日本の女性活躍が進まない根底に、「女性に押し付けている役割や期待感」があると感じています。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言問題は、日本社会のそういった文化が世界に露呈した一つのきっかけに過ぎません。
辞任すれば終わりということではなく、女性自身を含め誰でも時代遅れなジェンダー観を無意識に持っていること、そしてそれを周囲に発信している、または、反論せず受容している可能性があることを認識するこが大事ではないでしょうか。
今回、違和感を表明する人が多数出たのは喜ばしいことです。次の段階では、きちんと自浄作用が働くようNOを言うことが現状のさらなる改善に繋がると思います。(文:時短ママ戦略活用アドバイザー谷平優美)
「女性を登用してあげている」という意識を変えなければ何も変わらない
今回のように公に言わないまでも、「女性(男性)はこうだから困る」「女性(男性)はこうあるべきだ」という考えが無意識に出てしまうことはまだ日常的にあるのではないでしょうか。
押しつけがましくなくても、例えば、誰が可愛いか容姿をネタにする、女性を惚れさせてマネジメントを図ろうとする、などの対応なども森さんと同罪ではないかと思います。対外的には「弊社では女性が活躍している」「男女差別は遺憾」と表明している側でも、自分自身もそういった態度やバイアスがないか常に意識していくべきでしょう。
まだ一部の企業では女性社員やクライアント女性営業に対して男性と接し方がだいぶ異なるという人も少なくなくありません。仕事人として尊重し相手にする気がないというスタンス自体が、女性の意欲をそいでしまいます。
若い女性たちに、この世界で苦労するよりも男性の期待する控えめでおとなしい女性像に転向したほうが実は賢いかもしれない、と思わせてしまうと悪循環です。建前の裏にある本音が変わらない限り、本質的な女性活躍は遠いでしょう。「(男性が)女性を登用してあげている」「女性は仕事より家庭」という概念やジェンダー観の押しつけがある限り、森さん一人が辞めても日本は変わりません。
「女性管理職を増やすべき」と数字だけを追うのではなく
私自身も、過去に「女を馬鹿にしてるな」と不快に思うことがあっても、愛想笑いで済ませてきてしまってきたことに、40代となった今では反省しかありません。権力者に誰も苦言を呈さないできたこと、黙って我慢してきたことが、女性を苦しめ、活躍を阻んできたと言えるのではないでしょうか。
悪意の有無やレベルは様々ですが、何か発言すると「わきまえない(都合が悪い)」「これだから女性は感情的で困る」「早く結婚して情緒を安定させろ」などと陰口を言われたことのある女性も多いでしょう。
改めて、「意思決定者の半分が女性である」「違和感のある価値観にNOを言う」ことが後の世代にとても重要だと感じています。決裁者に女性が増えると、ごく一部の話にはなると思いますが「性接待で仕事をとる」、なんてくだらない商習慣も減るでしょう。それによって悲しむ人も減るし、より実力で仕事が決まっていく社会になっていきます。
だからと言って、「女性管理職を増やすべき」と言われているから、というだけで数字の達成を目的にするのは違います。指標となる社内数字はいいように見えて、文化が伴っていないケースはまだ多いでしょう。一方で、女性を男性と同じ期待と機会を与えて育成し、「管理職候補の数を増やすこと」も大事なのは事実です。
女性を支配下に置きたい、上からものを言いたいという生物学的な男性としての志向があったとしても、仕事人としては対等な人間として尊重する、ということをはっきりさせることが見えない差別の解消に繋がります。
もちろん、現状を諦めた結果、ジェンダー観を逆利用してきた女性たちにも、甘えずに強く自立していく、という意思が求められていくことでしょう。
【筆者プロフィール】
谷平 優美
時短ママ戦略活用アドバイザー/株式会社ルバート代表取締役。早稲田大学商学部卒業後、総合人材サービス会社で新規事業立上げ・執行役員を経て、 株式会社リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。WEB企画・マーケティング、法人営業を経て退職。出産前後には専業主婦やフリーランスも経験。サロン講師、就職講座講師やキャリアカウンセリングをしながら、無理ない子育て中の働き方を模索するも待機児童となり認証保育園を利用しながら活動。転職支援・キャリア教育に関わった経験と、出産後に感じた様々な社会への違和感に何か発信をしたいと2012年にママハピを創業。2018年、社名変更後は時短ママのジョブシェア体制で事業運営。J-WAVEやフジテレビライブニュースα、東洋経済、NewsPicksなどメディア実績多数。2児の母。