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BLACKPINK、ロゼの新曲「GONE」でソロプロジェクト再始動 戦略的な展開をプロデューサーの言葉から紐解く

2021年02月02日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

BLACKPINK『THE ALBUM』

 「どんな時にBLACKPINKを聴くか」という問いに「自分を鼓舞したい時」と答える人は少なくないように思う。フェミニンなイメージを連想させるPINKと、強さを示すBLACKが組み合わされたグループ名を掲げる彼女たちが、“女性が女性を魅了する”ことを意味する「ガールクラッシュ」の代表格に君臨して久しい。サウンド、リリック、またステージ演出やMVから表されるその世界観は人々をエンパワーする要素に満ちているが、何よりも私たちを勇気づけ奮い立たせるのは、メンバーであるJISOO(ジス)・JENNIE(ジェニー)・ROSÉ(ロゼ)・LISA(リサ)の存在だろう。


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 昨年リリースされたフルアルバム『THE ALBUM』収録曲などBLACKPINKの楽曲を数多く手がけるプロデューサー・24が語った次のようなコメントが印象に残った。


「4人のメンバー全員が持つ各自の魅力を一つの曲に表さないとならない。曲は沢山の要素で構成されるので、皆が自分のパートでそれぞれの役割を請け負う必要がある」


 またグループ立ち上げ当時からプロデューシングに携わるTEDDYは、Netflixにて配信中のドキュメンタリー『BLACKPINK~ライトアップ・ザ・スカイ~』内でこう話している。


「4人とも違う文化を持っている。お互いを補完しあって完璧なバランスを作っていることが、(BLACKPINKの)魅力だ」


 制作陣によるこれらの言葉は、メンバー自身が持つ魅力が楽曲の魅力へ結実していることを物語っている。確かにBLACKPINKの楽曲が私たちの頭の中へ鮮烈に映し出すのは、彼女たち4人のイメージそのものなのだ。


 2019年にリリースされた「Kill This Love」を例にとれば、イントロ部分で壮大なホーンとともに響く「BLACKPINK IN YOUR AREA」というグループのシグネチャーサウンドに続いて聴こえるのは、“QUEEN”の称号が似つかわしい重厚で威厳たっぷりなジェニーの歌声だ。そこへ、遊びいっぱいの弾むフロウをたたえたリサのラップが挑発的に切り込んでいき、爽やかでありつつ芯も感じさせるジスの清らかなボーカルがヴァースを受け継ぐ。ビルドアップ部分でリスナーの感情を高めるのは、唯一無二の魅力をもつロゼの歌声。耳に張り付くような甘く艶のある彼女のハイトーンボイスがエモーショナルに轟くと、曲はメンバー全員の〈LET’S KILL THIS LOVE〉というシンガロングでサビに突入する。


 際立った個性を持つ“最強の4人”の姿がソロパートに映し出され、それらがサビ部分で一塊となるBLACKPINKの楽曲を聴けば、まるでスーパー戦隊を見ているかのような熱さが胸の中に込み上げる。いちリスナーとして彼女たちとともに「LET’S KILL THIS LOVE!」と叫びたくなる気持ちは、『アベンジャーズ』シリーズでヒーローたちが集結した際に放たれる「アベンジャーズ・アッセンブル!」という台詞にも似た熱量をたたえているように感じるのだ。そして彼女たちのシナジーが生み出す、この熱さにこそ私たちはエンパワーされているのではないかと思う。


 一方で、TEDDYは先ほど触れたドキュメンタリー内でこんなコメントも残している。


「最初は、立て続けにヒット曲を出すことが戦略だった。しかし、今は個人的な話をする時だ」


 ここで語られる「個人的な話」とは、BLACKPINKにおけるソロプロジェクトを指すものと思われる。その第1弾として2018年にリリースされたジェニーの「SOLO」は、BLACKPINK楽曲からも伝えられるサべージなカリスマ性だけでなく、気品溢れるナイーブな側面がミニマルなサウンドとともに表される一曲で、彼女の多面的な魅力が一聴して伝えられた。


 2018年の同曲リリース以降、様々な事情により中断されていたソロプロジェクトだが、先日開催のオンラインコンサート『YG PALM STAGE – 2021 BLACKPINK:THE SHOW』にてロゼが披露した「GONE」により再始動。同曲は甘いながらもソウルフルな、ボーカリストとしての彼女が持つ長所を存分に引き出すアコースティックナンバーとなっている。また所属事務所のYGエンターテインメントは、ジス・リサについてもソロ曲を順次公開する予定を明かしており、今後の展開を期待させる。


「どのグループも多様なバックグラウンドを持つが、BLACKPINKのメンバーはそれがよりユニークだ」


 そうTEDDYは語るが、グループの魅力を形成するメンバーの多様なバックグラウンドにフォーカスを当て掘り下げる機会が、BLACKPINKにおけるソロプロジェクトの場であるように思う。そして、それぞれの「個人の物語」を表した“最強の4人”がBLACKPINKへ集結する時、そこで生まれるシナジーは、よりいっそうに私たちの心を熱くさせてくれるだろう。(菅原史稀)