2021年02月15日 10:01 弁護士ドットコム
不倫をした夫とその相手に、罰を与えたい! 思わずそう考えてしまう人も多いかもしれません。ただ、最初はちょっとした仕返しのつもりが、どんどんエスカレートしていくのが恨みという感情の恐ろしいところです。
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既婚男性と不倫をしたシングルマザーが、「不倫相手の妻の嫌がらせがどんどんエスカレートしています」と弁護士ドットコムに相談を寄せました。
とくに困っているのは、職場への通報です。
「彼と私双方の職場に『不倫している人間をどう処分するのか』と匿名の電話や封書がきております。『相当な処分をしなければ会社名ごと世間にさらす』とのことです」
不倫相手の妻の行動は、なんらかの罪にあたる可能性はあるのでしょうか。齋藤裕弁護士に聞きました。
——不倫相手の妻の行動はどんどんエスカレートしているようです。法的問題はありますか。
不倫相手の妻が、不倫をしているという事実を不特定多数の人に伝える行為は名誉毀損にあたり、刑事罰あるいは損害賠償の対象となる可能性があります。
もっとも、名誉毀損も、公益目的により、公共の利害にかかわることについてされる場合には、法的な責任を問われない可能性があります。しかし、不倫をしている事実を人に伝える行為は、これらの条件を満たさず違法とされることが多いでしょう。
今回のケースに関連する裁判例があります。
この裁判例では、妻が、夫の不貞相手の職場の上司に、不貞の事実を記載した文書を送りつけました。
妻の行為について裁判所は、文書を受け取った上司から他の人に不倫の事実が伝わることが想定されたとして、名誉毀損を認め、妻に賠償責任を認めています(東京地裁平成27年6月3日判決)。
——不特定多数はもちろん、特定の人だけに伝えるのもアウトということですね。
はい。事案によっては違法な名誉毀損が認められる可能性があるということです。
そのような名誉毀損を受けた場合の対処法としては、弁護士に依頼し、警告文を出してもらうなどの対応が考えられます。
(弁護士ドットコムライフ)
【取材協力弁護士】
齋藤 裕(さいとう・ゆたか)弁護士
刑事、民事、家事を幅広く取り扱う。サラ金・クレジット、個人情報保護・情報公開に強く、武富士役員損害賠償訴訟、トンネルじん肺根絶訴訟、ほくほく線訴訟などを担当。共著に『個人情報トラブル相談ハンドブック』(新日本法規)など。
事務所名:さいとうゆたか法律事務所
事務所URL:http://www.saitoyutaka.com/