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ワクチン詐欺、世界ではこんなケースも “接種遅れ”の日本は「先進事例」知って対策を

2021年02月11日 09:51  弁護士ドットコム

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新型コロナウイルス感染症のワクチン接種がようやく具体化してきた。しかし、一体いつ受けられるのだろう。海外では始まっているというのに。ワクチンは足りるだろうか。


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そんな気持ちに忍び寄るワクチン詐欺が日本でも増えている。



たとえば今年1月、製薬会社を名乗る者から長野県の男性に「事前申し込みがあれば、1月中にワクチンを打てる」との電話があった。保健所に相談して詐欺とわかったが、同様の電話が複数あったことが報道されている。



この手の詐欺は今後、増える可能性がある。すでにワクチン接種が始まった国では、詐欺の類型が出揃ってきた。先行事例を知って、だまされないよう注意してほしい。(ライター・森下純子)



●接種が始まった海外では、こんな事例も

イギリスではNHS(国民保健サービス)をかたる者から「あなたは、ワクチン接種対象者になった。詳細は次のリンクをクリック」とメッセージがきた。



リンクの先は、本物によく似たニセのサイトで、個人情報を入力するようになっていた。 いわゆる、フィッシング詐欺だ。



アメリカでも、FBI(連邦捜査局)が様々な詐欺師の口上を紹介、注意喚起している。




・手数料を払えば、ワクチンを販売する、またはウェイティングリストに入れる
・あなたは、ワクチンを接種しなくてはいけない
・ワクチン入手にあたり、追加の医療検査または手順が必要
・ワクチンに対するあなたの適応性を診断する
・FDA(米国医薬品局)認証済のワクチンがある
・関連株があり、必ず相場が上がる




これらは、公的機関や保険会社と名乗って電話やメールをよこし、入金を要求する。



または、リンクに誘導し、個人情報を要求するフィッシング詐欺である。届いた“認証済ワクチン”も、普通の人には検証しようがない。



また、詐欺ではないが、優先的接種に申請した医師が、SNSで脅迫や嫌がらせを受けた事例もある。誰だって、前の方に並びたいのである。



●悪徳業者の定石は「緊急、重要」を強調し急かすこと

早く接種したい。コロナで損したロスを埋めたい。こうした気持ちに悪徳業者はつけこんでくる。



接種が始まればさらに増えるだろう。接種が2回なら、「二回目詐欺」も出るかもしれない。



悪徳業者の定石は、緊急、重要を強調し急かすことだ



対策としては、送信者が信用おける機関や企業を名乗っているのなら、公表されている番号などに電話をかけ直したり、ホームページの情報を取りに行ったりすることだ。保健所や警察に相談するのも有効だ



言うは易しで、舞い上がっていると難しいが、一晩寝て少し落ち着いてみる、誰かに言うくらいでも効果はある。



フィッシング詐欺については、サイトも作り込んであり、ニセものかどうか判別しにくいが、「開かない」「クリックしない」「入力しない」の3つが重要である 。うっかり開けても、クリックや入力をしなければ被害は限定的だ。



<参考:国民生活センター『国民生活』2020年9月号(No.97)「特集 急増するフィッシング被害と備えておくべき知識」>



●「ゼロトラスト」と一呼吸で自分を守る

怪しげなワクチンは論外だが、正規のワクチンでさえ開発されて数カ月である。長期的な効果などがわかるのはまだこれからだ。



自分だけ早々と接種できても、全員が2回目の接種を終えるまでは今の自粛生活が大きく変わらない可能性もある。



それを念頭にいれて、心配や欲に動かされて急がないようにしたい。こうした詐欺に対抗する一番の“ワクチン”は、「ゼロトラスト(すべて信頼しないきちんと確認する)」と「一呼吸」である。コロナの免疫もだが、だまされない免疫も大切だ。



<参考:新型コロナワクチン接種についてのお知らせ(厚生労働省)> >




【森下純子(もりした・じゅんこ)】 貿易、消費者問題に関する国際業務を経て、現在翻訳、ライター。