバーはもちろん惜しくもデビューが叶わなかった参加者への注目度も相当なものである。オーディションをきっかけに己の魅力を知ってもらうことで多くのファンを獲得したり、有名ブランドの広告塔や音楽番組・ドラマへの出演など大きなチャンスを勝ち取り、ひっぱりだことなる者が目立つことも“中プ”の特徴と言えるだろう。


 昨年の『青春有你2』に参加した唯一の日本人練習生、七穂(稲垣七穂)もその一人だ。オーディション中は、その可憐な出で立ちや美しい歌声とともに、他の参加者たちと助け合いながらひたむきに努力する姿を見せ、視聴者の胸を打った彼女。現在では中国のSNS・微博(Weibo)で150万人ものフォロワーを擁し、「LOSER」(米津玄師)のカバー動画は1200万回再生を達成。昨年には、日本人として初めて中国最大手の音楽配信サービス・テンセントミュージックとの独占契約を結び、1stアルバム『我是七穂』がリリースされるなど中国と日本を股に掛けた活躍の場を広げている。


 さらにコーチ陣として、現役の若きトップアーティストたちが揃っていることも魅力的なポイントだ。これまでには元EXOのレイやタオ、ルハン、GOT7のジャクソン、f(x)のビクトリア、SEVENTEENのTHE 8 (ミンハオ)、また“プデュ”シリーズ『偶像练习生』出身者であるNINE PERCENTの蔡徐坤(ツァイ・シュークン)らが参加しており、今回も『青春有你3』ではBLACKPINKのLISA、『创造营2021』にはf(x)のアンバーなど豪華な面々がパフォーマンス指導にあたる。ミレニアル・Z世代から絶大な支持を受ける現役スターの起用は、視聴者を喜ばせるだけにとどまらない。自身に近い世代ながら、国際舞台の第一線に立つトップアーティストたちから得る活きたアドバイスは、参加者にとってこれ以上ない貴重な財産となるのではないだろうか。


 韓国発のオーディション番組が中国のアイドル人気に火をつけている現状からもうかがえるように、現在の中国アイドルシーンは主にK-POPカルチャーから大きな影響を受けて発展している点も興味深い。例えば日本のK-POPファンにもお馴染みの、末っ子を表す「막내(マンネ)」といった韓国語は「忙内(mangnei)」と表記され、ファンのみならずアイドル自身によって使用されている。またBLACKPINKなど人気グループのコンセプトは、楽曲や衣装のインスピレーション源として積極的に反映されている。


 その一方で中国アイドルの中には古典舞踊などの素養を備える者も多いことから、ポップカルチャーと伝統文化が組み合わされたパフォーマンスが披露されたり、また日韓とは異なる独立したファンカルチャーの動きも見受けられる。今回の“中プ”には日本以外にもアメリカ、タイ、ロシア、台湾など様々な地域から参加者が集うが、他文化を活発に取り入れながらそこに独自性を加えて拡大していく中国アイドルシーンの、今後の動向にも目を引かれる。


 『青春有你3』『创造营2021』の放送開始を前に予告映像や渡航前のパッキングVlogなどが公開され、早くも話題を呼んでいる日本からの参加者たち。今まさに爆発的な盛り上がりをみせている中国アイドルシーンで、彼らはどんな活躍を見せるだろうか。(菅原史稀)