2021年、WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに、アルピーヌ・エンデュランス・チームから参戦するニコラ・ラピエールは、最後にトップクラスにフル参戦してから7年を経て、WECの総合優勝を争う「新たなチャンス」を獲得できたことを嬉しく思う、と語った。
ル・マン24時間レースのLMP2クラスにおいて4度のクラス優勝経験を持つラピエールは先日、規則の移行措置により2021年に限って認められるLMP1ノンハイブリッドマシンでのハイパーカークラス参戦を表明しているアルピーヌ・エンデュランス・チームのドライバーとなることが発表されている。
ラピエールとアンドレ・ネグラオ、マシュー・バキシビエールは、シグナテックが仕立てたアルピーヌA480・ギブソンをドライブする。これは昨年まで、レベリオン・レーシングが走らせていたオレカ製LMP1マシンのブランド名を変更したものだ。
ラピエールは2012年から2014年の途中にかけ2年半にわたってトヨタから参戦して以来、LMP1におけるフルタイム・ドライバーのポジションを失っていた。
トヨタのドライバー・ラインアップから姿を消した後、彼は主としてLMP2クラスでの活動に専念してきた(2017年、3台体制時にはトヨタに呼び戻されLMP1にスポット参戦している)。
今回のラピエールのアルピーヌからの参戦は、過去に所属したトヨタと総合優勝を争うことを可能にした。
「トップカテゴリーに戻ってくることができて、とても嬉しい。長年、この機会を伺っていたんだ」とラピエールはSportscar365に対して語っている。
「確かに2017年のル・マンではトヨタに戻ったけど、彼らと競ったことはない。2012年、最初の年に加わって以来、LMP1では常にトヨタのドライバーだったからね」
「だから今年が(トヨタと対戦する)初めての年となる。それを楽しみにしているよ。ドライバーにも開発陣にも、トヨタにはまだたくさんの友人たちがいるから、彼らと戦うのはとてもクールだよね」
「だけど、もっとも重要なのは僕がトップカテゴリーへと戻ることだ」
「僕の目標のひとつは、ル・マンで優勝をすること。LMP2では数回、それを達成できたし、素晴らしいものでもあった。だけど、耐久ドライバーというのは、トップカテゴリーでの(総合)優勝を望んでいるものだ」
「それを達成するチャンスを手にできた。うまくいけば、それをつかみ取ることができる」
■「過去数年のLMP1だったら、参戦していない」
ラピエールは、彼の5年にわたるLMP2での活動が、LMP1というトップクラスに戻る方法を見つける上で重要な役割を果たしたと示唆する。
LMP2では4回のル・マン優勝を成し遂げているほか、2016年と2018/19シーズンにはシグナテック・アルピーヌとともにWECのタイトルを獲得している。2019/20シーズンのWECにはクール・レーシングからエントリー。ラピエールが共同運営することになった同チームでは、今季もELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズのLMP2クラスでレースを続行する予定だ。
ラピエールはル・マンでの最初のクラス優勝を2015年にKCMGで成し遂げ、残る3回はアルピーヌからのエントリーで達成している。
「トップカテゴリーを経てLMP2へと戻ることは、常に難しいものだ。なぜならそれはネガティブにしかならず、人々は『LMP2でちゃんと戦えないようなら、LMP1でチャンスがないのもしょうがない』と判断するようになるからね」とラピエールは語った。
「最終的に、LMP2に戻って2度のタイトルを獲得し、ル・マンで4度優勝した。僕にとっては、(LMP2参戦は)素晴らしいことになった」
「トップカテゴリーに戻るというこの新たな挑戦をするには、いまが適切なタイミングであり、僕はそれをとても楽しみにしているよ」
「いいタイミングが来た。ここ数年のLMP1は参戦車も少なく、ただトヨタが席巻していたからね。それほどエキサイティングではなかった」
「正直なところ、過去3~4年間、もしライバルとしてトヨタと戦うオファーを得られていたとしても、それには応えなかったと思う。トヨタがタイトルを獲ることは明白だったからね」
「競争が熾烈なLMP2クラスでレースをすることができて、嬉しかったよ」
「だけどいまは新たなルールとBoP(性能調整)のもと、アルピーヌにはそこで好成績を収めるチャンスがある。トップカテゴリーに戻るには良いタイミングだった」
■「2部リーグのサッカー選手が1部でプレーするようなもの」
LMP1への復帰が、将来のLMDhに向けた潜在的な役割への布石となることを期待しているラピエールは、以前に所属していたシグナテック・アルピーヌで経験したものと「同じ哲学とアプローチ」を、アルピーヌ(エンデュランス・チーム)が備えていると付け加える。
アルピーヌは12月にLMP1マシンのデリバリーを受け、今後2週間以内にテストを開始する予定だという。開幕は4月、ポルティマオで予定されている。
「(2019年に)アルピーヌを離れたときは、自分たちがやるべきことを終えたような感じだった」とラピエールは語った。
「それからフィリップ(・シノー/シグナテックのチーム代表)がLMP2を続けるつもりだと僕に言ったとき、彼らはすべてを勝ち取った。それで『もう終わったんだな』と思った僕は、新たな冒険に出た。これが僕が2年前にチームを去った理由だ」
「ただもちろん、僕らは連絡を取り合っていた。そして、かなり早い段階でフィリップはこのLMP1プログラムについて僕に話してくれた。僕はいつも彼に、もしプログラムが現実になるなら、そこに加わりたいと伝えていた」
「僕は今年のはじめに(チームのあるフランス・)ブルージュに行った。そうしたら、チームには僕の本当に好きな、かつてと同じ哲学とアプローチがあることが分かったんだ」
「僕がそこにいた数年間に一緒に開発したものはまだそこに存在したが、はるかに改善されていた。チームは本当にやる気に満ちていると思う」
「彼らはLMP2ですべてを勝ち取り、この新たなチャレンジをするのに適切な時期が巡ってきた。このカテゴリーで成功するための良いポジションを得られるチャンスが、本当にあると思う」
ラピエールは、アルピーヌ・エンデュランス・チームがトップクラスにおけるルーキーとしての地位を確立し、約10年にわたってトップカテゴリーに参加しているトヨタと競うことができると信じている。
バキシビエールとネグラオはどちらも、LMP2では幅広い経験を持っているものの、LMP1マシンは初めてのドライブとなる。
しかしラピエールは、このトリオが世界チャンピオンのトヨタと対戦することで、近年のLMP2における強さを証明できるものと考えている。
「たとえるなら、2部リーグから1部リーグに移籍したサッカー選手がどのようなプレーをするか、見るようなものだ」とラピエール。
「僕らはとてもハングリーだし、僕らが達成できることを証明するつもりだ」
「僕らがいったい、どれほどのことができるのか――。それは僕らにとっても、戦いを見ている人たちにとっても、非常にエキサイティングな挑戦だ。彼ら(トヨタ)と戦うチャンスがあることを願っているよ」