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恋人や不倫相手に「あなたのせいで自殺する」 死をほのめかす発言は脅迫になる?

2021年02月11日 10:11  弁護士ドットコム

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月刊映画雑誌「映画秘宝」(双葉社)の公式Twitterアカウントが、個人に対して「大きなショックを受けて、死にたいです」といったダイレクトメッセージを送ったことが話題となった。


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今回は面識のない人から突然言われた形だったが、恋人や知り合いなどから「お前のせいで俺は自殺する」と言われる人も少なくないようで、弁護士ドットコムには複数の相談が寄せられている。




「同じ職場の人から告白され、断ったのですが、『好きになってくれないなら自殺する』『あなたのせいで自殺したと遺書にかくからずっと苦しんで』と言われて困っています。今から死ぬ、と電話がかかったりします」







「彼氏と喧嘩になり、彼が自殺しようとしていて、その際遺書に『私(名前)のせいでこうなりました。全部私(名前)が原因です』と書いて死ぬらしいです」







「年上女性と不倫をし、別れ話をした後自殺をほのめかす発言をされています。1回は関係が終わったもののまた戻ってしまい、こうなったのは全部私のせいだと言われています」




普段付き合いのある人から言われると、どうしたら良いのか戸惑ってしまうだろう。こうした発言は、脅迫に当たらないのだろうか。好川久治弁護士に聞いた。



●脅迫罪は「害を加えることを告げる」ことで成立する

——相談者の多くは、自分も責任を問われるのではないかと不安に感じているようです。「お前のせいで自殺する」といった発言は、脅迫に当たらないのでしょうか。



脅迫は、他人やその親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加えることを告げることで成立する犯罪です。



「(あなたのせいで傷ついたので)死にたい」、「あなたのせいで死ぬ」だけは、単に、相手に自死の動機を伝えることで相手を困らせようとしているだけですので、脅迫にはあたりません。



言われた方としてはいい気分ではないですが、害を告げられているわけではありませんので、犯罪は成立しません。



——なにか言い返した場合は、問題になりますか。



逆に、言われた方が、本当に死んでもよいと思って、「だったら死ねばいい」、「死んでもなんとも思わない。死ねば」などと言ってしまい、相手が本当の自死に及んでしまった場合には、自殺教唆や自殺ほう助の罪が成立する可能性があります。



●もし相手が亡くなったら…

——実際に相手が亡くなってしまった場合、言われた側に何か法的な責任は発生するのでしょうか。



「(あなたのせいで傷ついたので)死にたい」、「あなたのせいで死ぬ」と言って死んでしまった場合でも、死の結果を招くだけの不法行為がなければ責任(損害賠償責任)を問われることはありません。



——喧嘩や別れ話をした後でも、責任は問われないのでしょうか。



恋愛関係にあった二人の間で喧嘩をしたり、別れ話のもつれから一方が自死に及んだりした場合でも、喧嘩や別れ話は自由恋愛のなかで普通に起こりうることですから通常は不法行為とはなりません。



——どのような行為をした場合、責任を問われますか。



責任が発生するためには、死の結果を招いた加害行為が必要です。さきほどの自殺教唆や自殺ほう助となる場合のほか、たとえば、自死を招く可能性の高い暴力や暴言その他のハラスメント行為があった場合などです。



なお、死の結果そのものに対する損害賠償責任を負うことはなくても、その手前の段階で発生した損害については責任を負わなければならないことはあります。たとえば、暴力や暴言などにより相手に精神的損害を与えたような場合です。



また、単なる自由恋愛ではなく、婚約までしていた場合において正当な理由なく婚約を破棄した場合には、破棄によって発生した損害に対しては責任を負わなければなりません。




【取材協力弁護士】
好川 久治(よしかわ・ひさじ)弁護士
1969年、奈良県生まれ。2000年に弁護士登録(東京弁護士会)。大手保険会社勤務を経て弁護士に。東京を拠点に活動。家事事件から倒産事件、交通事故、労働問題、企業法務まで幅広く業務をこなす。趣味はモータースポーツ、ギター。
事務所名:ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
事務所URL:http://www.yoshikawa-lawyer.jp/