「YouTuberはダメです」
娘の小学校の先生は、その理由を明確に説明しないまま、子どもたちの将来の夢を却下しました。先日、娘の小学校では"二分の一成人式"があり、将来の夢を聞かれ何人かの子が「YouTuberになりたい」と言ったとのこと。
しかし、先生に却下されたといいます。娘は「なんでYouTuberはあかんの?!」と憤慨していました。僕もその理由が分からず、娘に詳しく聞くと、とんでもない返答が返ってきました。(文:ちばつかさ)
「なぜダメなの?」と聞くと、先生は「もっとしっかり勉強しなさい」
ベネッセの調査によると『2020年小学生が将来やってみたい職業』でYouTuberは男の子で2位、女の子で3位にランクインしています。ここ数年、小学生が将来なりたい職業の上位ランカーとなっています。
小学生が夢中になっているYouTuberですが、まだまだ職業となると反発する人も少なくないのかもしれません。今回のように、娘の小学校でも将来の夢に挙げると「ダメです」と言われます。それ以外にもプロのゲーマーやゲーム実況者という夢も首をかしげられているようです。
言われた小学生が「なぜダメなのか?」と聞くと、先生は「もっとしっかり勉強しなさい」。先生がどういう意図で言ったのかはわかりません。もしかしたら、YouTuberになるには試行錯誤や努力が必要で、簡単ではないからまずは勉強をして自分の強みを探してみてはどうか、という意味で言ったのかもしれません。
でも、子どもたちは「YouTuberは頭が悪いからダメ」というふうに受け取っています。そうなってしまったのは、「なぜ、YouTuberがダメなのか?」に対する納得のいく説明がされていないということですよね。
スポーツ選手とYouTuber 両方経験しているから言えること
なぜ、YouTuberやプロゲーマーなどの将来の夢が却下されて、プロスポーツ選手や学校の先生などが賞賛されるのでしょうか。僕は小学生の時「プロ野球選手になりたい」という夢を抱き、挫折し、苦しみ、プロ野球独立リーグまではいったものの夢破れた一人。
さらに今、YouTubeに動画投稿もしています。ある意味、先生が否定、称賛する仕事の両方を経験していますが、僕は「子どもが抱く"やってみたい"はどれも素晴らしい」と感じています。
それは"やってみたからこそわかる"という部分があります。野球選手だって簡単にはなれないし、YouTuberだって簡単にはなれないことを知っています。続けることの苦しさや、なかなか認められないもどかしさ、自分の能力の無さと向き合う羞恥心、とにかくやりたいという気持ちの裏には見えない壁が多く存在することを経験しています。
壁を乗り越えて成功体験や貴重な時間を得られる経験もしている。YouTuberはこれをやればYouTuberとして成功するという"正規ルート"はありません。一方、先生になる道は、比較的確立しています。そう考えると、「先生は"先生になるため"に日々を生きてきた人たちだから、理解できないのかもしれない」と感じました。
「YouTuber」という職業を子どもたちと一緒に考える時間があってもいいのでは
人間の心理として、自分が知っているものや経験したものを価値の高いもの、評価すべきものと認知する傾向があります。一方、知らないものや理解できないもの、経験したことがないものを無価値で評価に値しないものと感じてしまいがちです。
キングコングの西野亮廣さんがいう「人は知らないものを詐欺か宗教で片付ける」はまさにこれですが、学校の先生もこの人間の心理にまんまとハマっていて、子どもたちに対して「知らないし理解できないからそれはダメです」と言っているのかもしれません。
でも、理解できるように知ろうとする、知らないことを知って勉強するということが学校での教育なのであれば、「YouTuber」という職業に関して子どもたちと一緒に考える時間があってもいいのではと思うのです。
プロというものは「いかに普通から逸脱できるか」で力量が決まります。だから尚更、「わからないもの」「普通じゃないもの」に関して子どもたちと大いに話し合ってほしい。プロ野球選手になりかけ、YouTuberをしている父親の僕が感じた出来事です。
【筆者プロフィール】ちばつかさ
合同会社komichi代表。柔道整復師、こころと体のコーディネーター、元プロ野球独立リーグ選手。東京と福井で投げ銭制の接骨院を運営しのべ10万人近くの心と体に向き合ってきた。野球経験とコーチングの経験を活かし都内で"野球を教えない野球レッスン"を運営。レッスン卒業生がU12侍ジャパンの代表に選出された。現在、心理学を学ぶため、アラフォーで大学在学中。【公式サイト】