2021年02月09日 10:11 弁護士ドットコム
「妻が子どもに向かって平気で『死ね』『頭おかしい』などと怒鳴ります。虐待なのではないでしょうか」。弁護士ドットコムに、妻の言動に疑問を感じている男性からの相談が寄せられている。
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相談者によると、妻は子どもがいたずらをするたびに、「死ね」「頭おかしい」などと怒鳴りつけているという。また、床に落ちたご飯を「自分が落としたんだから、早く拾って食え」と言ったこともあるそうだ。
夜は「寝なくてうるさい」などという理由で、子どもにテレビを見せて放置。その間、妻は別の部屋で携帯をいじっているという。
このような妻の言動は虐待にあたるのだろうか。子どもの父親である相談者は、どのように対応すべきだろうか。高島惇弁護士に聞いた。
ーー妻の言動は「虐待」にあたるのでしょうか。
「死ね」「頭おかしい」という発言は、児童虐待に該当する蓋然性が高いです。具体的には、児童虐待の防止等に関する法律2条4号に定める心理的虐待のうち、「児童に対する著しい暴言」に該当するものと思われます。
床に落ちたご飯を拾って食べるよう指示する行為も、家庭内の衛生状況次第では「保護者としての監護を著しく怠る」(同法2条3号)としてネグレクトに該当する余地があります。
その一方で、テレビを見せて放置する行為については、その時間帯や児童の年齢、日常生活への支障次第ではありますが、ただちに児童虐待に該当するかと言われると、やや微妙かもしれません。
ーー今回の相談は子どもの父親である男性から寄せられましたが、男性は妻がおこなっている不適切な養育に対し、どのように対応すべきでしょうか。
児童の父親としては、妻に対して養育方法を見直すよう是正を促すべきです。しかし、仮に妻が「しつけ」と称して養育方法を見直さず、今後も同様の事態が生じ得る場合には、学校や子ども家庭支援センターといった第三者機関へ相談するのも一つの選択肢です。
その一方で、第三者機関が養育状況を深刻に捉えて児童相談所へ通告した場合は、ある日突然児童が一時保護されて数か月にわたり分離する展開も考えられます。このように、父親としては想定外の事態に発展するおそれがあります。
仮に児童虐待に該当しない場合でも、妻が養育方法の改善を検討せずに児童相談所と対立する姿勢を示した場合には、他の事情次第では「保護者に監護させることが著しく児童の福祉を害する」(児童福祉法28条1項)として、児童が施設に入所することになる場合も考えられます。そうなると、年単位での分離を余儀なくされます。
ーー通告した場合は、子どもと引き離される場合もあるのですね。
もちろん、児童虐待の被害が重大である場合には分離すべきです。ただ、このような事態は、ご両親はもちろん児童にとっても必ずしも望ましい展開ではなく、児童の成育への悪影響も懸念されるところです。
そのため、仮に児童相談所が関与してきた場合でも、決して感情的になることなく児童相談所と適宜連携し、反省すべき点をきちんと反省して今後の養育につなげることが重要となります。
児童虐待に関する通告は年々増加しており、社会の関心も高まっています。
児童にとっては、家庭で健やかに生育されるのが一番の利益となります。そのため、「しつけ」の名目で安易に暴言を吐くことなく適切に養育しなければなりません。また、一方保護者の言動に問題がある場合には、第三者と連携して根気強く改善を促すべきかと存じます。
【取材協力弁護士】
高島 惇(たかしま・あつし)弁護士
退学処分、学校事故、いじめ、体罰など、学校内におけるトラブルを精力的に取り扱っており、「週刊ダイヤモンド」にて特集された「プロ推奨の辣腕弁護士たち」欄にて学校紛争問題が得意な弁護士として紹介されている。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp