2021年02月05日 17:01 弁護士ドットコム
正社員には「休業手当」が100%支払われているのに、パートやアルバイトに一切支払われないのは、非正規差別だ――。
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「まいどおおきに食堂」や「串家物語」など、飲食店チェーンを展開するフジオフードシステムではたらく女性がそう訴えている。女性は昨年12月、休業手当の支払いをもとめて、神奈川労働局に調停を申し立てた。
調停はすでに開始が決定されている。
調停を申し立てたのは、2人の子どもを育てる30代女性。
女性は2018年、有期雇用のパート労働者として、フジオフードシステムに入社して、同社運営のケーキカフェ店(現在は別の店舗に異動)ではたらきはじめた。
昨年4月の緊急事態宣言で、ケーキカフェ店が入居する商業施設が休業したことから、店舗も5月末まで休業することになった。
すでにシフトが入っていた数日間分だけ休業手当が支給されたが、5月分の休業手当は一切支払われなかったという。
女性は6月、労働組合を通じて団体交渉を申し入れたり、9月と12月にストライキを決行したが、それでも会社側は支払いを認めなかった。
女性が加盟する労働組合「飲食店ユニオン」によると、会社側の回答から(1)コロナによって会社が深刻な打撃を受けていること、(2)正社員には休業手当が100%の割合で支払われていることがわかったという。
「パートやアルバイトの業務内容は社員と大きな差はないのに不合理な差別ではないか」
女性は昨年12月25日、休業手当1万3353円の支払いをもとめて、神奈川労働局に調停を申し立てた。裁判でなく、調停を選択したのは、簡易・迅速に解決するためという。調停開始の決定は1月29日付。
飲食店ユニオンによると、会社側は、商業施設の休業によって店舗も休業することになったので、会社の責任による休業ではなく、休業手当の支払い義務がない――などと主張しているという。
フジオフードシステム側の代理人は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「とくにコメントすることはありませんが、(調停の)手続きについては、適切に対応しています」と話した。
女性は2月5日、厚労省記者クラブで会見を開いて次のように訴えた。
「わたしが今年1月まで勤務していた店舗は、社員は店員1人、それ以外の約20人はパートとアルバイトで運営していました。
業務内容はホールとキッチンに分かれています。
ホールがお客様の案内やオーダーテイク、提供、片付け、会計、ケーキカット、ドリンク作成など、一部のスタッフが発注や在庫管理、新人教育、キッチン補助をおこなっておりました。キッチンはケーキの製造や仕込みなど、店長は、上記の仕事プラス面接や本社とのメールのやり取りなどをおこなっていました。
店長の公休時は、勤務歴が長かったり、こなせる仕事量の多いスタッフが実質的な責任者として、クレーム対応や衛生検査立ち会い、テナントの店長会などへも参加していました。
正社員は勤務時間は9時~21時半の間で働き、パートやアルバイトは朝~昼、昼~夕方、夕方~夜など限定的な働き方もしていましたが、業務内容は社員と大きな差はありません。
会社全体で見ても9割が非正規で現場を支えています。店舗運営に非正規社員が欠かせない存在であることは明らかですが、社員だけ100%の休業補償、非正規にはゼロというのは不合理な差別ではないでしょうか。
正社員は生活の基盤が会社にあるためと言われましたが、パートやアルバイトだからと言って補助的な役割ではなく、各自生活のために働いています。
また、お店の業績アップに伴い店長には業績給が出ていましたが、人件費削減のためにシフト人数を調整されたりしていました(本来4人でお店を回すところ、仕事量を多くこなせる人を入れる場合は、1人カットして3人体制にするなど)。
多くの仕事をこなせる人への負担が偏り、体調を崩してやめてしまう人も見てきました。シフト人数を調整して利益を上げても、その分を時給に反映するなどの対応もほぼ見られませんでした。
今年の1月以降に異動した先の店舗では、正社員のシフトを優先させるためにアルバイトのシフトが削られている事態も生まれています。もちろん、シフト削減に対するアルバイトへの休業補償は一切ありません。
コロナ禍で、非正規は差別されて休業補償もなく、生活が脅かされている、そのような問題が浮き彫りになりました。
休業支援金の大企業への拡大も前進しましたが、そもそもの企業が従業員の雇用を守るという義務がなくなったわけではありません。本来であればきちんと雇用調整助成金を使って休業手当を出すべきであり、その社会的責任を果たしていない会社には憤りを感じています。
全国で多くの非正規雇用の方々が苦しんでいます。今回の事例が不合理な差別であると認定されれば、社会的な影響力があると思っています」