2021年02月07日 10:01 弁護士ドットコム
皆さんの職場には「ハラスメント被害」を相談できる場所はありますか。2020年6月にいわゆる「パワハラ防止法」が施行され、大企業に対しパワハラ防止措置が義務付けられました(中小企業は2022年4月施行予定)。
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その一つに、相談窓口の設置があります。担当者を決めて、従業員からの相談に適切に対応できるようにするというものです。
ただ、小さな会社では、相談窓口の担当者にハラスメントについての知識がなく、近い存在すぎて相談しづらいという状況もあるようです。
弁護士ドットコムニュースのLINEにセクハラとパワハラの体験談を寄せた青木ゆかさん(20代、仮名)もその一人。あまりのひどい状況に、青木さんは退職を決意しています。
入社してから4年近く、複数の上司から机を足蹴りされたり「(お前を)嫁になんてもらえねえよ」などと悪口を言われたりしていますが、「担当者が信頼できず、会社には相談しづらい」とこぼします。
青木さんは工場の間接部門で働いており、男性が圧倒的に多い職場です。入社してから「冗談を言いやすい」「反応が面白い」と言われ、「丸いんだから」「豚」「妊婦」などと身体的な悪口を言われるようになりました。
通りすがりに頭をポカンと叩かれたり、二の腕をつねったりされることも。青木さんは「どの人もスキンシップのつもりなんでしょうが、構い方が乱暴なんです」と言います。
飲み会の帰りの車内で助手席に座っていたところ、後部座席に座っていた男性上司に胸を揉まれ、「彼氏とやってんの?」と頻度や内容について聞かれるというセクハラもありました。
「普段仕事の話をしている時は普通なのですが、不意に世間話になると私のことをこき下ろしてきます。あまり真面目な雰囲気でやめてくださいと言えなくて、最近は諦めています」
「まさかハラスメントが身近にあるなんて、思ってもいなかった」と話す青木さん。泣いて仕事が手につかないようなこともあり、すでに職場に退職届を出したそうです。
ハラスメント相談窓口はあるものの、担当者は総務部長。「事なかれ主義の人で、普段からあまり良くない対応をしているので、相談したところで何もしてもらえないかなと思った」と話します。
長瀬恵利子弁護士は「相談窓口が設置されていても、形式的なもので実際には相談しづらいケースが多い。青木さんと同じような相談をうけたことがあります」と話します。
では、社内の相談窓口が頼れない場合、どこに相談したら良いのでしょうか。
1つは都道府県の労働局です。各都道府県の労働局またはその下部組織の労働基準監督署には、総合労働相談コーナーがあり、セクハラやパワハラなどを相談できる窓口が設けられています。また、訴訟などの法的手続きを取るかどうかにかかわらず、最初から弁護士に相談することも一つの手だといいます。
「ハードルが高く感じられるかもしれませんが、労働局の相談コーナーは、希望があれば会社に対して中立的な立場で聞き取りもしてくれます」(長瀬弁護士)
そのときに、証拠も確保しておくことが大事となる。決定的な証拠は録音や録画ですが、長瀬弁護士によると、それ以外でも証拠になるものがあると言います。
「例えば、LINEのやりとりでセクハラ発言をされた場合、それは証拠になります。また、自分の手帳とか日記に書き留めていた場合も、本人の記憶で記録したものということで証拠にできることもあります。また、心身の不調がある場合には、病院の診断書やカルテも証拠となります」
職場で同僚から暴言を受けていた女性が、1年近く録音をおこない、労基署がそれに基づき労災認定したケースもあります。立証の決め手となることが多いので、覚えておくと良さそうです。
【取材協力弁護士】
長瀬 恵利子(ながせ・えりこ)弁護士
東京弁護士会所属。得意分野は、離婚、遺言・相続、労働問題、その他一般民事。
事務所名:弁護士法人遠藤綜合法律事務所
事務所URL:https://www.endo-law.jp/