2021年02月10日 20:51 弁護士ドットコム
運送会社ヒガシトゥエンティワン(大阪市中央区)の運転職労働者ら29人が、会社側に対して未払い残業代を求めていた訴訟は2月10日、大阪地裁で和解が成立した。
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会社側が解決金として、請求全額となる計約6200万円を支払う。
同社の当時の給与規定では、残業によって時間外手当や深夜手当などが発生しても、売上に応じた歩合給に相当する「運行時間外手当」の金額を上回った分しか支給されないことになっていた。
こうした規定に「実質的な残業代ゼロ」だと異議を唱えたのは、会社で2番目に大きいヒガシトゥエンティワン労働組合の組合員たち。団体交渉が不調に終わったため、2019年10月に提訴した。
同社と似たような給与体系が争われた判例がある。タクシー運転手が「実質残業代ゼロ」になってしまうと訴えていた「国際自動車事件」だ。
残業代がゼロというのは、歩合給から残業代同等額が引かれていたからだ。
しかし、下級審の中には、法令違反などがない限り、賃金をどのように定めるかは自由としたうえで、名目上は法定の金額を下回らない残業代が出ていることなどから、制度を合法とした判断もあった。
これに対して、最高裁は2020年3月、国際自動車の制度では残業代が払われたことにはならないと判断した。名目だけでなく、賃金体系全体における位置付けなどにも留意すべきなどとしている。
今回のヒガシトゥエンティワン事件と国際自動車事件との関係について、組合側代理人の中井雅人弁護士は、次のように説明する。
「本件は、国際自動車事件のような控除型ではありませんが、実質的には同じことです。国際自動車判決をふまえた原告側主張を受けて、裁判官が原告側に有利な方向で和解勧試を始めてくれました。波及効果があったと思います」
組合側も、請求額が全額支払われ、口外禁止条項もつかなかった和解内容に満足している。
なお、同社では、すでに時間に応じて残業代を計算する方式に変わっている。
ただし、組合側は従来の計算方法よりも給料が減ってしまうため、労働契約法が禁じる合意のない不利益変更などに当たるとして、提訴を検討している。