若者のFacebook離れが叫ばれて久しい。20代がログインしなくなり、投稿するのはもう40代以上ばかり。SNS事情にも詳しい恋愛コンサルタントの鈴木リュウさんは、最近の利用事情について、
「Facebookのタイムラインを見ると中高年ユーザーによる『新規事業を立ち上げました』『ローンチしたサービスが◯◯UU突破しました』などが増えました。"仕事の手柄"を披露する場所になっていて、"新規事業リリースおじさん"や"目標達成おじさん"など進捗報告おじさんが増えています」
と指摘する。
「エアポートおじさん」「すごいメンツおじさん」がいなくなり……
かつては空港の写真とともに「いまから出張です」と報告する"エアポートおじさん"や、ネットニュースをシェアする"速報おじさん"が多く見られた。
「そんなおじさんが多かったのも2016~17年ごろまで。インスタグラムに24時間で投稿が消える『ストーリー』機能がリリースされると激減しました。おじさんたちもそういった投稿は別のSNSで行うようになりました」
また、以前は「すごいメンツで飲み会をしてきました!」と集合写真と参加者のタグ付けをする投稿も多く見られたが、コロナの影響もあり激減。そんな中で、現在タイムライン上を賑わせているのが先述の"新規事業リリースおじさん"や"目標達成おじさん"だ。
「会社で携わっているサービスのローンチや資金調達、他社との業務提携、目標PV数、ユーザー数、KPIの達成といった、自分の仕事の進捗状況をプレスリリースのように報告をする人が増えています」
「SNSの中で唯一、プレスリリースのような無機質な文章を投稿してもいいのがFacebook」
なぜこういう投稿が増えたのか。Facebookの利用者は30代以降が多く、役員クラスや経営者といった人もいる。そのため、中には「仕事以外に報告できることがない」という人も多い。
進捗報告ならツイッターでもいいはずだが、ツイッター投稿は情報自体に面白さが求められる。またすでに同業種で、自身より実績を残しているユーザーも多いため自分の実績がかすんでしまう。
「今だと『◯◯しか勝たん』など"ツイッター構文"を駆使し、独特のコンテクストを読んだ上で面白い投稿をしなければいけません。インスタはやはり写真・動画映えの世界なのでおじさんだと盛れません。グルメ投稿も写真メインのSNSのほうが相性いいのでFacebookからインスタに移りました」
一方、Facebookはツイッターのように面白さも文脈も求められず、インスタのように映えも求められない。「SNSの中で唯一、プレスリリースのような無機質な文章を投稿してもいいのがFacebook」とコメントする。
Facebookは基本的にリアルの付き合いの延長線上だ。誹謗中傷される可能性も低く、達成報告をしていたら、次会った時に「最近すごいじゃないですか」といってもらえることもある。「自分のがんばりを誰かに知ってほしい」というアウトプットの場になっているようだ。
コメント欄は「おめでとうございます!」 おじさんのユートピア状態
このような投稿がタイムラインに流れてきたらどうすべきか。
「仕事で付き合いがないなど利害関係がなければスルーしてもOKです。仕事関係の人や上司なら『いいね』を押すか、『おめでとうございます!』などとコメントしておきましょう」
加えて、「そもそも、昨今のFacebook投稿には多様性が少なくなっています」と指摘する。進捗報告おじさんの投稿のほか、「結婚・出産しました」「子どもが卒業しました」といった投稿ばかりだ。
「これらの投稿って、コメント欄をみるとどれも『おめでとうございます!』ばかりなんです。Facebookはもはや様式の決まった伝統芸能状態。報告をする人はする、しない人な何も投稿しない。"新しい振る舞い"はないため、大きな変化は起きません」
そのため、コミュニケーションが単調になり、Facebookのおもしろくなさは最終局面を迎え、この先は衰退に繋がり"オワコン"となることもあると指摘する。
「Facebookで繋がっている人は基本的に『俺のことを知っている人たち』。関係は簡単に切れず、褒めてくれる人しかいません。おじさんたちのユートピアであり、いつまでも浸っていられる適温に保たれた炭酸泉のようなものです」
新聞の広告に青汁や健康食品が多いように、メディア・SNSはユーザーとともに年をとっていく。"中高年向けのSNS"となりつつあるFacebookに居心地の良さを感じるのであれば、それは大切な居場所だといえる。
「中高年は気持ちがいいからFacebookにいます。でも、スーパー銭湯でも周りを見渡せばサウナや水風呂、電気風呂など色々なお風呂があったりしますよね。そこ以外でも楽しくしている同世代はいます。気が向いたら別の世界に入ってみるのもいいかもしれませんね」